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第46話 波乱

「ダメですよ…鬼山さん…。」


今にも凛桜を襲おうと前のめりになる鬼山に棒崎がストップをかけた。

狂気が具現化したかのような表情で鬼山は棒崎の方を見る。それはまず邪魔をした棒崎を排除しようとするかのような勢いであった。

そんな鬼山の恐ろしい目で見られても手に汗握りながら棒崎は話を続ける。


「私達の今回の目的を…お忘れですか…?」


(目的?)


凛桜は棒崎の言う『目的』という言葉に引っかかる。それが三嶋達と練った計画が崩れてしまいそうな、そんな不安が凛桜の頭をよぎる。


「その女を…今ここで殺せば…全てが台無しに…なりますよ…。鬼山さんの…日本での…最後にして最大の…晩餐のために…。」


「………………。」


棒崎に説得された鬼山はしばらく無言で下を向き何かを考えているようだった。

そしてゆっくりと顔を上げるとさっきまでの狂気は消え、普段の顔つきに戻っていた。


「そうやな。悪いな棒崎、お前を殺してまうところやったわ。最後の晩餐な…ええ事言うやないか。」


「いえ…考え直してもらえて良かったです…。それでは羽山の方に連絡を…取りますので…。」


「よし、ほんなら準備でもしよか。」


鬼山は膝をパシンッと叩くとソファーから立ち上がり、部屋の扉の前にいた凛桜と加賀の方へゆっくりと歩いてくる。

その間に、凛桜は棒崎の言った『目的』と『晩餐』についてさっきからずっと頭の中で引っかかっていたので考えを巡らせる。


(鬼山達には私以外にも何か目的がある?晩餐って何?鬼山にとって晩餐とは…。葛西さんがこっそり私にだけ言ってた…警察に内通者がいるかもしれないと…。確かに少し不自然な形で私と加賀さんは急に現れたのに鬼山達は何も疑わずに受け入れた…。もしかしたら今回の計画がバレて…。)


そんな色々な事で考えを巡らせていると鬼山がもう目の前までやって来ていた。

凛桜も加賀もこのまま準備のために鬼山は扉から出ていくと思っていた。が、突然加賀の顔面に大きなハンマーで叩かれたかのような衝撃が襲う。

それは無表情で鬼山が加賀の顔面に渾身の右ストレートを打ち込んだ衝撃だったのだ。

その威力は凄まじく、たった一発で加賀の体は宙を舞い、鼻は折れて血が噴き出し、前歯を含む数本の歯がバラバラに飛び散った。

そして地面に倒れ込んだ加賀は顔面を両手で押さえながら『うー!うー!』と唸りながら転げ回る。


「加賀さんっ!!!」


凛桜はすぐに転げ回る加賀の元へと走り寄り怪我の様子を確認する。

それはおよそ人の力で殴られたとは思えないような惨状であった。

そしてそんな2人を見下ろすように鬼山が近づいてきた。


「なんやなんや。えらい仲良さそうやんか。………まぁどうでもええけどな。どけや女。そいつ殺すから。」


鬼山の全てを押し潰すような殺気に飲まれることなく凛桜は急いで打開策を考える。


(このままじゃ加賀さんが殺される!鬼山の今の発言で計画もバレている可能性が高くなった!残された手段は…。)


