ep.23
15分ほど揺られていただろうか。しばらく続いていた振動がピタリと止む。
「どぉぉぉちゃぐぅぅぅ!」
鼓膜が破れそうなほどの声が朧車の体内に響き、皆慌てて外に飛び出した。
「お前はまた!!」
どうやら先ほど怒られたことはきれいさっぱり忘れていたらしく、朧車は醇守に再度謝罪をしていた。
降りた先には、白い城壁に櫓のついた城門がどっしりと構えている。
醇守に先導され櫓門をくぐると、玄関でこちらを覗く姿が複数見える。
近づくとさっと散っていき、誰もいなくなっていた。
「どうか気を悪くなされないでください。ここ最近滅多に客人など来ない故、皆一目見ようとああやって覗いているのです。」
薄暗い玄関を抜けると、目の前に透き通った湖が現われた。
その真ん中には小さな社のような建物が水に浮いていた。
「すごい綺麗…建物の中に湖があるって不思議。」
湖を囲むように廊下が続いており、その内側には深く濃ゆい青色の紫陽花が咲き乱れていた。
「この湖は皆【玉水】と呼んでいます。中央の五角形の社は、玉水に住まわれている神様へ祈りを捧げるための場所となっております。本来ならば色々とご説明をしたいところですが、先に城主のもとへとご案内させていただきます。」
レイはあちこちよそ見をしながら歩いていたため、すれ違う鬼とぶつかりそうになる度に千陽が引っ張って回避をしていた。
湖をぐるっと回り、先ほどの反対側で醇守が立ち止まる。
「こちらで城主がお待ちになっております。くれぐれも失礼のないよう。」
醇守は梅の絵が描かれた襖の前に座り、手を膝の上に揃える。
「御一行様をお連れしました。」
醇守の声に返事するように襖の向こうから咳払いが聞こえた。
醇守は音もなくそっと襖を開く。
「どうぞ、お入りください。」
部屋に入ると奥に薄っすら人が座っているのが見える。
顔には布袋のようなものが被さっており見ることができない。
城主は持っている扇を上下に振っていた。
傍には座布団が人数分敷かれており、ここに座れということなのだろう。
それぞれ腰を下ろし、城主が口を開くのを待っていたが一向に話す気配がない。
耐え兼ねたレイが何か話し出そうと口を開こうとしたが、隣に座っていた涼訵に止められた。
不満そうなな表情を浮かべるレイから視線を外し、目の前の微動だに動かない城主に向き直る。
くくくっと悪戯そうに笑う声が聞こえたかと思うと、城主が肩を揺らして笑っていた。
「あー、面白い!人間はこれだからたまらん!」
きょとんとした顔でレイたちが見ている中、その小さい城主はケラケラとまだ笑っていた。
「遊びが過ぎるぞ。私達は依頼を聞きに来たのだ。」
「そうそう、申し訳ない!これも取らんとな。」
布袋の下から、七つくらいの少女の顔が現われた。
「我、丹波国の長兼八幡城城主、みづくと申す!以後よろしく頼む!」




