睨み合いと問答
「ふーん」
不機嫌とあざけりの両方が入った声色で、にやり笑いにうっすら怒りを含めた表情でスパルダスは言った。
そして、「やれやれ」とでも言いたげにあごをさすってにやついた。
「君達よくまぬけな顔をそろえて出て来れたね」
とあきれ気味に魔王たちを見まわしスパルダスは言う。
全く負けると思っていなさそうである。
しかし3人の魔王はここでは何も言い返さず、3人とも無言でスパルダスを睨み続け目を離さなかった。
1分程膠着的にらみ合いは続き、3人の魔王は一丸となってスパルダスに宣言しようとした。
「ついに我々魔王が覇権を取り戻す時が来た」
と言い初代魔王は唸った。
初代魔王は青銅の様な皮膚に全身をつつみ胸から腹の部分だけが人間の筋肉と同様になっていて、約5等身の体の中で大きな頭は斜め外側60度ほどに角が生え、顔は大きな口と牙、威信をそなえた鋭い相手を呑み込む眼光と大きな腕に鋭い爪と翼、背中には4本の上に突き出たとげがある。
太く設置性が高い強そうな足としっぽがある外見だ。
2体目魔王は言った。
「その通りだ。冥王たちに奪われた覇権を取り戻し再び魔族の王魔王が支配する黒魔術に戻す! 貴様が統一した黒魔術など本来の黒魔術ではない!」
2人目の魔王は蛇の様な目元と少し骨が浮き出たやせ形の口元や頬は老人の様で、頭には3本の角があり、腕は初代魔王と同じようだが足はなく蛇の様なスタイルでしっぽでバランスを取っている。
当然しっぽは長く大蛇の様で鞭のようにしなりそうだ。背中には多くのとげがある。
3人目の魔王は頭にフードをつけその中に暗黒に覆われた竜のような口と目があり、胴体は筋肉質の人間の様でゴリラの様に外側のみ体毛が多い。
腹に第二の顔がある。
フードをかぶった筋肉質の格闘家が腹におかしなぬいぐるみをつけているかのようなスタイルだ。
その豪華で個性万別な顔を見まわしスパルダスは言った。
「ふーん、力があるものに覇権が取って変わるのは当然の摂理だと思うがね。で勝ったらどうするんだい?」
3人目の魔王は言った。
高々とした宣言だった。
「東西まとめてミランドを魔族の統一国家に!」
2人目の魔王は
「この世の覇権は魔族にあり! 魔王こそが悪のシンボル、象徴だ! 王の証だ!」
「ふーん……」
スパルダスは木で鼻をくくったような声を出した。
「何がおかしい?」
2人目の魔王は言った。
スパルダスは意味がよくわからない懐疑的な顔と口調で言った。
「ミランドを統一か、スケールが小さいねえ。その程度の小さな考えで僕に勝てると思うかい? 僕は霊王だよ? 霊界を支配してるんだよ? 君らみたいにたかだか人間の国1つを得ようと思ってる程度の考えで僕に勝てると思ってるの?」
好き勝手やってくれた事に対する静かな押し殺した怒りと明らかに見下す嘲りが混じった言い方だった。
「魔王か、しょせん人間から派生した一民族だろ? その程度の力や考えで僕に太刀打ちできると思ってるの、と言っても聞かないか?」
さらに続けた。
「そもそも君らは人間と仲良くしていたんだろ? 甘いね。下等生物と仲良くしてる甘い奴らが僕に勝てるか」
初代魔王は相手の事を認める言い方をした。
「人間は確かに良い生き物だ」
「ほう」
ほんの少しだけ意外だった、と言う顔をスパルダスはした。
「昔の西ミランドは魔族と人間が共存していた。民主主義にしたがって魔王が君主として擁立された。魔王は国のシンボルだった」
「ふーん、じゃあ君は今でも人間が好きなんだね」
馬鹿にして声がうわずっている。
「ああ」
狸が腹を叩くようにスパルダスは笑った。
「はっはっは笑わせる。魔族と人間の統一国家を作るため僕に勝って覇権を取り戻すと? あはは笑わせる。何が魔王だ。しかも君は自分が善人だと思ってる?慈善事業かい?」
子供っぽい大人を笑うような馬鹿にした印象だった。
「昔はだ。昔は魔族と人間は共存した。それは誰あれミランド国王が『魔族の国』として国を分けてくれたからだ。感謝している」
「はっはっは! 魔王が感謝!」
またスパルダスは同様の笑いをした。
「ああそうですか」と言う感じである。
「魔王とは魔族で最も誇りあるものが呼ばれるものだ!」
「人間に感謝し仲良くしてるやつらが『誇り』だって。面白いね。悪人の皮をかぶった善人を演じてるのか」
「しかし我々は戦争をした、正魔法教会と。そして多くの死者が出た。あいつらはあまりに価値観がきれいで潔癖な考え方を持っているせいで魔族を悪人扱いして戦争に発展した。考えの違いは『人間じゃないから
だ』、『1部の人間が犯罪を犯したのは魔物だからだ』と言う考えでついに批判され続けて東西ミランドの関係は崩壊した。始めは経済制裁等から圧力をかけ始め話し合いから圧力をかけて行く方法で我々を追い詰めた。そして戦争になった」
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