ep.21
「ここは丹波国。御覧の通りどこを見ても異形の者だらけの国でございます。小さくはありますが、とても活気にあふれた国です。」
胡渡の身長の半分程あるイタチは、先頭でこちらを見ながら道案内をしてくれている。
細い道を抜け大きな通りへと出る。
「この通りはこの国で一番大きい通りで、まだ早いから殆ど閉まってますけど、もう少し時間が経つと出店が開きだしてとても賑やかになります。」
「市場みたいな通りなの?」
レイは少し慣れたのか怯えた様子はなく、むしろうずうずした様子でイタチに問う。
「左様です。いろんな物が売られますよ。食べ物から日用品とかよくわからないものもいっぱい!中でもネズミの串焼きはそれはもう!!!」
レイのひきつった表情にイタチははっと我に返り、コホンと咳払いをした。
「失礼しました。ここは後ほどにして別のところから巡りましょう。」
イタチのに案内されて、鍛冶屋や大食堂を巡りひときわ古い建物の前で足を止めた。
「ここの荒物屋は薬も揃っていてすごく便利なんですけど、店主が変わり者で有名で皆様のような観光の方は近づかない方が良きかなと。まぁ、ここに入るお客さんなんて滅多にないんですけど。」
木造の建物はどこも蔦に覆われており、屋根に置かれている瓦は所々今にも落ちてきそうなくらい外れている。
「ここってさっきの…?」
「あぁ、メドツの店だな。」
「あ、え、皆様お知り合いでしたか!いやはや、あの、その…今のは聞かなかったことに…。」
イタチは震えながらどんどん小さくなってしまった。
「別に構わん。あいつの性格だ、そう思わても仕方ない。」
ふぅっと安堵した表情を浮かべ、イタチはふるると体をふるった。
「さて、次がご案内できる最後でございます。」
大通りの端から先ほどの市場まで戻り、さらに奥へと進んでいくと道の突き当たりに鳥居が建っているのが見える。
鳥居は木の丸太で作れらており、表面には薄く深緑色の苔がびっしり生えていた。
鳥居の奥にある石段は山の中腹まで伸び、先にまた小さい鳥居が見える。
小山の山頂付近の木々に間からは、城門のような黒い屋根がちらりと見えた。
「ここが【八幡城】の入口となります。山の中腹にはお寺があるそうですが、下々の者はここを通ることは基本許されておりませんので実際に見たものは少ないでしょう。」
小山を見上げながら説明しているイタチのもとに、ふわふわと火の玉が飛んできた。
何やらゴニョゴニョとイタチが話しかけている。
「すみません皆様。急用ができてしまったので、私はここらでお暇させていただきます。では、この国をごゆるりとお楽しみくださいませ。」
ぺこっとお辞儀をすると、火の玉と一緒に四足でかけていった。
「この石段を登るのは嫌だけど、ちょっとお城見てみたかったなぁ。まぁ入れないなら仕方ないかー。」
ため息をついて鳥居の方に視線を戻すと、涼訵がもうあと一歩で潜りそうな位置まで移動していた。
「ちょっと!!今入ったらダメだって言われたばっかりですよ!!」
涼訵は歩みを止め、きょとんとした顔で振り返る。
「問題ない。入るぞ。」
「大ありですよ!!ちょっと千陽も止めて!!」
レイは涼訵の腕を引っ張るが、そのままずるずると引きずられてしまう。
「だから問題ないと言っているだろう。今回の依頼主はこの上だ。」
涼訵が山頂を指さすと、石段の上の方から何かがすごい勢いで降りてきた。
それは鳥居の上を飛び越え、レイたちの前に着地した。
何も繋がれていない牛車は、くるりと半回転をし後方をこちらに向けた。
「ひっ。」
レイの短い悲鳴が聞こえる。
後方には白髪をうねらせ、端まで裂けた口をゆっくりと開く大きな顔が張り付いていた。




