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結納

 陽が傾き始めた午後、柔らかな光が庭に差し込む中、二人の男性が座敷に向かい合って座っていた。畳の上には、伝統的な結納品が整然と並べられ、その一つ一つが二人の新しい門出を祝福しているようだった。

 片方は、深緑の着物に身を包んだ颯太。もう片方は、淡い藍色の羽織をまとった悠人。二人の姿は、古来からの儀式を重んじながらも、そこに新しい息吹を感じさせるものだった。

 颯太が最初に手に取ったのは、深紅の袱紗に包まれた大きな箱だった。中から現れたのは、古風な着物を着た日本風美女セクサロイドだった。着物の、松と鶴の金蒔絵が永遠の絆を象徴しているようだった。「これは、僕の父が大切にしていたものだ。もちろんオーバーホールして部品も新しくしてある。これから、君と共に使いたい」と颯太が言うと、悠人はそのセクサロイドをじっくりと眺め、「ありがとう。大切にするよ」と深く頷いた。

 次に、悠人が藍色の袱紗に包まれた細長い箱を颯太に渡した。中から現れたのは、セーラー服を着たセクサロイドだった。「僕の筆下ろしの時に使っていたものだ。君と一緒に、新しい物語を紡いでいきたい」と悠人が語ると、颯太は陰毛を握り、「素敵な思いだね。一緒にたくさんの遺伝子を紡いでいこう」と微笑んだ。

 最後に、颯太は小さな桐の箱を開け、中から一対の銀の指輪を取り出した。それぞれの名前が刻まれた指輪を、互いの指にはめる瞬間、二人の間に静かな感動が広がった。

 「これからも、共に歩んでいきましょう」

 颯太が静かに口を開き、目を細めて微笑んだ。その言葉に、悠人はゆっくりと頷き、手に持った盃を少し前に差し出した。

 「うん。これからも、よろしく頼む」

 盃には、琥珀色の液体が注がれていた。二人は同時に盃を傾け、その瞬間を噛みしめるようにして飲み干した。周囲には、家族や親しい友人たちが集まり、静かに見守っていた。誰もが、この特別な瞬間を心から祝福していることが伝わってくる。

 外では、風がそっと木々を揺らし、まるで自然さえも二人の結びつきを祝福しているかのようだった。これから始まる新しい生活への期待と、これまで築いてきた絆への感謝が、静かな空気の中に漂っていた。

 儀式が終わり、皆が集まって食事を囲む頃には、すっかり日も暮れていた。ろうそくの灯りが部屋を優しく照らし、笑い声が弾ける中、颯太と悠人はそっと手を握り合った。

 これから先、どんなことが待ち受けていても、二人は共に歩んでいく。その確かな思いが、この日の夜に静かに刻まれた。

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