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テントでの顔合わせ

「ふむ、これは針のむしろとでも表現する感じですね」


 フェアトはテントの中、大勢から刺すような視線を感じていた。

 なぜこうなっているかというと――


「あたしのせいで……お師匠様……すみません、すみません……」


 あの後パイに連れられて、一際趣向の凝らされた立派なテントに到着すると――すでに重鎮らしき十人程度で会合が行われているところだった。

 流れで三人もそれに参加することになる。

 そして、周囲から刺すような視線を一身に受ける、現在に至るというわけだ。

 フェアトが何か失礼なことをしたというわけでもなく、ただ中央にパイと一緒に座らされているだけだ。

 何が彼らの機嫌を損ねてしまったのかわからない。

 そんな中、パイの兄が刺々しい口調で話しかけてきた。


「それで、貴様が愚妹の教師を引き受けた者か。まるで惑星の環に引き寄せられるクズ星のようだな。……名は何と言うのだ?」


 星見の民だけに独特の天体的な言い回しだなと思いつつも、フェアトは名を告げる。


「フェアト・プティードスと申します」

「ふん、聞いたことのない名だな。しかし、こちらも礼儀として名乗ろう。俺はジン・スターゲイジーだ。……貴様、聞くところによると、役立たずの弓使いだとか。そんな者は必要ない。帰れ」


 先ほどの大男ガラクが、パイの兄――ジンに耳打ちしているのが見えた。

 彼からフェアトの情報が伝わったのだろう。

 ガラクは、ある男の背後に控えた。

 正面で目立つ上座の位置に座っているのはジンで、その一つ横に座っているのがガラクの主らしき、民族衣装を着たキツネのような目をした男だ。

 何となくどういう人物か予想は付くのだが――こちらもコッソリとパイが耳打ちしてきた。


「あ、アイツはあたしのライバルの星見です。兄のお気に入りで、名前はイカ」

「イカ……」

「様付けすると怒ります」


 イカ様――イカサマということだろう。

 占い師にとっては禁句だ。


「期待の新人と言われていて、星見の的中率が非常に高く、あたしと同じタイミングで星見の試練を受けて正式な星見になるのを狙っているんですよ……! あたしの半歩先を行っている感じですね」

「半歩……ですかね……?」


 どうやらパイは変なところで自己評価が高いらしい。

 とにかく、そのイカの護衛がガラクということなのだろう。

 そして、フェアトはパイの護衛兼先生と思われているらしい。

 だから戦闘能力のことを指摘されるのだ。

 フェアトとしては非常に面倒臭い。

 そんな中、イカという男が口を開いた。


「パイお嬢様、星見の試練は危険です。星見の将来は私に任せて、あなた様は別の道を模索しても――」


 彼はパイを心配しているような口調だ。

 たしかに星見の試練が危険なら辞退を促すのも分かる。

 しかし、よく見るとキツネのような目が笑っているようで笑っていない。

 何か言葉の裏がありそうだ。


「イカさん、あなたがパイ君を心配するのはごもっともです。しかし、これは彼女の意志による選択です。それを尊重してあげることはできないでしょうか?」

「そ、それは……」


 一般的な正論で来たのなら、こちらも一般的な正論で返す。

 これならどちらが正しいか、という結論をすぐに出すのは難しいはずだ。

 裏があって事を急ぐのならどちらも正義、もしくは、条件を付けてパイ君を黙らせるという方向になると予想される。

 その予想の通り、ジンが怒りを押し殺したような声で脅してきた。


「では、フェアトよ。貴様が愚妹の教師となる条件を出そう。一週間後の試練で、ここにいるイカよりも試練のクリアが遅かった場合は――フェアト、貴様の片腕を斬り落とさせてもらう」

「なっ!?」


 自らの兄の信じられない条件に対して、パイは驚きの声をあげたあと、焦って抗議をする。


「お、お師匠様は関係ないでしょう!? あたしのことで片腕を斬り落とすなんてそんな!?」

「いや、月の振る舞いが潮の満ちかけに影響するくらい関係ある。我が愚妹に勝ち目のない戦いを無責任に吹き込んで、どうせ負ける無駄な勝負をさせるのだ。片腕を無くすくらいの覚悟がなければ――」


 そのときジンは気が付いた。

 フェアトの顔を見ると、恐怖でもなく、驚愕でもなく、ただ普段と変わらぬ笑顔を見せていたのだ。


「はい、わかりました。負ければ片腕を差し出しましょう」

「なっ!? 我が愚妹のためにそこまで……」


 ジンは自らが出した条件を呑まれてしまったので、それ以上は何もいえなかった。

 横からイカが抗議をしようとしても無意味だ。

 今はもうフェアトから緩やかな狂気を感じるしかない。

 それからは事務的に試練の場所や、開始時刻が告げられ、会合は終わった。

 ただ最後に――ジンは『奴は恐ろしい男だ』と呟いた。

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