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入学

 そこからは休学期間という言葉の意味を見失うほどに仕事漬けの日々が始まった。ジーニーは元々一日2、3件ほど事務の仕事をしていたが、それに付けて3件の近所を回る仕事が来るようになったからだ。

 彼は面倒くさいの一言で軽いウォーキングで1時間のジョギングほどの運動量を増やせる体質になってしまっていて、車椅子を使うのは楽な方法だが、しかし魔力を消費するので精神的疲労がたまる。水属性の青魔法か火属性の赤魔法さえ使えればこの蒸気機関の車椅子は魔力の消費を少なく動かせるが、光属性の白魔法と闇属性の黒魔法しか使えないジーニーにとっては短距離・中距離移動用の、せいぜい屋敷の狭い範囲を行き来するための機械に過ぎなかった。この2つの属性しか扱えない性質の魔力で屋敷の狭い範囲を移動できることすら異常だ。現代日本で言うならば、さしずめキャスター付きの椅子と言ったところか。

 家に帰ってくるたびに自室に行ってすぐにベッドに寝そべることも、フランベルジェに制限されてしまっている。せめて整理運動をしてからにしろと言うのだ。


 しかし、それももう終わった。何故なら今日が入学式の日だからだ。ジーニーはいつもの、白いシャツにターコイズのついたループタイ、紺色のベストと同じ色のズボンに茶色のローファーという恰好で、馬車に乗り込んだ。フランベルジェは自分の家の馬車で向かうことにしたのでこちらには乗っていない。前日の夜にチャッカマン邸宅に帰っていったらしい。ジーニーがオーク材質の馬車に乗り込んだのを確認した御者は、二頭の馬に鞭を打ってそれを発進させた。


 赤煉瓦の道を経由すること数時間、豪勢な王都の建造物にたどり着いた。貴族の学校というだけあって、受験で合格した庶民または貧乏領土の領主の子供のことなど考えていないように威厳を持ってそこに位置していた。むしろ度肝を抜くことの方が目的なのかもしれないが。

 ジーニーは馬車から降りて、入学式が行われる講堂へと足を向けた。入学式開始5分前だったからか、周囲はあまり混み合っていなかった。講堂へ入るとかなり沢山の生徒が座っていた。やはり貴族というのはこういう関係にきっちりしている。


 しかしそのような貴族らしい者達の中にも貴族らしからぬ人間はいるもので、教会のそれのような連なった椅子に座る別々の衣服でありながらどこか量産型な人々に交じって、真に別の感じを身にまとった者も散見された。例えば、どうあがいても目立つ髪色のフランベルジェを除けば、コルセットではなくベルトを用いて、ドレスではなくワンピースを着た少女や、牛革製の衣服にレンズの黒い金縁眼鏡をつけた青年、前の世界で自分がいた国の伝統的な衣服を身にまとった女性、下着のような衣服のみしか着用していない日焼けした筋肉質の男などである。本人が嫌でも目立っているし、その覚悟があって“きて”いるのだろう。ちょっと気にかかっただけだったジーニーは思考をここで打ち切った。


 空き時間の3分を無心で過ごし、入学式は幕を開けた。校長である教育関係の官僚、頭部の寂しい学年主任の挨拶、学費免除生―案の定見てわかるほど貧しい身の上の男性であり、場慣れしていない感じだった―の挨拶を聞いて式が閉幕し、クラス発表の後に他のクラスメイトと共に、担任教師の学年主任の男に牽引されながらジーニーはⅠ-Bへ向かった。ジーニーはフランベルジェと同じクラスだった。

豆知識


アッシュ家の御者はウォーリア・リッチ氏

チャッカマン家の御者はエレガンス・リバフィールド氏という名前で、

馬車付きの馬の名前はそれぞれ

アッシュ家:ハイリビュレット、シェークスピア

チャッカマン家:スノーホワイト、ハープスウィッチ

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