第十一話 証明してみせる
ヒョウから歩いてあまり時間がかからない、学園の領地にある一つの湖。そこに、ルードべドは来ていた。
時間帯が深夜帯だから、無論人気はない。ただそれは、ルードべドにとっては嬉しいことだった。
これでようやく、状況を整理できる時間ができた。と、心中で思いながら、近くにあった手すりに身を寄せた。
A〜Eクラスが、ローシュ学園には設けられている。そしてその中のBクラスに、ルードべドは入る予定である。だが、それは総合評価と彼の念押しがあったからに過ぎない。そのせいか、彼はどうせ負けるのではないかと、一抹の不安を抱いていた。
そしてその予感は的確に的を射ていた。彼とBクラス最底辺の生徒には、差があったのだ。
「怖いよなぁ。やっぱり自分が負けるっていうのは」
敗北。それは、無敗の勇者ルードべドにとっては無縁の言葉であった。だが、今のルードべドにとっては、その言葉とより親密な関係で、それとは裏腹に、勝利と無縁になっていた。
だが、いつかは勝ってみせるとルードべドは今一度決意を固めて湖を見つめる。
群青の青色。そこに映し出されているのは、金色に輝く一つの尽きだった。
ルードべドは、その景色に吸い込まれてしまいそうな感覚を覚えた。
「こんな遅くに散歩なんて、なかなか渋い趣味をしているな。って、なんだお前か。ヒロ」
鑑賞にふけっていたルードべドに横槍を指すように登場し、急に態度を帰る一人の人物に、彼は視線を向ける。
そこにいたのは、真っ直ぐな赤い髪と、冷静に物を判断する青い目を持った、三十代ぐらいの一人の男が立っていた。
だが、その顔にルードべドは覚えなんてなかった。それでも、流石に無礼だと感じた彼は、一所懸命思案した末に、諦めて名前を聞くことにした。
「え〜っと.....誰でしたっけ?すいません。よく覚えていなくて」
「お前なぁ.....」
はぁ。とため息を吐いて肩の力を落とすそいつを見て、ルードべドは少しの罪悪感を覚えた。
でも、その心配はなかった。
そいつはまあいい。と一言だけ言って、元気を取り戻したかと思えば彼の下に近づき、握手を求めて、こういった。
「俺の名前はダミア・ルスフェル。ローシュ学園のBクラス担当だ」
だから俺と分かった途端態度が変わったのか。と納得しながら、こちらこそ。と言ってその手を取った。
「ところで、どうしてダミア先生はここに?」
「特に理由なんてない。ただ、歳のせいか目が覚めてしまってな。眠ろうと思ったが、眠れない。だから、気分転換にここに来たら、お前がいたってわけだ」
ダミアの言葉に、ルードべドは同感していた。それは、同じ三十代同士だからである。
ここにも理解者がいてくれるなんて....。と、彼は嬉し涙を流した。
涙を拭い、ダミアの方に視線を飛ばすと、やや心配気味な表情をしたダミアが、大丈夫か?と言っていた。それも無理はない。なぜなら、ダミアから見れば十代の少年が何故か共感したように涙を流しているようにしか見えなかったからである。
「で、だ。お前はこれからBクラスに入ると言っていたが、それは正気か?」
「本当ですよ。俺はBクラスを一刻も早く抜けてAクラスにいく。そして、勇者になる。そのためにも、ここで止まっているわけにはいかないんです」
すると、ダミアは少しうつむき、心が痛むのを感じた。だが、その痛みに耐えながらも、その事実を突きつける。
ルードべドにとって、信じたくもないその一言を。
「勇者。確かにこの学園では、戦闘、サポートの2つのところから上位十名ずつ魔王討伐に送り出しているが、俺は、お前があそこに行けるなんて、正直思っていない」
「なんでですか?俺は、確かにフィジカルなんて他と比べれば中の下ですよ。だけど、俺はここで生まれ変わるって、誓ったんです!!」
ルードべドの悲痛な叫びが、湖全体を軽く揺らす。だが、ダミアはそれに臆することなく、その事実を突きつけていく。
「確かにお前の技術は学校一だ。だから、学園長はお前に期待している。だが、俺は違う。なぜなら、それはお前が気づいているからだ。自分はフィジカルが弱いから、技術で圧倒すればいい。って」
核心を突かれたためか、彼の心臓の行動が急速に早くなっていく。焦り。それは、ダミアに自身の本音を知られるのが怖いという感情から湧き出たものだった。
そして、ルードべドの本音を、ダミアは代弁する。
ここに来た目的と、対になるその言葉を。
「お前は察しているんじゃないか?自分はもう、限界なんじゃないかって」
「違う!!」
その言葉を遮って、ルードべドは叫んだ。聞きたくなかった。その本音を。
ダミアは、ルードべドに駆け寄り、落ち着きを取り戻そうとするが、ルードべドから出るその言葉は止まることを知らず、ルードべドはダミアを押した。
「俺は、まだ戦える。勝てる。いや、勝つために!!俺はここに来たんだ.....!なのになんだよ.....。俺は勝てない?ふざけんなよ.....!そんなのは、自分が一番わかってる!!だけど。だけど.....」
ルードべドは膝をついて、その言葉を絞り込む。
「見ず知らずのお前が、俺の事を語ってんじゃねぇよ!!」
「だったら、証明してみろ」
ルードべドの言葉に心が揺るがされたダミアは、彼に少しの希望をいだいた。こいつなら、いづれ勇者になるのではないかと。
彼は腰に携えた剣をゆっくりと抜いて、その剣によって反射される光を見せつけながら、構えた。
「お前が、本当にBクラス...いや、勇者になる素質があるのかどうかを」
ルードべドも呼応するように立ち上がって、その拳をダミアに突きつける。
「いいぜ。ここで、あんたを倒して俺が勇者の素質がある事を証明してやる」
そう宣言した瞬間、ダミアとルードべドの戦いが幕を開けたのだった。
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