第十二話 もう真似るのはやめろ
激しい戦闘が続く。ルードべドがいくら攻撃を仕掛けても、あと一歩のところで全てかわされる。そしてダミアも攻撃を仕掛けるが、無駄な動きを一切せずに避けて、確実な一撃を入れようとしてくる。
まさかここまでとはな。感動的だ。よくその歳でそこまでの技術と練度を持っているな。
ダミアは、顔に感情は出さずとも、その攻撃手段に感動していた。
「ネベリア」
ルードべドの放った中級風魔法による斬撃をダミアは同じ魔法を使うことによって相殺した。
ルードべドに隙が生まれ、そこをダミアはロベリアで攻撃する。
ダミアとルードべドは、同じ三十代。さらにルードべドの実年齢よりも、ダミアのほうが歳上なのだ。だが、実力はダミアが上回っていた。この差を生み出したのは他でもない、ローシュ学園である。
この学園に滞在した歴が長いからこそ、その差はとてつもないほど開いていた。
「認めてやろう。確かにお前は強い。それこそ、Cクラスで上位の成績を収められるぐらいにはな。だが.....」
ダミアはルードべドが目視できないほどのスピードで動き、彼の腹に強烈な肘打ちをお見舞いした。
瞬間、つんざくような痛みが、ルードべドの腹部に走る。だが、経験済みの痛みなど、彼の眼の前ではノーダメージと同等だった。
構わず攻撃するが、ダミアも戦闘経験を持った男。戦闘が長引けば長引くほど、相手のタイプを理解していく。そんなタイプの人間。それ故、どちらが勝ってもおかしくない。そんな状況ではない。
どんなに経験を持っていようが、技量が優れていようが、結局はフィジカルがあってこそ発揮されるもの。
フィジカルがダミアよりも劣るルードべドが持つアドバンテージなど、一切なかった。
「終わりにしよう。いくぞ。フル・ロベレイア」
ロベリアなんて比べ物にならないほどの威力を誇るでろう炎がルードべドに押し寄せてくる。回避場所など、どこにもない。だからこそ、ルードべドが取る行動は、転移魔法を発動するほか手段はなかった。
「じゃあこっちだって奥の手を使ってやるよ!」
転移魔法を常時発動し、ダミアの周りを転移し続ける。そのしてその間、着々と奥義であるロネベリアをチャージすることに専念する。
ダミアはルードべドが転移した場所の方向をちらっと見るだけで、困惑することはなかった。
それは、次の行動がなにかが理解できているから湧き出てくる自信によるものだった。
「きたっ!」
ロネベリアのチャージがたまり、準備万全の状態になったルードべドは、ダミアの眼の前に転移し、その魔力を解き放つ。
いくらか予想できたダミアでも、まさか正面とは思わなかったためか、驚愕の表情を見せた。
ただ、通常のロネベリアの威力ではダミアは倒せない。その事を、ルードべドは理解していた。だからこそ、彼の持っていた魔力を9割ほどを使って、その一握りの希望線を、放った。
「ロネベリア!!」
湖全体を灰にしてしまいそうなほどの威力を持った炎が、ダミアを包みこんだ。
その威力は、ただのロネベリアではなく、中級魔法と上級魔法の中間ほどの威力となっていた。
ルードべドはその場で膝をつくことはなかった。安否を確認していないその状況で隙を晒すなど、敗北と同等だと、彼は思っていたからだ。
そして、次に起こった出来事によって、ルードべドは警戒しておいて正解だったと思う。
「なかなかいい腕だ。だが、その様子からして今のがフルパワー。そうだろう?」
ゆっくりと歩いてくるダミアに、ルードべドは思わず苦笑いしてしまう。
どうして、俺はこんなに弱いんだろうなぁ。
最大魔法を食らっても尚平然としているダミアに、彼は心底から感心してしまった。
だが、彼には負けるわけには行かないという信念があった。
そう、証明するのだ。彼が勇者に鳴るための素質を持っている事を。
少しでも動いたらよろけてしまう状況下にある体を無理やり体制を整えて、構える。しかし、眼の前にいるダミアは、両手を上げた。
「降参だ。お前の勝ちだよ」
「違います!俺はもう戦えない状況で....おっ!?」
ダミアの降参を否定するために、声を張り上げたが、体がだったせいか、彼の体はふらついて頭から落下しようとしていた。
「おいおい。大丈夫か?」
ガシッ。と、急いでダミアはルードべドに駆け寄り、彼を支えた。
「大丈夫だけども、とりあえず、おろしてくれませんか?」
「おっと、悪い悪い」
ダミアはそっとルードべドの体制をもとに戻して、その手をどけた。
それでも尚、はぁはぁ。と息を切らしながらダミアを見ているルードべドを、ダミアは心配しながら、さっきの戦いで感じ取ったことをそのまま彼に話すことにした。
「認めよう。お前は確かに強い。それこそ、Bクラスにいても余裕かと思えるぐらいには、な。ただ.....」
そこまでいいかけたところで、彼は言葉に詰まった。
ダミアが感じたルードべドの戦い方。彼にとって、それはあまりにも無敗の勇者の戦い方にそっくりだった。いや、どちらかといえば、まんまであった。
「お前は、無敗の勇者バルラ・ルードべドを知っているか?」
「はい。一応知っています。魔王との戦いで死んだ、最強って歌われた勇者ですよね?」
「ああ。そのとおりだ。俺は昔、アイツに救われたことがあってな。すごかったさ。同い年だって言うのに、あまりにも託列しすぎていた。だが、それは昔の話。今なら、Aクラスの生徒一人でも勝てるだろうな。そしてその勇者の戦い方が、あまりにもお前の戦い方とにすぎている。それは、お前がその勇者を慕っているからか?それとも、偶然か?」
その言葉に、ルードべドは返答する気が起きなかった。それは、Aクラス一人でも、アイツに勝つことができるという、ダミアがいった些細な一言が引っかかったからだった。
「そう....ですね」
なんとか言葉を返さないとと、戸惑った脳内で答えを絞り出した結果、覇気のない答えがでてしまったが、ダミアは構わずその決定的な言葉を口にした。
「だったら、今すぐその戦い方をやめろ。そして、もうあの型落ちを真似るのは辞めるんだ」
と。




