家族に愛されたい少年の話
生れたのは小さな小さな村だった。食べ物は自分たちで作って食べて、足りないときはみんなで分け合って支えて。村のみんなが家族のようなそんな小さな小さな村。でもたまに不思議なことが起こるんだって言われた。神様がくれる大切な力があるんだけど、その大切な力がすごく強くて、みんながすごくすごく大切にしたい力を貰える人が居るんだって。でもみんなが欲しいものだからすごく怖いことにもなるんだって言われた。僕も神様からもらった大切な力がどんなものか早く知りたいな。
神様からもらった力がどんな力なのかを教えてくれるのは五歳になってから。教会があって、そこにある祈りの場で神様にお祈りしたら教えてくれるんだって。だから僕の五歳の誕生日に教会に連れて行ってもらって、お祈りするところで神様にお祈りしたんだ。キラキラした光がお空から降ってきて、一緒に来てくれたお父さんやお母さんがわぁって喜んだ声が聞こえた。何かすごく喜んでくれてる。
【時の力をそなたに。そなただから授けよう。】
『人の前でその力を使っちゃダメだよ。その力はとても怖い力だからね。誰にも知られちゃいけないよ!魔法は使えるからそっちを貰ったことにした方がいい・・・』
荘厳な声と共に届いた必死な思いを伝えるかのような声。僕は驚いて空を見上げるとキラキラとした光が消えかけていた。それでも綺麗だと見ていると、お父さんとお母さんが駆け寄ってきて、僕を抱き上げてすごく喜んでいた。
「私たちの子に奇跡が起きたわ!」
「すごいぞ!!えらいぞ!!お前はすごい子だ!」
うきうきとしたお父さんとお母さんが僕がすごい力を貰ったんだと話していた。僕が力を貰ってからお父さんとお母さんは村の人たちから頼まれごとをすることが増え、僕もそれを手伝うことが増えていた。のんびりだけど、平和に過ごしていた。でもそれが終わりを迎えたんだ。僕の生まれた村は無くなってしまった。