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94 天使の失態

「もっと、自由にお菓子も食べたかった……。また、あの時みたいに……リリスさんとお肉を食ったがった……!」


 ぼろぼろと涙を流しながら、聖女アンネはそう口にしてしまった。

 強烈な感情に呼び寄せられたのか、アンネの自我が、戻りかけているのだ。

 そう気づいて、レミリエルは焦った。


 このままでは駄目だ。こんな醜態を晒しては、聖女の権威は地に堕ちリリスの思い通りに事が進んでしまう。

 何としてでももう一度アンネを操り、リリスを亡き者にしなければ。

 この国を、あるべき正しい形に戻さなければ……!


 意識をアンネに集中させ、レミリエルは再び彼女を操ろうと試みた。

 アンネはレミリエルの支配に抗うかのように頭を抱え、その場に倒れ込む。


「アンネ!!」


 真っ先にアンネに駆け寄ったのは、あの忌まわしき闇の魔女――リリスだ。

 小賢しい。点数稼ぎのつもりなのだろうか。

 もういい。アンネは使い捨てだ。

 聖女を操り、悪しき魔女を狩ってやろう――


 そう必死になり、つい周囲への注意がおろそかになっていたのかもしれない。



「見つけた」



 すぐ背後でそう聞こえたかと思うと、レミリエル――ミリアの体は勢いよく蹴り飛ばされ、気が付けばアンネやリリスたちのすぐそばの床に投げ出されていたのだ。


「お嬢様、こいつが聖女様を操っていた犯人です」


 起き上がれないように体を踏みつけられながらも、ミリアは必死に自身を制圧した相手を見上げる。

 そして、絶句した。


「お前は、悪魔……!」


 真っ赤な瞳でミリアを見下ろしているのは、リリス・フローゼスの周囲をうろちょろしている悪魔だったのだ。



 ◇◇◇



「お嬢様、こいつが聖女様を操っていた犯人です」


 その言葉と共にイグニスが踏みつける相手を見て、リリスは絶句した。


「この人……アンネの新しい教育係じゃない!!」


 美しい金の髪が特徴的な、若い女性。

 その人物はリリスも知っている、降格されたシメオンの代わりに聖女アンネの教育係に抜擢された女性だったのだ。

 確か名前は……ミリアとかいっただろうか。


 かつては聖母のような優しげな笑みをたたえていた彼女は、今は射殺すような視線でリリスを睨みつけている。

 その変貌に、リリスの背筋にぞくりと冷たいものが走った。


「この女が怪しげな術で聖女様を操り、リリスお嬢様を嵌めようとした犯人かと思われます。王子殿下、いかがいたしましょう」


 わざと周囲に聞こえるような大声で、イグニスはそう言ってのけた。

 その途端、固唾をのんで状況を見守っていた観衆がざわめく。

 リリスはただじっと、こちらを睨みつけるミリアを見つめていた。


「この人が、アンネを……」


 彼女が無理やりアンネを操り、リリスを陥れようとしたのだ。

 一周目の人生の記憶を思い出してみたが、リリスはこのミリアと言う教育係に覚えはなかった。

 だが、リリスが認識してなかっただけで、今と同じように彼女が裏側からすべてを操っていたのだとしたら……。


「っ……!」


 そう考えた途端、湧いてくるのは猛烈な怒りだった。

 怒りを宿した瞳で、リリスは彼女を睨みつける。


「…………よくもやってくれたわね」


 こいつが、こいつのせいで、何もかもが――。


「リリス、抑えて……!」


 傍らのオズフリートがそう囁くが、リリスの燃えるような怒りは少しも鎮まってはくれなかった。

 怒りのまま一歩足を踏み出そうとした瞬間――。


「地獄へ堕ちろ、悪しき魔女め」


 地を這うような低い声と共に、鋭い光の刃がリリス目掛けて飛来したのだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 肉って、前回も含めて2度言ったよ。 肉の魅力の前には天使の力も敵わないのですね(笑)
[一言] ここでオズフリートが身を挺して庇って天使をさらに貶めるんですね( ˘ω˘ )
[一言] リリス危ない! 逃げて……
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