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第37話 望まぬ別れ

次の日、三嶋は花咲神社を出る前にもう一度全員を集めて計画の説明をするため改めてみんなを部屋に集める。

だが、奏には声を掛けたのだが来ず、その場には居なかった。仕方なく奏は抜きで最後の打ち合わせをする。

詳しい三嶋の計画は以下の通りだ。


・決行日に凛桜がわざと鬼山に捕まる。


・鬼山から羽山へ凛桜の引き渡しの連絡が来たら特         定の場所へと羽山に同行している三嶋が誘導する。


・落ち合う場所に三嶋が用意した警察が待機しているので、決定的な瞬間に踏み込んで全員逮捕する。


大まかに説明するとこういった流れになる予定である。確かに上手く事が運べば問題は解決するだろうが凛桜の負う負担が大きい。

あの狂った鬼山に捕まればどんな酷い目に合わされるか分かったものではない。

だが、それについて三嶋は安心するようみんなに伝えた。

なぜなら羽山はこれからのために凛桜の力を必要としており、五体満足でなければ鬼山と羽山の契約は成り立たないのだ。

この契約にはかなり大きい金額が動いているため鬼山も迂闊に凛桜に手を出せないだろうという事だ。


しかし、三嶋のその意見にアマネとマリアが冷や汗を垂らしながら反論した。


「あんたはあの鬼山と正面から会ってないからそんな事が言えんのよ…。同じ人間だなんて思えんかったわ…。」


「『絶対悪』や『純粋悪』なんて言葉だけだと思っていたけど…あの鬼山って人は本当に悪魔かなんかだと思ってしまいました…。」


「そ…そんな人間が存在するんですか…。では根本的に計画を練り直すしかないですね…。」


三嶋が計画の再考を口に出した時、四宮に抱えられた雪が部屋に入ってきた。


「それについては雪がお嬢を守るから大丈夫。」


「あかんで!雪ちゃん!そんな状態で何かできるわけないでしょ!」


頑なに計画に参加しようとする雪を厳しい口調でアマネが止めようとする。


「ママ…大丈夫だから。後6日もあれば体は動かせるようになる。それに、お兄ちゃんの雪への最後の言葉をさっき四宮から聞いた。だからこそ鬼山に立ち向かわなければならないんだ!」


雪が四宮から聞いた謙信の言葉とは『必ず雪がこの借りを返す』だった。

それを聞いた雪は謙信を失った悲しみより、その謙信の最後の言葉の想いに応えなければならないという使命感がまさった。

雪とアマネのやり取りを聞いていた凛桜は1つ気がかりな事があったので割り込んで雪に質問をする。


「雪さん、願いの代償はどうなりましたか?」


「何となくだけど分かってる。けど今は言えない。」


「それなら尚更危険じゃないですか!」


「そんな事どうだっていい!!このまま逃げたままだと一生後悔を引きずって頭がおかしくなる!!だからお願い!!雪を連れてって!!鬼山に対抗できるのは雪しかいない!!」


鬼気迫る程の心の底からの訴えに、場に居た者はそれ以上雪を止める言葉が出てこなかった。

一時の沈黙の後、静かにアマネは雪を抱きしめながら諭す。


「じゃあ1つだけ約束してね。絶対に死なないって。できる?」


「うん…できるよ…。」


雪は嘘や無理にできると言ったわけではなく、アマネに抱きしめられたことで余計に死ねない、死にたくないという思いが強くなった。


「生き残った黒子衆も凛桜様と雪を守るために動きますので安心して下さい。」


四宮がそう言うとアマネは『お願いします。』と頭を下げた。

護衛の問題は解決したが、三嶋は建物内に監禁された場合はどうするのかを議題に挙げる。護衛がいる事がバレると計画そのものが破綻してしまう。


「凛桜さんが閉じ込められたりした時どうするかですね…。たぶん外部と連絡できるような物は全て没収されるでしょうし…。」


「その点も大丈夫。雪がこれを持ってるから。」


雪は腰につけていた鞄から『ハカナバナの羅針盤』を取り出した。

それは凛桜が神宿みじゅくの手の力を使った時、羅針盤の針が動くという仕組みになっている。


「お嬢が身の危険を感じたら力を使えばこの羅針盤が反応する。そしたら雪達は計画が台無しになろうが助けに行く。これで良いでしょ?」


「分かりました。本当に緊急事態になった時は力を使います。」


「それでは今分かる問題は解決したかな?また細かい事が決まり次第私から花山さんへ連絡をします。私は違和感が無いようにこれから羽山さんと合流して行動を共にしますので、みなさん覚悟を決めてよろしくお願いします。」


