ep.11
別室で三人は集まり、話をしていた。
「大丈夫かな…シューカさん。」
「今はそっとしておこう。僕たちは本来の依頼を達成しないとね。」
「丘の上の教会。明日行ってみない?」
「そうだね。町で花を買って挨拶しに行こうか。」
三人が解散した頃、外はすっかり日が落ちていた。
翌日、シューカの容態もよくなり家まで送り届けた後、彼女の母を訪ねた。
丘の上の教会はほぼ倒壊していて、あちこちツタがはっていた。
教会の横に小さな石がいくつか積み重なった墓があった。
墓の前には一輪の花が添えられていた。
その花に寄り添うように花束を供え、手を合わせた。
ここから町も海も彼女の家もよく見える。今でも見守っているのだろう。
三人はしばらく他愛もない話をしながら、彼女が愛した町を眺めていた。
町に帰り着いたころ、わらわらと人々が広場に集まっていた。
どうやら、あの小さなレストランを覗き込んでいるみたいだった。
人混みをかき分け、店の中に入る。
「すまんね、今日は臨時休業で…」
店主は振り返り、なんだお前たちかという目でこちらを見た。
「どうかしたんですか?」
「こっち、きておくれ。」
案内された店の二階では、あちこちにまじないの札が貼られていた。
一番奥の部屋で店主が立ち止まる。
「今朝まで元気に働いていたんだ。急に倒れたかと思ったら…あとは見た方が早いさ。」
扉を開けると、澱んだ重い空気と何かが腐ったような臭いが充満していた。
たまらず窓を開けようとするレイを千陽が強く止める。
「開けたらだめだ!!」
「ご、ごめん…。」
「いや、怒鳴ってごめん。これは穢れ…?いや返されたか…。」
「さぁね、あたいには判断できんさ。部屋から漏れないように対策はしているから問題はないけど、この子はもう…。」
ベッドに寝かされている女性は、この店のウェイトレスだった。
彼女の皮膚にはたくさんの赤黒い、蛇が這ったような傷がみえた。
そこからどろりと黒くねっとりとしたものが溢れている。
「浄化…まにあうか…」
「できる限りのことをやってみよ。店主さん、緊急だから口頭で依頼の手続きするね。」
レイは、店主の前に立ち手を取る。
「私の言葉をそのまま続けて。」
『『我願う、この者の浄化を依頼する』』
二人の間に古い紙切れが現れ、黒いインクで文字が書かれていく。
『汝の願い、応諾した』
文字の上にジリリと焼きつけるように模様が刻まれていく。
それは天秤に剣が突き刺さるように契約印が入ると、紙はまとめられレイの手元に渡る。
「これでよし。あとは…胡渡、手伝ってくれる?えっと…」
レイは、胡渡に必要なものをそろえてもらうように頼み、小さな鞄からチョークを取り出した。
床に大きく円を描き、すぐ内側に沿うようにして細かく図形のようなものを書き込んでいく。
またさらに内側に円を描き、沿うように書き足す。数回それを繰り返し、彼女の両足が入るくらいの小さな円にまでなった。
タイミングよく、胡渡が桶を抱えて戻ってきた。
受け取った桶の中には、冷たく澄んだ綺麗な水と透明なガラス片がいくつか沈んでいた。
「ありがとう。千陽、胡渡とこの部屋に防護と静寂魔法かけれる?」
頷く千陽に胡渡が防護は私がする、と言いベッドから離れた部屋の隅に座り込む。
反対側に千陽が座るのを確認するした、レイは深く深呼吸をした。
「いい?いくよ…」
後方の二人が床に両手をつける。
植物の蔓のようなものが部屋全体の壁を一瞬で多い、夕日のような朱色の蕾をつける。
天井には赤く血のような色の魔法陣が染み出していた。
レイは大きく息を吸い、不思議な音色の唄を歌いだした。




