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始まり1

ハッとしたように顔を上げると、いつもの森の中だった。いつの間にか眠りに落ちていたようで気を失っていたらしい。木陰に座り込んでいた身体を動かし、深いため息をついた。二年前の夢を見ていた。生まれた村の夢。その後に何か視た気がしたけど覚えられなかった。


「リクー、どこに居る。リクー!!」


森の入口の方で呼ぶ声が聞こえた。その声に反応して僕の首にある輪に嵌められた石が赤く光った。僕は声のする方へ足を向け、僕を呼んだ人が光を目印に僕の方へ歩いて来ていた。


「案外近くに居たか。ご飯だ。」


そう言われて僕を森から連れ出し、木々が切られて開かれた場所に出ると、大きな家が見える。その奥に街がある。フォレスティンという街。大きな街だ。でもそこに行ったことはない。

僕の生まれた村が無くなったのは二年前。大雨が続いていた頃。いつもみたいにすぐ晴れになる雨じゃなくて、ずっと雨ばかり。川も水がゴウゴウ流れて危なくて、道も水たまりばっかりになっちゃってたんだ。お父さんやお母さんが村長さんたちといっぱい話をして、どこかに行こうかって言ってたけど、もう少し様子を見ようってなったんだ。僕の家はみんなと離れたところにあってちょっと山の上にあったんだ。だから僕だけ助かった。大雨がずっと続いて川が大きくなっちゃって、みんなの家が流されちゃったんだ。お父さんもお母さんも話し合いに行くって言って一緒に居なくなっちゃった。村が無くなっちゃったのを、誰かが知らせていくれたのか、フォレスティンの街の領主様が兵を村があった場所に送ってくれた。でも土ばっかりで誰も居ないってなったんだけど、僕が獣道みたいな場所から出てきたのを見て保護してくれたんだ。その後フォレスティンの街へ行くことになったけど、途中で教会に寄ることになって僕はそこで教会の人たちに引き取られた。それから僕はこの森の中にある教会に居る。首にある輪は魔法が使えたり、力の強い人たちに付けられるものなんだって。僕のほかにも子供たちが居て、ほとんどの子が付けてる。でも首にある石の色が違うんだ。青や緑、黄色に白、他にも沢山あるけど、赤色はいない。赤色の石の事、本当は僕は知ってる。教会の人たちが僕の事を探すことも分かってる。それに首にある輪の事も。


「リク、後で手伝ってほしいことがあります。手伝ってもらえますね?」


ご飯を食べていたら祭司さんの1人でワグナーさんがお願いをしてきた。優しい笑みで言われてお手伝いすると答えたけど、お手伝いが何かを僕はもう嫌というほど知ってる。でもお手伝いしないと答えることができない。みんな祭司さんたちに従う意味をちゃんと分かってない。それを教えることも僕にはできない。

ご飯を食べ終わって自分が使った食器とかを指定された場所に置きに行くと、ワグナーさんが入り口で待っていた。ワグナーさんに連れられて向かったのは教会の奥にある懺悔室の一つ。でもそこでごめんなさいとお話しするわけじゃなくて、その部屋にある隠し階段を下りて地下に行くんだ。地下に降りると明かりがぼんやりと照らしだす通路を通って一つの部屋に入った。そこに入るとワグナーさんは僕の手に、部屋に放置されていた手枷を嵌めて部屋の中央に突き飛ばした。床が淡く青色に光ると、魔法陣が浮かび上がり、透明な見えない壁が出来上がる。


「リク、今後の予定を教えてもらいましょう。こちらに対しいろいろと対策を立てられている。その便利な力で我々に協力しなさい。できないと言えばどうなるかは覚えていますね?」


ワグナーさんが魔法陣が作った透明な壁に触れると、バチバチッと魔法陣が音を立てて雷のようにビリビリさせた。僕はゴクンと息を飲み込んでワグナーさんを見つめて頷いた。

僕が遠くを見るような目を見せると、ワグナーさんは微笑んでいた。僕は僕の目にだけ見える景色を見ていた。毎日と違うところがあれば何時、何があるのかを言葉にする。それをワグナーさんが記録する。それを繰り返し僕が魔法陣の中で倒れるまで続けるんだ。明日、明後日・・・それから先の未来で教会に不利なことがあれば対策するために、僕の力を使って知る。僕は首輪によって逆らえない。だって赤い石は司祭さんの力も加わって僕を見張ってる。逃げないように。もし遠くに行ってしまえば、首輪が締まり、赤い石が強く光る。それでも逃げるようなら、赤い石に込められている力の人の元に強制的に連れて戻されちゃう。その後はきっと逃げられないようにされてしまう。だから従うしかないんだ。


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