勇者グランの秘密
大翔が突き立て折れた剣から突如目もくらんばかりに拡散上にまばゆい光が発せられ、そこから驚いた事にぼうっとした形の淡い銀色の光に包まれた人間らしき影が出てきた。
その様子の光景の美しさと意外すぎる出来事に、敵味方問わず目を奪われていた。
「一体どういう事なのか」
しばし誰も言葉を発せなかった。
確かに、折れた退魔の剣から謎の少年は降臨した。
少年が現れたのである。
その少年は一旦光の塊のような形となり宙に浮きあがり、ゆっくりと地面に宙を舞う蝶のように着地した。
まるで体重がないようにふわりと。
ふわりと飛び着地する。
その様子はあまりに流麗で神秘的で、『彼は人間でなく神か』と皆感じていた。
白銀の薄い膜に包まれ顔などが見えなかったが徐々に膜は薄まり顔が見えてきた。
その様子に皆ただ目を奪われた。
これが剣の精霊が言った「ある事が起きる」と言う事なのか。
少年は明るいブロンドから少し金髪よりの色で非常に柔らかい髪をしている。
しかし整髪はしていない。
少し乱れがある。荒っぽくはないが。
顔はすごく強そうでもない上温厚で全く人を攻撃したりしなさそうな雰囲気で、真っ直ぐな瞳のようでどこか疲れうつむき気味である。
しかし頬や顎の形はたくましさも感じさせる。
口元はやや自信なげだ
しかし内に意志の強さと勇気を秘めていそうな顔である。
彼は大分長い間食事をしていない状態で旅をしてきた貧しい少年のように、疲れと飢えが両方ある顔つきであった。
また洋服はピカピカな鎧などでなく、普通の古代の民家の洋服だった。
少し切れた部分もあり洗っていない感じだ。
まるでどこからか脱出してきた人の様だ。
地味な服装だった。剣や盾、かぶとも持っていない。
理由は良くわからないが少年は相当疲れているようである。
着地後上手く立てず力尽きるように膝と手を床についた。
呼吸も苦しそうだ。
かなり心拍数が多いと思われる。時折喉を押さえていた。
酸素不足のようだ。
少年はまだ力がないのかすっくと仁王立ちは出来ず、何とか膝立ちの中腰で肘は膝に当てている。
少ししてもまだ下を向き息を切らしており、何とか整えようとしていた。
そして何とか振り絞るように自分を鼓舞し力を出して肩を上に上げて力を込め顎も上に上げゆっくり立ち上がろうとしている、がすぐに立てない。つっ転びそうになった。
さすがに一同は呆然とし、事態を飲み込めないでいる。
霊王や冥王が現れている状況で驚く事に免疫はあってもだった。
ロゼオムは言った。
「け、剣から人が出てきた!」
しかしこれに続く言葉が皆なかなか出てこず成り行きを見守っているのが精一杯だった。
しかしただ1人、スパルダスだけはひどく不機嫌だった。
少年を強くにらみ歯軋りをしている。
凄みを感じさせるいらだちぶりである。
言葉を発しないところが迫力に輪をかけている。
普段顔色を変えない彼がこんなに気にいらない気持ちを表情に出すのは初めてだった。
さっきまで波状攻撃を受けていた時もこんな顔は見せていない。
何か少年と因縁があるようだ。
やっとカノン達は口を開いた。
「じゃあ今まで大翔達に語りかけてたのはあの人? 精霊じゃなく中に人がいたって事?」
「誰なんだあの人」
一馬が言った。
皆が少年が膝立ちからゆっくりゆっくり自分自身を確かめるかの如く起き上がるのを見守っていた。
彼が口を開けば理由がわかるだろうとそれを待っていた。
しかしスパルダスはその空気を割るように少年に突如言った。
「おのれ、わざと剣を折らせたな」
カノンは呑み込めず聞いた。
「ど、どう言うこと? 剣から出るためにスパルダスに剣を折らせた?」
スターマークはおぼろげな記憶で話し出した。
「剣から出るために折らせたか、そ、そう言えば昔、ミランドを救った後、突如姿を消した英雄がいた伝説がある。名前はグラン。その英雄は悪を倒した後、突如全く消息がわからなくなり、皆がいくら探しても見つからなかった。そして帰ってくる事がなかった。その方がまさか剣の中に。数百年そこにいたと言うのか」
そして、ついに少年は答えた。マークの方は向かなかった。しかし会話は聞こえていた。
「そうです、私が勇者です。勇者グランです」
この返答はさすがに皆衝撃を覚えた。
中腰から猫背で下を向きふらふらしたような体勢になった。
そして力を振り絞るように説明した。
「一度封印したスパルダスたちが後年また復活して現れた時にまた僕も復活出来るよう、今日まで退魔の剣に入り込み身をかくしていました。大翔君達にえらそうに命令したり隠していてすみませんでした。アドバイスのつもりだったんですが。かつてのスパルダスとの戦いの後、一旦僕は姿を消し隠れる事にしました。僕はいつかまた勇気のある人が退魔の剣を取り、巨悪と戦う日が来た時に僕も戦うつもりだったのです」
マークはかなり恐縮した。
「グラン、勇者グラン、若干16歳で魔王以上の悪を倒して突如消えた伝説の勇者」
トライブも
「あの方がかつてスパルダスを倒した方」
キッドは
「数百年前に姿を消し剣の中に入り今日復活した」
「おのれ勇者グラン、かつてよくも私を封印してくれたな、ゆ、許さん。き、き、貴様だけは」
全身に怒りを込めている。
「ゆ、ゆるさん、ゆるさーん!」
スパルダスは右腕に力を込めグランを狙い、ためた力を吐き出すように巨大な光弾を放った。
これは先ほどの魔王たちとの戦いでも見せた事のない大きさでしかも非常に感情がこもっていた。
怒りと共に力を溜め腕の血管が切れそうなほど凝縮させた。
「ぬうう!」
激しく気合を込めている。
「危ない!」
カノンが叫んだ。
発せられた巨大な光弾がグランを襲う。
グランは横を向いていた。なぜか光弾の方を向かず立っていた。
「避けられんぞ!」
スパルダスは叫んだ。
しかしグランはなにも防御体勢を取らず避けもしなかった。
突如彼の周りに巨大なオーラが現れ蚕の繭の様にバリアとなり光弾を瞬く間に打ち消した。
凄まじいまでの防御の力だった。グランは全くダメージを受けていない。
これには皆が騒然とした。まだ目覚めたばかりで防御もせずなぜあんな事が出来るのかと。
「まるでオーラが彼を守っているようだ」
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第1部はもうすぐ終わります。
今年の更新もあとすこしになります。




