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00_プロローグ

クロー君の異世界転生記の続きとなります。

クロー君がどうして国を追われてしまったか、については「異世界貴族に転生しましたが、なんやかんやで国を追われました」をご覧ください。

クロー君以外の前作登場人物は、ほとんど現れないお話が続くことになります。

ひねくれ者のクロー君ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「はあっ?!あんだ、どごから来なすっだ?」

「…あの、旅の者です。この村に泊まれるような所はないでしょうか?」

「ほっだらこと言われてもなぁ…。」

「使わなくなった家の軒下とかでも良いのですが、無いですかね?あ、でも、駄目なら野宿とかしますので。」

「いやぁ、あんだみたいなやろこに、そったらことさせられねぇ。…ちっと待っでな、村長さ聞いて来るがら。」

「あ、じゃあ、自分で村長さんの家まで行きますので、場所だけ教えて貰えませんか?」

「ほうか?んだら、え〜っとな、…この道を──」


取り敢えず、言葉は通じるみたいで安心した。

…すごい訛りだけど、ニュアンスは何となく分かる。

辺境ともなるとそういう違いもあるのか、面白い。

第一村人さんも優しそうなヒト(人族だった)で良かった。


僕はクロー。

カダー王国の貴族家の生まれだが、実は地球という世界で中年まで生きた記憶を持つ、異世界転生者だ。

しかし転生先は、ありがちなチート能力も無く、病気な体に生まれ、おまけに父親である男爵は犯罪者という、決して恵まれてるとは言えない境遇であった。

それでもなんとか奮闘し、魔術と剣術を会得し、高位貴族に取り入る事が出来たまでは良かったが、結局、罪を被り国を追われる事となった。


王都を出た僕には、向かう先としていくつか選択肢があった。

一つは、北西にある帝国。

二つ目は、北東にあるコラペ王国。

三つ目は、東の荒野、そしてその先に有るという東方の国々。

四つ目として、南の砂漠があるが、ここは『不死の魔王』のテリトリーのため、候補から外した。

あとは西の海、という手もあるのだが、航海となるといろいろ準備も必要だし、これも除外した。

一つ目の帝国は、そもそもカダー王国と関係が良く無く、入国が面倒くさそうなのでこれも除外。

で、残る二つのうちどちらか考えた結果、選んだのがコラペ王国だった。

コラペ王国の更に北にはもう一つ国があり、その先の山脈を超えた先には魔王国があると言う。

また、コラペ王国の西側から北側に掛けては深い森となっており、ヒトの入り込めない秘境となっているそうだ。

ちなみに、僕の魔術の師匠であるナズナの故郷も、この森の中にあるという話だった。

さらに、『翼の魔王』の自治領というのもあると聞く。

…なんか、面白そうじゃん?

選択した理由は、そんな単純な好奇心だ。

さらに言えば、東の荒野のその先って、なんとなく前世の国を連想しちゃうんだよね。

せっかく旅するのに、知ってる所に戻ってどうするのか。

…いや、本当に前世に居たような地域と似てるかなんて分かんないんだけど。


結局、村長さんと会うことも出来て、無事、軒先の使用も許された。

村長さんは家の中でも良いと言ってくれたけど、遠慮した。

旅人全員が僕みたいに害意が無いとは限らない。

だから、あまり防犯面で良くない前例を作りたく無かった。

それでも、森の中で野宿をするよりは全然マシ。

魔物を警戒する必要の無い人里で、1日ぶりにゆっくり眠ることが出来た。

翌朝は、村長さんが声を掛けてくれて、朝食までご馳走になった。

貴族家での食事に比べれば質素なものだったが、温かい食事が出来るだけでもありがたい。

前世の記憶・感覚が戻ってからは、好き嫌いが全くと言っていいほど無くなった。

その点も、記憶が戻ったメリットだろう。

「…んで、お前さん行ぐあてはあるのけ?」

「え?」

「いやな?お前さんみだいな子ぉが一人旅しでるなんて、よっぽど訳ありなんだろ?心配でなぁ…。」

あ〜、そりゃそうか。

明らかに成人前と思われる少年が、危険な魔物も住む森を歩いて一人旅をしてるなんて、良識あるヒトなら心配するよね。

「大丈夫ですよ。本当に気楽に一人旅してるだけなんですってば。その証拠に、ほら。」


ドンッ!


「うわぁっ?!」

道中で狩ったオーク一匹を『アイテムボックス』から出すと、村長さんご夫婦は悲鳴を上げてしまった。

あ、流石に驚かせ過ぎたかな?

「…あの、これお礼として出してみたんですが、要りますかね?」

「へっ?!…い、いやぁ驚いだぁ。村の者で分けれるからありがてえが…。あんだ、魔術師だっただか?道理で言葉も綺麗で、育ちも良さそうなはずだぁ。」

なるほど、言葉遣いでも育ちが推し測られてしまうのか。

そして、そんな「育ちの良さそうな少年」が一人旅をしてるなんて、悪目立ちしても仕方ないな。

「よかった。では、これはお譲りしますね。ありがとうございました。それでは。」

そう言って席を立つ僕。

これ以上、何かしてボロを出す前に出発してしまおう。

「あっ、ちょっど!!」

後ろで村長さんが声を掛けてくるが、無視して出発する。

向かうはこの辺りを統べる辺境伯の領都。

村長から聞いた話では、山道を一日掛けて歩けば着く距離らしい。

…僕なら、昼過ぎには着けるな。

そこで換金とかも出来るだろう。


しっかし、やはり子供の一人旅というのが目立つのは面倒だなぁ。

せめて、旅の同行者が一人でも居れば、あんまり気にされなくなるかな。

うん、当面の目標はそれにしよう。

そんな事を考えながら、僕は辺境伯領都に向かうのだった。

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