崩落 〜いや、こんなん現実になるなんて思ってないですやん〜②
「痛ぇ…」
背中に走る痛みで飛んでいった意識が戻る。
痛みで飛んだはずの意識が再度痛みで戻るとはなんとも世知辛い世の中なのだろう。
「そうだ、他のみんなは大丈夫かな。」
「いでぇ…。」
「あ、わりかし傍にみんないるのね…」
1人、2人とまるで生存報告をするかの如く呻き声を上げていくメンバー達見回した限り鉄骨が刺さっているだの瓦礫に埋もれて死んでいるだのはとりあえず無さそうだ。
「とりあえずみんな無事そうで何…より…」
「どうしたんだよそんな歯切れ…悪く…」
「気づいた?」
「あぁ。」
そう、無いのだ。
瓦礫や鉄骨など建物が崩落したのだとしても何かしらは残るはずの物が周りに。
それどころか自分達は何処か洞窟の中に居るようなそんな閉鎖的な空間にいる。
例えば会社の下に洞窟があって地震の際に建物が倒壊または崩落したとしてもおかしいのだ。何故なら瓦礫等が無いこともさる事ながらその場から見上げた視線の先は完全に穴などなく天井で塞がっているのだから。
「ねぇ、これってなんかヤバくねぇ?」
「あぁ。なんかヤバイな。」
「とりあえず全員しっかり起こすか。」
「そうだな。お前はそっちの奴ら頼むわ俺はこっちを起こすから。」
「あいよー」
と篠田以外の未だ呻いてる人達に声をかけていく。
「へい、生きてるかい?曽江木さん?」
「うへぇーい…なんとかねぇ…」
「周りの状況は気づいてる?」
「何となくねぇ…ただこういうのリーダーみたいに詳しくないからなぁ。」
そう言うのは曽江木直哉38歳
地下バンドマンをしながら働くムードメーカーだ。
趣味は音楽と料理。コミュニケーション能力が群を抜いて高くいつもみんなを笑わせてくれるいい部下だ。
少々腰を痛めてそうな曽江木に手を差し伸べ起こしながら会話を続ける。
「俺も実際よく分かんないよ。ただ2パターン考えはあるけど。」
「痛ててて…2パターンって?」
「まず1つがホラー系、ほら最近だと良く気づいたら監禁されててデスゲームが始まるとかあるじゃん。そっち系。」
「えぇーそっち系かぁ。なら真っ先に生贄になってね。みんなのために笑」
「やだね、俺だけ生き残ってやる笑」
「んで、もう一個は?」
「ある日突然ダンジョンとか迷宮が現実に出来ちゃった系だね。」
「うーんそれもそれで嫌だなぁ。」
「そう?そっちなら多分楽だと思うけど。」
そんなことを喋りながらふと思いついたことを試してみる。
「ステータス。」
「何言ってんのリーダー?頭打って壊れちゃった?」
「うるせっ!試して見ただけだ…よ…」
と、曽江木に突っ込まれながら試した結果が目の前に現れたのが見え言葉に詰まる。
「ん?どったの…」
どうやら曽江木にも見えているようで、内容がしっかりと見えているかどうか分からないが、俺の目の前にはゲームやアニメで良く見慣れた透明な板のような物が浮遊している。
内容を見るにどうやら本当に自分のステータスが書かれているようだ。
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嵜本和弥 26歳
職業:冒険者
攻撃力:2
防御力:1
魔法力:32
精神力:41
敏捷力:1
スキル:幸運 | アイテムボックス
特殊スキル:確率操作
固有スキル:ガチャ
称号:<幸運な生存者> <迷宮災害生存者> <人類初>
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これが俺のステータスらしい。
そんな俺と曽江木のやり取りを聞いていた周りの人達も呻いて伸びてる場合じゃないと状況確認をし始めるのだった。
ここまで見てくださってありがとうございます。
少しでも面白いと感じてくださった方は是非コメント等をして頂けると幸いです。
雨流時雨