初陣〜さりとて私は一般人な訳でして〜②
その生物は四足歩行の大きな足を踏み鳴らし、焦げ茶色の様な鱗をまとい大きな顎からはダラダラとヨダレを垂らしている、物語で言うところドラゴンや地竜と呼ばれそうな怪物が悠々とこちらへ歩いてきている。
まだしばらく距離はありそうだが遠目から見てもその巨大な高さを活かし、時折鼻を鳴らしてはなにか目的のものを探しているかのようにキョロキョロしている。
「ドラゴン…?」
嵜本が呟く。
するとその声に反応したのか大きな生物は動きを止め、辺りを見渡し10秒ほど見たが発見には至らなかったのかまた歩みを進める。
「ねぇ、絶対大声あげずに聞いてドラゴンみたいなやつがこっち来てるんだけどどうする?」
「マジ?」
「マジ。一応案としては2パターン飯をこの場に置いて来た道を戻って逃げるか、勇敢にも立ち向かってみるか。」
「え!絶対やめた方がいい!勝てる保証なんてないし!」
「声が大きい!…あ。」
嵜本が注意のために大声を出した結果地竜に聞かれたようで目がしっかりと会ってしまう。
すると地竜は先程までと違う、明らかにエサを見つけた形相でこちらへ走ってき始めた。
「ばれた!!逃げるぞ!」
「何やってんだよリーダー!?」
「俺のせいか!?」
「今はもうそんなことどうでもいいだろ!走れ!」
途中まで食べていたカップ麺をぶちまけ元きた道へ引き返そうとするが何かに気づき立ち止まった嵜本
「ねぇ、俺らずっと一本道で来なかった?多少曲がったりなんなりは有ったけど。」
その一言で全員に伝わったんだろう足を止め絶望感が漂い始めた。
「じゃあなにかあのバケモンぶっ殺さないと俺らに生きる道は無いってか?」
「だと思う。あくまで推測だけどこっち側がずっと一本道だったんだからアイツらが行った方に行っても同じかもしれない。」
「…よしやるぞ。」
篠田と嵜本の決意は固まった様だが未だに舞元と曽江木は理解しようとはしているもののその現実を受け止めきれずにいるようだ。
「…俺が先頭に立つよスキル的にはそれで解決するはずだし。」
その言葉に全員が希望を見出すように顔を上げた。
「そうだよ!そうだよ!そうじゃんか!」
「リーダーのスキルならあんなやつ余裕じゃん!」
「確かにな最悪俺が前にって思ったがスキルで言ったらお前が無敵なんだから頑張れよ」
「なんか酷くない!?」
こうして全自動反射を持つが故に肉壁になることが決定した嵜本だった。