ある決心をした凛桜は加賀の手をギュッと握る。

そして加賀の耳元でこう囁いた。


「加賀さん、『生きてここから出たい』と心の中で強く想って下さい。」


顔面を襲う激痛の中で急に聞こえた凛桜の声に無意識に反応した加賀は言われた通り『生きてここから出たい』と心で強く想った。

すると神宿の手の力が発動し、2人の手が白く輝き出した。

近くでその光を見た鬼山は眩しさと驚きで一瞬後ろによろめいた。

その隙を見逃さずに凛桜はもう一度加賀の耳元で小さく何かを伝えた後に大声で叫ぶ。


「加賀さん!今です!!逃げて下さい!!」


理由もわからない加賀だったが顔面を押さえながら扉から飛び出して下の階のホールへ降りる。

本部で何があったか全く知らないホールにいたメンバーは何事かと加賀を見るだけだった。

逃げ出すのに1番の障害になるはずだった金村もトイレにいるらしく、加賀が逃げるには絶好のチャンスだった。

そのままホールも走り抜け、加賀はHell Holeから命からがら逃げ出す事に成功したのだった。

そして加賀は最後に凛桜から託された言伝を葛西達に伝えるために皆がいる場所にひたすら走るのであった。


そして鬼山の元に1人残った凛桜は力を使う所を見た鬼山と棒崎の動向を伺っていた。

そして何より今の力に反応した羅針盤を見て雪達が飛び込んで来ないか心配だった。それはまだ計画を終わらせるには早計だと思ったからだ。

そういった事態を防ぐために加賀に言伝を頼んだので、加賀が雪達の所に間に合う事をただただ願った。


一方、よっぽど眩しかったのか目頭の部分を指で押さえていた鬼山は凛桜の着物の胸ぐらを掴み持ち上げ、ソファーの上にぶん投げた。


「くそ女が…。一体何した?確かあのゴスロリ女とやり合った時も同じ現象が起きてたな…。」


「鬼山さん…今のが…羽山がこの女を欲しがる…理由じゃないですか…。」


「そうやろな…。おい、答えろ。何した?」


「……………。」


凛桜は鬼山の問いには一切答えずにただ鬼山を睨みつけた。

その目にとてつもない怒りを覚えた鬼山は反射的に凛桜を殴ろうと拳を振り上げる。

今にもそれが凛桜に襲いかかろうとした瞬間、棒崎がスマホを鬼山へ向けた。


「すいません…羽山に連絡がつきましたので…お話し下さい…。」


そう言われた鬼山は少し冷静さを取り戻してスマホを棒崎から乱暴に奪い取る。

そのまま電話で羽山と会話を始めた鬼山は凛桜から少し離れていった。そしてしばらくしたら話がついたのか『分かった。』と言ってから電話を切り、凛桜に話しかけてきた。


「17時にある場所でお前を羽山に引き渡す事になった。だから大人しくここで待っとけ。棒崎!こいつをちゃんと監視しとけよ!」


そう言うと鬼山は外に出るため扉の方へ歩いていく。そしてドアノブに手を掛けた時、鬼山はまた狂気と悪意に満ちた笑顔で凛桜の方へと振り向くとこう言った。


「色んな人間の想いを背負ったお前のその目…態度…ほんま美味そうになったなぁ…。楽しみやわ…。」


そう言い残して鬼山はゆっくりと部屋から出ていった。

『もう怖くない。』と啖呵を切った凛桜だったが、今の鬼山を見ると初めて出会った時の恐怖や寒気が体を支配する。存在してはいけない『絶対悪』…やはり一筋縄ではいかないとてつもない巨悪だと改めて実感した。

それでもなんとか計画通りに事が運んだ事に凛桜は一旦ホッと胸を撫で下ろすのだった。



時間は少し遡る。

葛西達とHell Holeの裏手のビルで待機していた雪は、ハカナバナの羅針盤が急に動き出したことに気付く。


「お嬢から反応があった!!緊急事態の連絡のはずだよ!!急いでお嬢の所に向かわないと!!」


雪は羅針盤を見るやいなや、急いで凛桜の元へと駆けつけようとバタバタと部屋から飛び出した。

急な雪の行動に驚きながら葛西や四宮もその後を追いかけた。


「ちょ!ちょっと待ちなさい!!一体何が起こったんだ!!」


雪を追いかけながら葛西が大きな声で質問をする。

だがそれには反応を見せない雪はビルを飛び出して通りに出ると、もう一つ向こうの筋にあるHell Holeの正面へと向かうため通りを爆走しだした。


そして雪が曲がり角を曲がろうとした時、雪は誰かと正面からぶつかった。

ぶつかった相手は尻もちをついて転んでしまっている。

雪がその男を覗き込むようによく見ると、Hell Holeから逃げ出してきた加賀だった。

グチャグチャになった顔だったのですぐには分からなかったのだ。


「うわ…キモ…。お前それどうしたの…?」


キモという言葉に加賀は少し傷付きながらもヨタヨタと立ち上がる。

そうこうしている内に追いかけてきていた葛西と四宮と黒子衆も追いついてその場に到着した。


「おい!加賀!一体なんでお前がここにおんねん!?凛桜さんはどうした!?」


何が起こっているのか把握できない葛西は加賀の胸ぐらを掴んで激しく揺らす。

加賀は顔面の激痛と激しく揺さぶられる、そんな最悪な状況でも必死で葛西に凛桜からの言伝を伝えようとする。


「り…!凛桜さん…!から…!言伝を!預かって…!きたんや!だから!離せって!!」


その言葉を聞いた葛西は加賀を揺らすのを止めて胸ぐらを離した。


「言伝やと!?…ここではまずいな。一度ビルへと戻ろう。」


「お嬢がピンチなんでしょ!助けに行かないと!」


「いや…言伝があるということはまだ計画は続行しているということやろう。それに加賀を追いかけてくるアップグルントのメンバーに見つかると危ない。」


その葛西の言葉にブンブンと無言で頭を縦にふる加賀。

そして葛西達は見つからないように急いでビルの部屋へと戻っていくのであった。


初っ端から大波乱が巻き起こった計画は果たして成功するのだろうか…。

この時、これからもっと混沌とした事態になっていく事を誰も想像すらしていなかった。

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