ルディン
「剣に魔力を集中させるんだ!」
精霊の声が聞こえた。
大翔は目をつぶり集中した。
落ち着きのない彼にとって集中は難しい。
しかし彼は精霊の声に導かれるように呼吸を整えた。
「はあ、はあ」
嘘のように水や鏡の様な透明な心になっていった。
一方カノン達はリバイアサンと戦っていた。
「喰らえ!」
とカノンは魔導人に攻撃指示した
魔導人は無骨で不器用な動きと関節を曲げる度ぎしぎしと音を立てるもどかしさもまじえた大味で大げさなフォームで息を吸うように力を溜めてから渾身の力で熱戦を吐き出した。
木の巨人の叫びの様である。
目は破壊しか考えていない無機質さがある。
しかしどこかさびしさ、それに愚直さも感じる。
それにリバイアサンの全高7メートルはある津波と真っ向からぶつかる。
しかし、魔導人の熱戦は押しているものの水の壁を破るまでに行かなかった。
リバイアサンの津波はある意味盾で防波堤でもあった。
「うむ。互角が精いっぱいか」
とスターマークは感じた。
駆け付けたスターマークやキッド達も魔導人の陰に隠れながらけん制のように魔法を放って行った。
しかしルディンは魔法を放って相殺したり、バリアで防いだりし、リバイアサンも竜巻と津波をバリアにしてなかなかダメージを受けない。
こうちゃく状態は続く。
スターマークは思った。
「我々の魔力ではこれくらいが精いっぱいだな」
トライブは言った。
「あのルディンとか言う魔法使い、明らかに我々のレベルを凌駕している」
キッドは言う
「リバイアサンも」
「奴らにダメージを与えられるのは魔導人だけだ。しかし熱線を一発撃つたびかなり溜めがいる。その間は我々でしのがなければならない」
ルディンは言う。
若干膠着状態に苛立っている。
「貴様らごときがこの私にかなうと思うか?」
相手をあきらめさせる意味もあった。
しかしスターマークは屈しない。
「我々は大翔君たちの後を追わないといけないんだこっちは」
「どうやって次元の向こう側に行く気だ?」
ルディンは猜疑心と興味本位で聞いた。
彼は危機感は感じていない。
仮に方法があったとしても冥王がマーク達に負けるはずがないと思っているからだ。
カノンは言った。
「魔導人の次元捻転砲を使う」
「何? そんな事が可能なのか」
冷静なルディンにほんの少し危機感が芽生えた。
初めて聞く兵器の名だった。
「一か八かだ」
スターマークは言った。
「ふふ、仮に冥王様の所へ行く方法があるとしてもそれ以前に私やリバイアサンを倒せるとは思えんがな」
キッドは詠唱した。
「火炎弾!」
「この位」
キッドのレベルの魔法では効果がなかった。
続いてスターマークが魔法を出した。
「風の刃」
これも意に介していなかった。
「ふん、貴様らが『あれ』とか言うどんな秘密兵器を出すかと思ったら思ったほどでもない様だな。まあよくリバイアサンの攻撃を食い止めているが、行けリバイアサン! 津波だ!」
「まだだ! あきらめず熱線を撃ち返す」
「そして大翔君たちを助けて見せる!」
スパルダスは大翔に問う。
「君は何に怒っている」
しかし大翔は無言だった。
「……」
「私は知らんと言ったろう。一連の騒動はアダラングたちが起こしたんだ僕は関係ない」
「はっ!」
思い立ったように大翔は剣から光線を出した。
スパルダスはひるんだ。
「ぐおお!」
大翔はスパルダスを見据え強く言った。
「あんたたちは多くの人たちを傷つけた」
しかしスパルダスの反応は鈍い。
「僕は知らんと言っているだろう」
下を向き目をつぶりながら大翔は言った。
「僕は馬鹿だからよくわからないけど倒さなければならない、それに冥王は地上を攻めるんだろ」
「よく事情も分からずに戦い相手の命まで取ろうと吸うのかずいぶん自分勝手だね」
呆れと相手を馬鹿にした口調でスパルダスは言った。
「1人でも人が死んだのがどこが理由にならないっていうんだ」
怒り気味でも抑えて言っている。
剣に導かれ怒っていても冷静になれたのか。
「君は家族でも殺されたのか?」
なんで俺に文句をつけるんだとスパルダスは言いたげだった。
「違う。あまり面識のない人だ」
少し落ち着いて大翔は言った。
「じゃあいいじゃないか」
「でも人の命をもてあそんだり奪うなんて許せない!」
「子供の論理で正義を振りかざすな迷惑なんだよ」
スパルダスはいらだち憤慨した。