第八話 バレちゃったよ....(失笑)
5つの教室のうちのあるクラスに、転送された突破した生徒たちの一部が転送された。そしてそのうちの中に、ルードべドはいた。
こんな事もできるのか。流石は学園長だな。と、ルードべドは感激した。
『コホン。まずは試験突破おめでとう。』
教室内に、学園長の声が響き渡る。その場にいる全員が、つばを飲み込み、緊張が走る。
『それでは今から、面接を始めよう。一人ひとり順に呼ばれるだろうから、呼ばれたら、教師の誘導に従ってくれ。それじゃあ、頑張ってくれ』
そういい終えたところで、放送は途切れた。
面接。どんなものなんだろうと、窓際の席にいたルードべドは、日光を差し込んでいる窓を覗き込みながら考えていた。
しばらく考え込んでいようと、そう思っていたときだった。ツンツンと、ルードべドは誰かから背中を突かれた。あまりの予想外の出来事により、うぇ?と、ルードべドは声を出してしまった。
ルードべドは背後を振り向いた。すると、そこにいたのは....。
「あるじぃ!!どうしたの?もしかして、びっくりしちゃった?」
波乱万丈。といった四文字が似合いそうな女性?の、ラルがいた。
まさか、ラルがいるなんて、奇跡だな。と、ルードべドは思いながらも、反論する。
「いや、特にびっくりしたわけじゃない。ちょっと考え事をしていたんだ」
ルードべドが考えていたこと、それは、今回の試験に対する反省だった。
彼は知った。魔法が一緒でも、ラルの魔法よりも威力が劣っていること。いくら身体強化しようとも、コレオの素の実力には及ばないこと。そして、エルラのような策略家でもないこと。
そのどれもこれもが、ルードべドの実力の無さを物語っていた。
思わず、目を伏せてしまう。そして、もう俺一人じゃ勝てないのか?と、考えてはならない事を不意に考えてしまった。
「あら、随分と落ち込んでいるようじゃない。あたしに勝ったというのに」
ルードべドは、不意に、横から聞き覚えのある声を聞いた。横を振り向き、その正体を確認する。そして、そこには、彼が気絶させて、無敗の勇者ルードべドだと白状した、エルラの声。しかし、彼女は気絶させて退場になったはずだった。なのになぜ?ルードべドの脳内に?が行き交うなか、その答えを、エルラは自白した。
「私はあのまま気絶していた。だけど、いつも状態異常に関しての人体実験を自身の身体でやっていたからか、自然とそういうものに耐性が付いていたんでしょうね。だから、あなたが戦闘を繰り広げている間に、私は目を覚ました。そしてその後、私は生徒たちを次々と狙っては倒しての繰り返しをして、合格したってわけ」
流石は新生代の人間である。予想打にもしなかった事象を、こうも簡単にやってのける。改めて、ルードべドは現在と過去との違いに気付かされた気がした。
にしても、あのときの無敗の勇者。っていうセリフは聞こえてしまったのだろうか。と、そう思ったときだった。
「受験番号810番のエルラ。いるか?」
教師であろう人物が、エルラを呼び出した。
彼女は、はい。と一言だけ言って、席を立ち上がった。
「どうやら、時間みたいね。もうちょっと話をしていたかったけど。まあいいわ。また会いましょうね。ルードべド様?」
そう、ルードべドに耳打ちで囁いて、彼女は教師と一緒に姿を消していった。
だが、そんな事は彼にとってどうでも良かった。ルードべド。エルラは、その名を口にした。そしてそれは、試験中のあの時しかルードべドは言っていない。つまり、彼女は聞いてしまったのだ。
まじかよぉ。と、ルードべドはショックを受けているときだった。
「ねぇ、さっきの人は誰?もしかして、主の婚約者?許せない.....。主のそばにいていいのは私だけだというのに....。ガルルルルル」
「違う違う。さっきの奴は、ラルが眠っていた時に闇討ちを仕掛けてきた、エルラ。とかいう元アサシンだ」
ラルの言動に、ルードべドは一瞬ドン引きしたが、それを隠しながら、ラルに弁明をした。
すると、ラルはなぁんだ。といって安堵してくれた。
そんな時だった。ガラララ。と教室の扉が開けられ、そこから先生とエルラがでてきた。
特段変化もなく、エルラは真顔でルードべドの席に座り、教師が次の名前を呼ぶ。
「8639番のヒロ。いるか?」
「ここにいます」
教師の呼びかけにルードべドは応え、席を立ってその教師の元まで移動した。
「それじゃあ、いくぞ。付いてこい」
教師が先へと進んでいく。ルードべドは早足でいく教師を小走りで追いかけながらも、ついていく。その間、無言が続いた。
そして、ルードべド達は学園長室の前に来ていた。
道中いろんな教室を見ていたルードべドは、学園長室がいかに大きいかをわかっていた。教室の約3倍そんな大きさを誇る学園長室を前に、教師は、口を開いた。
「ヒロ。最初に言っておくと、ここが山場だ。くれぐれも、間違えた発言をしないように。間違いだといっても、あいつは聞く耳持たずだからな。頑張ってくれ」
意味深な発言をこぼした教師は、その場を去った。
去りゆく教師の背中を見ながら、ルードべドは覚悟を決めた。そして、その右手で、その茶色の扉を開けるのだった。
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