森のクマさん、パンツになる
森の奥深くで暮らす魔女には二つの悩み事がありました。
一つは森でイタズラを繰り返すクマ。
他の動物達のエサを勝手に食べてしまいます。
もう一つは彼女の弟子のこと。
とても優秀で、謙虚で優しい性格の持ち主なので非の付け所がありません。
なぜかノーパンで過ごす点を除いては……。
何度も注意したのに弟子は聞く耳を持ちません。
今は森で暮らしているので問題は少ないのですが、外の世界で箒に乗って飛び回ると大変なことになってしまいます。
魔女のしきたりで十五歳の誕生日を迎えたら弟子は旅立っていきます。
ノーパンであること以外はどこに出しても恥ずかしくない弟子なのに、魔女は頭を悩ませていました。
「師匠。明日はついに旅立ちの日です。今までありがとうございました」
「ええ、あなたならきっと大丈夫です。ところで、スカートの下は」
師匠は弟子の下半身に視線を移します。
黒いロングスカートは肌を覆い隠しているはずなのに、魔女の目にはとても無防備に映りました。
「もちろんノーパンです。魔力を解放するのにパンツは邪魔ですから」
「パンツと魔力は無関係ですよ? 明日からはしっかりと身に着けなさい」
「ふふふ。師匠のお小言も今日までです。今日を乗り切れば私の完璧なスース―ライフが幕を開けます」
そう言って弟子は放棄にまたがり、ものすごい勢いで小屋を飛び出していきました。
「待ちなさい!」
魔女は急いで追いかけますが、弟子の飛行能力はすでに師を超えていました。
少しずつ二人の距離は開いていきます。
「なんて残念な弟子なのでしょう」
ハァっとため息を付くと、リスが集めた木の実を奪おうとするクマの姿が視界に入りました。
ただでさえ弟子の件で頭を痛めているところにクマが現れて、魔女の我慢の糸はぷつんと切れてしまいました。
「……良いことを思い付きましたよ」
魔女が杖を掲げると先端に禍々しい黒い光が集まります。そして……。
「ツンパンサマク!」
呪文を唱えると黒い光は弟子とクマを目掛けて勢いよく飛んでいきました。
「んべあああああ!?」
「うひゃあ!?」
同時に悲鳴を上げたところで地上からクマの姿は消えてしまいました。
一方、弟子の姿に異変はありません。一見すると、ですが。
「クマは弟子の尻に敷かれ、弟子はクマさんパンツに囚われなさい」
こうして魔女を悩ませた一人と一匹の奇妙な旅が始まったのでした。