表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
列国の秘史録  作者: sleet
鹿鳴之宴
20/37

ep.18

春が遠ざかり初夏の香りがし始めた頃、涼訵(スズチ)の招集がかかった。

「今回の依頼は護衛だ。前回の件もあり、私も同行をする。」

「あのぉ、それってもう涼訵(スズチ)さん一人で終わっちゃうのでは…?」

「まぁそうなのだが、向こうのご指名だ。出発は明日の昼頃。以上、解散。」


昼下がり、涼訵は全員が集まっているのを確認して転送門へと近づく。

通行証を渡そうとしたその時だった。鈴の方を持っていたせいか、パキンと音をたてて崩れてしまった。

それを目撃したレイと千陽は、あっ、と声を上げ、まずそうに互いの顔を見合う。

すぐに、先ほど入ってきた扉の外からどたどたと走ってくる音が近づいてくる。

「あぁ…これはまずい…」

レイと千陽は胡渡を引っ張って、涼訵の後ろに隠れる。

ほぼ同時に扉が激しく開かれ、甲高い声が部屋に響く。

「こんの馬鹿力!!!今月に入って何回目だ!!貴様は一体後何回壊せば気が済むんだ!!!」

きぃきぃ言っているソレは、薄い茶色でフワフワしている耳やピンとした髭をぴくぴく震わせながら興奮した様子で怒鳴っていた。

「あぁ、すまん。新しいの貰えるか?」

「だぁかぁらぁ!!それはうらの可愛い子供たちが苦労して作ってるんだ!!もっと大事に扱え!!」

涼訵の言葉に真っ白な背中の毛を逆立てている。三本の尻尾は倍ぐらいに膨れていた。

「…かわいい。」

「ちょっと待って、胡渡。確かに全身もふもふで大きな猫だけど、あの人癇癪持ちで有名だから。」

シャーシャー言いながら怒っている大きな猫に聞こえないように小声で話す。

「おい、うぬら…。今、なんと…」

どうやら聞こえてしまったみたいだ。2本脚で歩きながらこちらに近づいてくる。

「クーアイ。本当にすまない。次からはもっと大切に扱う。今日はこれで許してもらえないだろうか?」

涼訵は間に入り、短い木の棒を取り出しクーアイに差し出す。

「にゃ…それは!」

受け取った木の棒をスンスンと鼻に押しあて、喉を鳴らしながら頬にすりすりとこすりつけている。

「これ、たまんにゃい…」

何やらぶつぶつ呟きながらしばらく満喫していた様子だったが、はっと我に返り慌てて棒をポケットにしまった。

「うらはとてーーーも優しいから今回はこれで多めに見てやるにゃ!」

クーアイは来た時と変わらず慌ただしく部屋から出ていった。

「涼訵さん、何あげたんです?」

「ん?あぁ、またたび。」

「そんなの常備してるんですか…?」

「クーアイはこれが好きだからな。なだめるには一番手っ取り早い。」

涼訵の代わりに千陽が再度、通行証を受け取りにいく。

「うちの所長が申し訳ないにゃ。最近仕事の方でトラブル続きでものすごくピリピリしてるのにゃ。許してあげてほしいにゃ。」

受付に座っていた茶色の猫は何度もぺこぺこと頭をさげなら、千陽に通行証を渡した。

千陽の後ろから涼訵が顔を出す。

「いつもの事で慣れている。何も問題ない。こちらこそ壊してしまって申し訳ない。」

茶色の猫はまたぺこぺこと頭を下げ、お気をつけてと四人を見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