ep.19
「すいませーん…」
レイの声は暗闇に吸い込まれて消えてしまう。
先ほどから人を呼んでいるが出てくる気配がない。
「涼訵さん、出てくるところ間違えたとかじゃないですよ…ね?」
レイは、天井や戸棚をキョロキョロ見渡しながら、肩をすくめている。
薄暗い店内には、いろんな大きさの瓶に入った得体のしれないものが青白く発光しており、天井からは同じ種類で束ねられた木の実や草木が吊るされていた。
「いや、間違いない。ちょっと来るのが早すぎたか。外の様子を見てくる。お前たちはここで待機しておけ。」
「あ、待って!おいていか……あー、行っちゃった。」
大きく軋む音をたてながら扉はゆっくりと閉まる。
「こんなとこにおいていかないでよ…」
室内の壁にはいろんな面が貼り付けられ、こちらをずっと見下ろしているようだった。
「レイ、これなんだろう?」
胡渡が瓶の中でふわふわと点滅している光を不思議そうに眺めている。
「胡渡、よく平気でいられるね…」
「近くで見るとより綺麗。ここ怖くない、私は暗いところが落ち着くし。」
「胡渡ちゃん、置いてある物には触らないでね。」
こくっと頷き、また瓶の中を眺める。
「日の光が恋しいわ…。もう夕暮れだし。お店っぽいけど閉店時間過ぎてるんじゃない?」
レイは窓を覆い隠している、黒いカーテンに手をかけた。
「開けちゃぁいかんよ。日は薬に毒やかいな。」
レイのすぐ後ろでしゃがれた低い声が聞こえた。
レイは悲鳴を上げて、二人のところに駆け寄り胡渡の後ろに隠れる。
クァクァと不気味な笑い声に反応するかのように、部屋の奥から順に蠟燭が灯る。
先ほどまでレイがいた場所に、つぎはぎだらけの着物を着た男がニタァと笑みを浮かべながら出っ張ったおなかを叩いていた。
「いやぁ、そんな飛び上がるほど驚くとは思わんかった!」
頭に巻いている手拭いを後ろにずらし、また笑いだす。
「人の小娘、そりゃあ蓑火ってゆうやつよ。害はねぇから瓶割らねぇように触っていいで。」
胡渡はそっと瓶を持ち上げ、傾けたり下から覗いたりまじまじと観察し始めた。
「で、涼訵が来ると聞いていたぁが?」
「外の様子を見に行ってます。」
千陽が答える。少し身構えているようだった。
「そいなら、そのうち戻って来るか。おまえさんら、そこに腰かけぇ。お茶、持ってきちゃる。」
男は一段高くなっている座敷へ上がり、ペタペタと奥の部屋に消えていった。