「あっ!ちょっと待って!アタシも大阪に帰るからついでに乗せてってよ!」


帰り支度をしようとした三嶋をマリアが引き止める。


「その計画に少しでも役に立てるようにちょっとやらなきゃいけないことができたわ。お願いね。三嶋ちゃん♡」


マリアのドギツいウィンクに鳥肌が止まらない三嶋だったが大阪までの同行を快く受け入れてくれた。こうして計画の会議は終わり、マリアと三嶋は急いで大阪へと戻っていった。


アマネは雪をまたベッドまで運び、自分は最後まで雪の身体が良くなるように看病を続けると言う。


各々が最終計画のため動き出した時、凛桜は奏を探しに神社の境内を探す。

すると、入口近くで花山と話をしている奏の姿を見つけた。距離が離れていたため、2人が何を話しているのかは分からなかったが、話し終えたのか奏は花山にお辞儀をしてから凛桜のいる方へと歩いてくる。

奏は歩いている途中で凛桜の存在に気付き、バツが悪そうに気まずい顔をする。


「凛桜…ちょっと向こうで話そっか。」


奏は凛桜を誘い、一昨日の夜に2人で話をしたベンチへと向かう。

ベンチに座ると奏はすぐに凛桜へとさっき花山と話していた内容を説明する。


「あたしね、大阪に帰るね。オーディションの曲…完成させないとだし…。それにやっぱあたしは凛桜の足を引っ張っちゃってる気がして…何の役にも立ってないし…。

だから花山さんに駅まで送ってもらうように頼んでたんだ。」


「オーディションは心から応援してるし、奏は夢を優先して欲しい!

でもね!奏が何の役にも立ってないとか絶対にないから!奏のおかげで私はここまで強くなれたんだよ!?あの時奏と出会ってなかったらきっと私は何も知らずに死んでたかもしれない…。」


「違う!あたしは凛桜の夢を叶えてあげるだとか言ってたのに、いざ大きな問題が起こったら何にもできなかった!!友達なのに何にも…!!

みんなは凛桜のために何かしようと必死になってるのにあたしは自分の事を選んでしまった!!

本当にごめん…何が言いたいのか、何がしたいのか分からなくなった…。」


『とりあえず…行くね…。』と言い残して奏は走って花山の車の所へと行ってしまった。

納得のいかない凛桜は奏を引き留めようとする。

それは計画に参加してほしいだとか、自分の傍にいてほしいとかではなく、奏が自身をそれ以上責めないで欲しかったからだ。

凛桜は心から奏に感謝をしているし、今回の事で奏に対して失望などこれっぽっちもしていないのを伝えたかった。

走り去る奏の背中に向けて凛桜は短く本心の言葉を伝える。


「奏!!!オーディション!!!応援してるから!!!歌でみんなを幸せにしてあげて!!!」


その凛桜の声と気持ちが奏に届いたのかどうか分からなかった。

なぜなら奏は1度も振り返ることなく花山の車に乗り込んでいったからだ。


花山は車の後部座席に乗った奏をルームミラーで見る。

そして奏に最後の確認をした。


「このまま出て良いのかい?」


奏は花山の問い掛けに無言で俯きながら頷く。

もう一度ルームミラーで奏を見た花山はアクセルを踏み、奏を送るために駅へと向かった。

奏の表情を見た花山はやれやれといった感じで声を掛けてきた。


「そんなに顔がぐしゃぐしゃになる程泣くぐらい後悔してるなら、素直になれば良かったんじゃないか?ほら、これは私の携帯番号だ。いつでも連絡しなさい。すぐに迎えにいってあげるから。」


奏は自分でもどんな感情でこんなに涙が溢れてくるのか分からなかった。

ただ1つ分かるのは、数多の感情の中でも『自分への不甲斐なさ』によってこんなに泣いているんだと思い、また涙が止まらなくなった。


(また…凛桜と笑顔で会える日…来るのかな…。)


そんな淡い想いを抱えたまま、2人の道は別々の方向へと伸びていくのであった。

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