ep.30
「その後は最初の方で竹葉が話した通り、まぁ丸く収まったが代償として殆どの力を失った。…さて、そろそろ本題に入ろうか。」
あっさりと話を切り上げたみづくは崩した姿勢を直し、皆に視線を向ける。
「護衛を頼みたいと言う話は始めにしたかの。」
レイたちはそれぞれ頷く。
「よろしい。まずは…。次の満月の夜、この国の建国を祝う祭りが催される。普段は出入りが限られているこの城もその日だけ解放する予定だ。普段ならば問題がないのだが、ここ最近どうも妙な事が起こっておる。」
静かに聞いていた千陽がそっと手をあげ発言する。
「妙な事とは具体的にお聞きしてもよろしいですか?」
みづくはうむ、と頷く。
「月のない夜に我らの仲間が煙の様に消え、満月の夜に何事もなかったかの様に帰ってくるということが度々あっての。消える前日は決まって月が真っ赤に染まっておった。まぁ、帰ってきたら者たちに変わりはなかったのだが、どんなに警戒しておっても必ず消えてしまう。どちらかというとそっちより…。」
みづくは扇を開き口元を隠す。
少し考え込んでからまた口を開いた。
「この国の外周には奇襲…まぁ今では迷い込む人の子の為に結界が張ってあるのだが、先日見回りをしていた者が結界の綻びを見つけてな。それ自体は劣化もあるだろうから問題はないのだが…。この結界は普段ならば竹葉が管理しているはずなのだ。」
涼訵は顎に手をあて、眉間に皺を寄せている。
「竹葉から報告を受けていないと?」
みづくは頭をかき、閉じた扇で足を何度も叩いていた。
「そうだ。本人にも聞いたが、そもそも感知されなかったらしい。最悪の場合誰かがこの国に侵入している可能性もあり得る。立て続けに起こる不可解な事件、侵入者の可能性、我自身の力の欠如、竹葉は我の護衛をと思い依頼したのだろうが我は違う。」
みづくはぎこちなくほんの少しだけ頭を下げて言った。
「この国を護る手助けを頼みたい。」
「涼訵さん、あんな依頼受けちゃって良かったんですか?」
隣を歩くレイが不服そうに訪ねてくる。
「仕方ない。そもそも断れないからな。」
「昔のよしみってやつですか。」
大きくため息をつくレイに千陽が違うよと否定する。
「同盟国。僕達の国と丹波国は昔からそうなんだよって、レイちゃん前に教えてもらったでしょ?」
レイはほんの少し考えるそぶりを見せ、笑って誤魔化した。
「だが、少し事が大きくなってしまったな。結界に詳しい人物に応援を頼んでみるか。まぁ、あまり期待は出来んがな。」
珍しく小さくため息をついた涼訵は気乗りのしない連絡をかけ始めた。




