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第35話 凛として…

鬼山襲撃の翌日は曇天の中朝を迎えた。先行きの悪さを空さえも暗く暗示しているようだった。


花山が夜明けと共に神代村へと様子を見に行ってから3時間程経っただろうか。

昨日の夜は神代の現状を気にしたり、奏とのすれ違いがあったりと凛桜は全く寝付けずにいた。

いくら考えても問題がすぐ解決するような案は思い浮かばず、凛桜は1人で縁側に座りながら花山の帰りをただただ待ち続けた。


すると神社の表の方からエンジン音などが聞こえ、そのまま車が停車した気配がした。

しばらくすると花山の凛桜を呼ぶ声がする。それに返事をして凛桜は声のする方へと急いで向かう。

百合や謙信はどうなったのか、神代は今どんな状態なのか、少なからず吉報がある事を望みながら走る。

声の元へ着くと苦い表情をした花山が居た。そして花山の横には黒子衆の男が1人立っていて、凛桜の顔を見ると安堵したようだった。


「凛桜様!ご無事で良かった…。私は黒子衆の四宮しのみやと申します。生き残った者で後処理をしていたら花山さんがやって来て、凛桜様がこちらに居ると聞いて連れてきてもらいました。」


「後処理ってどういうことでしょうか!?お母様はどうなったんですか!?」


「凛桜さん、落ち着いて。とりあえずみなさんも呼んでから話をしましょう。」


花山の指示に従い、一度落ち着いて寝室に奏達を呼びに行く。

そこには奏とマリアが居たので事情を説明して客間へと来てもらう。その時も奏は気まずそうに凛桜と目は合わせてくれなかった。

3人で客間に着くと雪の看病をしていたアマネも呼ばれて席についていた。

全員が揃うと花山が仕切り、神代での話が始まる。


「みなさん揃われたようなので四宮さんに現状の説明をしてもらいます。できる限り落ち着いて冷静に聞いて下さい。では…お願いします…。」


神妙な面持ちの花山から話を振られた四宮は俯いたままで中々話を始めない。これだけで吉報なんて1つもなく、神代が非常にマズい状態である事がみんなに分かってしまった。

そんな中、凛桜は真っ直ぐ四宮を見て話を促す。


「四宮さん。何も気にせず、全て本当の事を話して下さい。どうかお願いします。」


「分かりました…。まずは凛桜様達はどこまで知っておられるのでしょうか?」


「謙信さんが鬼山から雪さんを取り戻し、私達に雪さんを託して、そのままお母様と謙信さんは2人で神代に残った所までです。」


「そうですか…。」


四宮はまた俯いて言葉を詰まらせてしまう。

凛桜は余程辛い事があったのだろうと察し、黙って四宮が語るのを待った。

すると小さく身体を震わせながらポツリポツリと四宮は語り出した。


「たぶん、凛桜様達と百合様達が別れた後でしょうか…私は鬼山達がやって来た時、正面入り口で裏切った黒子衆に気絶させられていました。

目を覚ますとすぐ先に仲間に支えられて立つ鬼山、そして百合様と謙信さんが相対する姿が目に映りました。

意識が朦朧とした中だったので会話の内容までは詳しく分かりませんが、しばらくすると母屋から火の手が上がったかと思ったら…百合様達は背後から銃で撃たれて…。」


そこまで聞いて凛桜は心臓が跳ね上がるほど鼓動が速くなる。

他の3人も驚きの表情で言葉を失っているようだ。

そんな凛桜達を見て四宮はまた話す事ができなくなった。

しかし、凛桜の『続けて下さい。』という覚悟を決めた一言でまた語り出す。


「その後鬼山は部下を連れて神代を出ていき、謙信さんは倒れていた百合様を抱えながら本殿の方へと歩いていきました。

なんとか立てるようになった私は2人の後を追いかけましたが…着いた頃にはもう…謙信さんは本殿の外で…百合様は中で…お亡くなりに…なられていました…。」


四宮はそこまで話すと悔しさで床を叩き、悔し涙が溢れるほど頬を流れていく。


奏は衝撃の結末を聞かされた凛桜の事が心配ですぐにその表情を伺う。

奏の予想とは違い、凛桜は眉をひそめながらも涙1つ流さず、それどころか四宮を気遣うような言葉を投げかける。


「辛かったですね…四宮さん…。でも…あともう少しだけ頑張って話してもらえませんか?お願いします。」


凛桜のその声掛けに四宮は涙を拭い、呼吸を整えて続きを話し始める。


「その後は生き残った黒子衆10名と女中5名を集めて母屋の消火をし、百合様と謙信さんのご遺体を回収し安置した後、神代の中にまだ敵が居ないか捜索をしました。

その時裏の小屋の前で切り刻まれて死んでいた小早川の死体を発見しました。

そして夜が明け、全員で後片付けなどをしていた所、花山さんが来られたのです。」


こうして四宮は神代の現状を全て話し終えた。

全てを聞いて何も言葉が出てこない奏達だったが、凛桜だけは違った。

全く取り乱しもせずに、気丈で凛とした態度で四宮を労う。


「四宮さん。本当に大変な思いをされましたね。どうか少しでもゆっくりと休んで下さい。後は私がなんとかしますので…。」


「な!何をおっしゃいますか!凛桜様のご心労が1番心配でございます!」


「私は大丈夫です。母亡き今、私が神代家の当主ですので…。花山さん、神代で亡くなった者達の弔いをお願いしてもよろしいでしょうか?」


「それはもちろんお任せ下さい。凛桜さんは?」


「私はまだやる事がありますので。お母様から聞いた長年の神代の夢、そして鬼山の件。これら全て解決してからでないとお母様達に会わせる顔はありません。」


「では凛桜さん抜きで神葬祭しんそうさいは進めます。ご遺体の事を考えればそれがよろしいかと…。」


「そうですね…。私にはまだ…涙を流し、悲しみで歩みを止めるわけにはいきませんので…。今お母様達の顔を見れば歩けなくなってしまうような気がして…。」


奏は自分の隣で気丈に振る舞う凛桜の姿を見ている事しかできなかった。

本当は自分が1番支えてあげなくてはいけないのに、百合にも別れ際にそう言われたことを思い出した。

しかし、なんと言葉を掛けて良いか分からない。マリアやアマネも同じ気持ちなのか複雑な表情で凛桜を心配したように見ているだけだった。


すると四宮がある重大な事を凛桜に話し始める。


「鬼山の件ですが、それに関係する方が花山さんと合流した後に神代を訪ねて参りまして…。」


「えっ!?一体誰ですか?」


「その方もお連れしたのですがここに呼んでも大丈夫でしょうか?勝手な真似とは思いましたが、凛桜様のお力になるかと思い行動させてもらいました。」


「分かりました。その方を呼んでもらえますか?」


『承知しました。』と言い残し、四宮はその者を呼びに部屋を出ていった。

ものの数分で戻ってきた四宮は1人の男性を連れてきた。

その男は凛桜もよく知る今回の元凶になった羽山と一緒に神代村に訪れた人だった。

男はみんなが注目する中、バツが悪そうに頭を下げながら名を名乗った。


「ど、どうも…。民進党で国会議員をしております三嶋春夫と申します。」

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