第六話 戦士コレオ
言ってしまった。と、ルードべドは後悔した。やっぱり、いうべきじゃなかったかな?そう心配するが、エルラはまぶたを閉じて眠っていた。
「終わったな」
と、安堵の声を漏らした時だった。ルードべドの視界に、ちょっとした光が差し込む。そしてそれは、徐々に強く、輝かしくなっていった。
太陽が上った。そしてそれは、もう難関ポイントがないことを現していた。故に、ルードべドはこころの中でガッツポーズを決めた。もうこれで、彼は一人戦闘から解放された。
しかし、また夜になる可能性がある。そう、この試験は一定の生徒数になるまで終わることを知らない。つまり、夜がまた訪れるということも、十分にあった。
「おはよ〜」
ルードべドが思考していると、背後から寝起きのラルが、ルードべドのテンションとはほぼ真逆と言わんばかりの勢いで、飛び出してきた。
しかし、ルードべドは背を向けたまま、ああ。おはよう。と、ぶっきらぼうに返した。まるでどこぞ屋のおっさんか。と彼女はふと思った。でもまあ、間違いではない。
空気が暖かくなり、日差しが二人を照らす。ラルはこんな朝日が見れて嬉しく思った。
その一方でルードべドは、呑気にリラックスしているラルとは対照的に、遠くから聞こえる爆発音に耳を貸していた。
この時間帯は、奴らが眠りから目覚め、全開の状態であるがゆえに、色んなところで戦闘が起こっていた。そしてこの爆発音も、その一部だろうとルードべドは思った。
そう、思考に徹していたおかげか、ルードべドは近づいてくるその爆発音と、その威力を感知した。そしてその威力は、ルードべドとほぼ同等か、それ以上の攻撃力を誇る、彼のパーティの戦士、バハムと同程度だった。
「何か来てる!!主、どうする!?」
慌てるラルに、ルードべドは冷静に言った。
「今逃げてももう間に合わない。こうなったら、二人で仕掛けるぞ。魔法の準備はいいか?」
首を思いっきり縦に振るラル。やっぱり、エルラと戦ったのは俺で正解だったと、ルードべドは思った。
彼女は杖。ルードべドは手のひらで、ルードべドの盛大にとっては上級魔法と言われた、中級魔法ロベリアを、そのなにかが来る方向へと突き出し、発動の準備をする。
二人が待っている一方で、爆発音は音を増していく。そして、その音の根源と思われる人影がこちらにおりてきた瞬間、彼らは、一斉に魔法を発射するのだった。
『ロベリア!!』
瞬間、ラルとルードべドのロベリアの威力が重なった事によって生成された炎魔法は、無事にそいつに直撃した。
ちょっとした崖になっているところで打ったためか、瓦礫がパラパラと落ちてきた。そして、その何者かも、瓦礫と同様に落ちてきた。
ダメージの確認をするべく、ルードべドは背後を振り向き、そいつの容態を調べる。しかし、そいつには傷一つもなく、仏頂面で立っていた、男がいた。
ありえない。そう思ったルードべドはマジかよ。と、呟いた。そしてそれは、ラルも一緒だった。
今まで負け知らずのラルは、この状況によって、初めて敗北を感じた気がした。
しかし、男はそんなことお構い無しに、近くにいたルードべドめがけて、その大剣を振るう。そのさい、肩までかかった、黒髪がなびき、目までかかっていた前髪によって隠されていた、青色の瞳に隠れるその戦闘衝動を、ルードべドは察知した。
ルードべドはその大剣を受け流すことによって、そいつに隙を作る。そうしてそのまま、バハムに買った時同様に拳を入れるだけだと、そう思っていたのに。そいつは、両手で持っていた大剣から、片方の手を外して、ルードべドの打撃をその手で受け止めた。
この時、ルードべドはこいつには勝てないと、今の自分では到底及ばないと、その圧倒的な力量差。その何もかもに差がある事を体に叩き込まれた。
不意に、ルードべドはそいつが手を引っ張ることによってバランスを崩し、一時的だが、宙に浮くことによって、致命的な隙をさらけ出す。
「自己紹介がまだだったな」
大剣の持ち手が、ルードべドの腹に到達する間の出来事だった。そいつは、楽しさを押し殺した声色で言った。
そうして、ルードべドは、そいつの名を聞いた。
「僕の名前はコレオ。いづれ、勇者パーティの戦士として、魔王を討伐するものだ」
ドカッ。と、強烈な一撃が腹に叩き込まれ、ルードべドは気を失いかける。
ラルは急いで魔法を発動させようとするが、彼がそいつと近くにいるためか魔法を上手く打つことはできなかった。つまり、主戦力であるラルが魔法を打てず、ただルードべドがそいつの殴打を食らう。まさに、絶望という言葉が似合う状況だった。
カウンタースキルをいつ発動するか、ルードべドは迷っていた。だが、あの動きからして、カウンタースキルを発動させようとも、どうせ失敗に終わって、殴打が再開されるだけだと、諦めた。
抵抗一回分の余力がある。そのことに気づいたルードベドは、遠くにいるラルにアイコンタクトをとる。
『俺のことは構わない。魔法でアイツをやれ!!』
ラルはためらった。しかし、やれ!!と、その後に念を押したことにより、渋々だが魔法を発動することにする。
杖に魔力が集中する。その事により、コレオの注意は、ラルに向いた。だが、それは不正解だった。そう。コレオは、ルードベドが仕掛けたトラップにまんまとハマったのだ。
注意が向いたその瞬間、ルードベドは、コレオの攻撃速度が遅くなったのを感じた。その隙を見計らい、彼はカウンタースキルを使用して、その殴打と言うなの牢獄から脱獄した。
それに気づいてももう遅し。逃げ道なんてない。そして、コレオがここでやれるのは一人のみ。ラルを攻撃したところで、ルードベドのカウンタースキルによって敗北。逆にルードベドのカウンタースキルを対処したところで、ラルの攻撃魔法が飛んでくる。
コレオは、誰かを攻撃して、ダメージを軽減するしか、道はなかった。そう思われていたが、コレオは双方の攻撃を、無抵抗のまま浴びた。
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