第十話 理想郷?そんなものねぇよ
「本当に、Bクラスでいいのかい?」
「自分のことは自分がよくわかっています。俺はもっともっと強くなって、やがて、勇者になりたい。そのためにも、自分よりも少し上のクラスにいってレベルを上げたいんです」
ルードべドは、懇願するようにいった。
すると、学園長は少し渋った顔をして、唸った。
学園長からすれば、Bクラスに行ってしまうと、レベルの高さに心が折れてしまうと思っていた。だが、ルードべドはそれを知っていて尚、Bクラスを選択したのだ。
それは、強くなりたいという純粋な思いからでてきた言葉だった。
「分かった。お前をBクラスにいかせよう。だが、今度の試験。後で皆にも伝えるが、内容は個人戦でな。そこで実績を残せないのであれば、お前をCクラスに移動させる。いいな?」
ルードべドの真っ直ぐな瞳に屈服し、学園長は誓約付きではあるが、それを了承した。
「ありがとうございます!!」
「今度のテスト、君の実力を期待している」
元気よく応えるルードべドに、学園長は冷たくそう返して、もういいぞ。とだけ告げてルードべドを退出させた。
バタン。とゆっくり扉が閉まり、完全に締まりきった後に、学園長は緊張を解すべくため息をついた。
あの魔力。あの質。もしかして。
彼女の脳裏に、あの勇者の影が映し出される。それは、無敗の勇者と呼ばれた、バルラ・ルードべドにほかならなかった。
「まさか、な」
一瞬だけだが、彼の姿が無敗の勇者と重なった。しかしその考えを一生懸命振り払う。
ただ.....。と、クルッセはそこまで考え、
「もし現時点で無敗の勇者と同等であれば、その伸びしろは十分にある。本当に、今年は豊作だよ」
と、一人、学園長室でその言葉をこぼすのだった。
この学園は様々な国から通っている生徒が多いと言われている。それが、ローシュ学園だ。
だから、この学園には、ヒョウと呼ばれている、ローシュ学園に通っているものだけがいくことのできる宿泊施設があった。
そしてルードべドは帰る意味もないため、面接を終えたその当日に、ヒョウに来ていた。
「確か、これで開くんだっけか」
パネルのようなものにルードべドは手のひらを付け、一定の魔力を流す。
『ジジジ....マリョクヲカクニン。ルードベドサマ、オカエリナサイ!!』
独特すぎるその機会音声が流れ終わった直後、眼の前の扉が、ゆっくりと開いた。
眼の前に広がる大広間。ふんわりとしているゾファ。そして、一度ねてみたかったツーダンへッドさえもあったため、ルードべドは、ここは天国かなにかなのか?と疑問に思ってしまうほど、その空間はルードべドにとって理想的だった。
だが、その理想郷はある人物の侵入によって打ち壊されてしまう。
「へぇ〜。ここが主と一緒に住むヒョウの部屋かぁ〜。すご〜い」
「!?」
能天気に言うラルだが、ルードべドは予想外の出来事により警戒態勢を取った。
それも無理はない。ルードべドにとって、さっきの機械音声が耳に入ってこなかったからである。それ故安心しきっていたルードべドにとって、その出来事は彼の心臓の鼓動を早めた。
「あるじぃ〜。そんなに驚いてどうしたの〜?この施設は二人一部屋って決まりじゃん。まさか、そのルール聞き忘れちゃったの?」
口が塞がらないルードべドに、ラルはもぉ〜といって説明をしてあげた。
ルードべドはそれに納得した。が、納得したくもなかった。なぜなら眼の前にあった理想郷が、変態によって打ち壊されてしまったのだから。この悲しみを、ルードべドは否定したかった。
もう受け入れるしかないのか。
そう、ルードべドはその現実を受け入れた。
「まあ、少し驚いただけだがな?特にビビったわけではないぞ?」
「ふ〜ん。そうかなぁ?主からは嘘をついてる時に出る匂いがプンプンするけど」
ジト目で見てくる彼女に、ルードべドは彼女が獣なのかもしれないと疑ってしまった。
そして、その獣じみた嗅覚によって、彼の嘘は見破られたのも同然だった。
「そうか?俺は嘘は吐いていないんだけども.....」
行けるか?と心配しながらもラルの方をちらりと見る。
「そうなんだぁ〜。じゃあ、私が間違ってたんだね!!ごめんごめん」
どうやらいけてしまったらしい。ラルは、自己完結をしてゾファに飛び込んでいった。
もう少し、人を疑おうや。とルードべドは心のなかで突っ込みつつ、彼女の鈍感さに感謝をし続けていた。
そんな日の夜、ルードべドは突然目を覚ました。
あまり見慣れていない天井が間近にあるからか、ルードべドは一瞬だけこの場所がどこかわからなくなった。
時間帯は深夜。それ故、あたりは静かで、特に物音も聞こえなかった。
そんな状況を、ルードべドは好まなかった。だから眠ろうとしたというのに、ルードべドは寝付けずにいた。
「久しぶりに少し、散歩でもするかな」
ラルを起こさないようにできる限り物音を立てず、そっと扉の前に立った。
この扉は魔力を流すことによって、その人物を特定し、ロックが解除される仕組みだ。ただ、それは外側から入るときのみ。そう、外側は、魔力なんていちいち流さずとも、容易に開けることができるのだ。
ルードべドは当初、セキュリティ的に大丈夫かなと思ったが、今だけはこの仕組みに感謝しかない。と思いながらも、彼はゆっくりと、夜の学園周りを散歩するのだった。
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