ep.28
元居た場所に戻ると、察したのか残っていたモノらが歓声を上げ騒ぎ出した。。
その傍らでアセトが預けた少女が五月蝿そうに両手で耳を塞いでいる。
「なぜ、一人で戻ってきた?」
不機嫌そうに少女が口を開いた。
「あやつは死んだ。ならば戻って勝利を祝うのが普通であろう。」
「強いくせに鈍感なんだな。」
少女はふんと鼻で笑い空を見上げた。
急に目の前に斧が落ち、地面にめり込む。
「いやはや、二つ分だとさすがに戻るのに苦労したね。」
聞きなれた陽気な声が頭上から聞こえた。
見たこともない青白く光る蝶が空を舞っている。
それらに囲まれるようにして宙に浮いてるアセトがゆっくりと降りてきた。
そうだ。忘れていた。
「そんな死人を見るような目でみないでくれ。」
周囲のやつらは状況が飲み込めないらしく、ざわざわと落ち着きがない。
彼女の手には斧がしっかりと握られている。
「私の勝ちだな!」
アセトはいたずらっ子のような無邪気な笑顔で満足そうに言った。
それからアセトは毎夜山に来ては、私たちがこの山で問題なく暮らしていけるようにとたくさんの事を教え始めた。
人との関わり方が大半を占めていたが、文句を言いだす奴は誰一人としていなかった。
一度だけアセトに愚痴を言ったことがある。
「こんな面倒なことをしなくとも、奪えばいいものを。」
私が呟くと彼女は少し考えてから口を開いた。
「君がしてきた事はよく知っているよ。犠牲になった人たちからすれば、許すことなど到底できないだろうね。私はね変わっていてさ。周囲の意見より、自分で見極めたいんだ。本当にそうすべきなのか、もっと別の道がないのか。きっと当事者になっても同じ考えなんだろうよ。」
彼女は私が怪訝そうに顔を顰めているのに気づき話し続ける。
「例えば私が君を殺したとしよう。きっと君の仲間たちは人間に復讐をと誓うだろうね。それはどちらかを根絶やしにするまで連鎖は止まらない。逆もまたしかりさ。他人を変えるのは難しい、ならばそうならない様に私が行動を起こせばいい。」
「それはお前に何の得がある?」
「ないね。全く。」
キッパリと言い切る彼女は笑っていた。
「やはりお前はどうしようもない阿呆だ。いつしか周りが敵ばかりになるぞ。」
私は胡座をかきその上に肘をついて座り込む。
「誰に何と言われようと自分が信じると決めた事を最後まで貫きたいだけさ。」
大きくため息をつく私をみて、アセトはふふっと微笑んだ。
「そんな顔するな。君もいつかどうしようもない選択を迫られる日が来る。その時になればきっと私が話していることも少しは理解できるさ。」
きっとアセトの言葉を忘れずにいれたのは、この時の悲しげ微笑む表情が焼き付けられたからなのだろう。




