計画停電
閉めきれなかったカーテンの隙間から
外を走る車のヘッドライトが
部屋の中に射し込んでくる
一瞬だけ
真っ暗な部屋の中を
必要以上に照らして
消えていく光
多分今日という日だから
僕は思い出したんだろう
計画停電
住む町の明かりが一斉に消えて
しんと静まり返った我が家
肌寒い中
蝋燭の火を頼りに
毛布に包まって
一端のひもじさを体感している気にもなったけど
実際はあんなの
かすり傷程度にも語れない
3.11あの日テレビ越しに見た映像が
現実のものだと
すぐ認識できなかった
僕自身も体験したことないような
揺れの中にいたけれど
損害も怪我もなく過ごせた
刷り込みのように連日連夜流れていた
テレビの映像が
ようやく現実なのだと理解し始めた頃
同じように実施されることになった
計画停電
でもきっと今日という日でなければ
計画停電
その言葉自体を思い出さなかったであろうと
自覚しているってことは
僕はもう
あの日を忘れた日常を
過ごしているってことなんだろうな
今もまだ
苦しんでいる人がいるのに
僕には
僕個人の
つまらないトラウマや傷で
忘れられない日々や思い出があって
その苦しさを曲がりなりにも知っているつもりなのに
人間とは都合の良い生き物だと
僕は都合良いズルいやつだと
この時期に思い知らされる