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列国の秘史録  作者: sleet
鹿鳴之宴
31/37

ep.29

国として問題なく回り出した頃、アセトはまた別の国へと旅立っていった。

とてもあっさりした別れで、また次の日やってくのではとさえ思えた。

その後彼女の従者が時折訪問するようになったが、アセトが国を訪れることはなかった。


「その後も数十年…いや数百年だっだか?まぁどちらでもよい。暫くは、とても平穏に過ごせておった。」

みづくはパタパタと扇で顔を扇ぎながら、丸く切り取られた格子窓に視線を移す。

「あぁ、すまん。長くなってしまったな。竹葉も待たせておるし、少し休憩にするかの。」

胡渡が術を解くと壁に咲いていた花が一斉に割れ、粉雪のように降り注いだ。

すると、襖の向こうから竹葉の声が聞こえてきた。

「みづく様、御膳の準備が整っておりますので、お持ちしてもよろしいでしょうか?」

「たのむ。お前たちも食べていくか?下町の市場も活気着く頃だろうかそっちに行ってもよいぞ。」

「いや、折角だからいただこう。」

みづくは少し嬉しそうに、竹葉を呼びつけ人数分を追加で用意するように申し付けた。


涼訵たちは食後にと竹葉が持ってきた団子をつまみながら、みづくの話を聞き始めた。

「どこまで話したか……。あぁ、あれからだな。」

みづくは先ほどよりはだいぶ寛いだ様子で再度語り出した。

「暫くして、人間が一人で我を訪ねてきた。近くの都の使者と言っていたな。そやつが言うには…」

壁に再度咲いた結晶の花を愛でるように触れ、花びらを一枚剥ぎ取り指先で砕いた。


目のまえの人間は床にこすりつけるように深く頭を下げている。

「今、なんと申した?」

私の言葉にびくりと小さくなった肩が跳ねる。

「い、いえ、貴方様の同胞が私達をこ、殺していたのです!条約では、殺生はしないというはずでした。も、もしこちらの条件を吞んでいただけないのなら、それ相応の覚悟をとの言伝でございます。条件は先ほど申した通りでございます。呑んでいただけますならば、明朝この国の入口にてお待ちしております。」

そいつはそう言い残すとそそくさと屋敷から立ち去って行った。

「おい、竹葉。」

「すぐ連れてまいります。」

数分立たないうちに、目の前に小さいイタチが連れてこられた。

「呼ばれた理由はわかっているな。言い分を聞こう。」

イタチの話はこうだった。

いつものように都へ商談をしに人に化けて向かっていると、道中で腰を下ろし休憩している牛飼いにあったらしい。

牛飼いに誘われお茶をいただきその場を去ろうと歩み出した直後、背後で鈍い音がし牛飼いの首が跳ねられていたと。

その現場を丁度通りかかった都の役人に見つかりこのような事態になったらしい。

「何もなしに首が跳ねるか?戯言と言っているわけではないな?」

イタチは大きく横に首を振った。

「確かに私には可能ですが、そんな訳もなく致しません!」

「嘘はついていないかと。」

後ろで控えていた竹葉がそっと耳打ちをする。

竹葉にイタチを帰させ、私はしばらく考えこんでいた。

あれから人を殺すものなどいなくなった。

条約に縛られているからではないので、これを犯す要因が検討もつかない。

だが人の手でそこまでできるものだろうか。

いや、しかし、この状況一番深刻なのは…。

夜空がやや薄く明けてきた頃、私は一人静まり返った門をくぐり長い石段をゆっくり下っていった。

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