霊王の不気味な声
ドンドンとスパルダスの部屋を叩く音が聞こえた。
「ぬっ!」
冥王は侵入者に対し身構えた。
しかしスパルダスは対して余裕綽々で制した。
「いい、ここは僕にまかせて」
「えっ?」
「ふふん」
冥王は恐らく大翔だろうとかなり警戒した。
しかしスパルダスは冥王に傷を負わせた相手を全く警戒していない。
相変わらず怖さなど感じていない微笑み方である。
意にも介していない様だった。
僕に勝てるわけがないというような。
冥王は思っていた。
(相変わらずこの方の力ははかりしれん。一体上限はどこなのか。しかし真崎大翔やあの魔王怪物体が相手ではもしやこのお方でも)
「いーよ、入ってきな」
スパルダスはまるで友人を呼ぶような言い方をした。
馬鹿にした言い方と住処を荒らされた怒り、さらに昼寝を邪魔された気持ちが少しだけ声に混じった言い方だった。微妙に軽いようで太い。
ついに意を決してがちゃりと扉を開け大翔と三夫が入ってきた。
扉の向こうから大翔達の覚悟が伝わる。
冥王は説明した。
「霊王さま、こいつらが」
「ふふん」
三夫はスパルダスを見て呆然とした。
「えっ? 誰この人、それにあの人が冥王?」
「だ、だれあんた?」
大翔も言った。
「僕は冥王君の友達かな?」
とスパルダスは気軽な感じで言った。
しかし三夫は冥王との関係が主従関係的雰囲気に感じた。
三夫は戦慄した
「ま、まさか、冥王にさらに上の相手が?」
戦慄する三夫の様子を微笑みを浮かべながらスパルダスは見た。
どうも相手があたふたするのを見るのが好きらしい。
「ところで何しに来たのかな?」
大翔は慄然と答えた。
そこには昔のどこか抜けた雰囲気はなかった。
「決まってるだろう! 冥王を倒しに来たんだ!」
しかしスパルダスは微動だにしなかった。
確かに大翔は前と比べものにならない風格があるにも関わらずである。
「君は何で彼に恨みがあるの?」
「黒魔術学園のせいで多くの人が傷つけられたからだ!」
しかしスパルダスは気にしていない。
そもそも大翔を同格の相手と見ていない。
「ふーん、でもそれは勘違いだよ。彼のせいじゃないよ」
「えっ?」
大翔は意外な答えにうろたえた。
「あれはダンテ君の部下たちが勝手にやってそうなったんだ」
「あんたたちが命令したんだろ! そのせいでカードゲーム同好会の人たちが死んだり傷ついたり僕の仲間も傷ついたんだ」
しかしスパルダスは「関係ない」「たかがそんな事で」と言う顔をした。
「カードゲーム同好会? 良く知らないけど末端の利用されてる連中だろ? 僕や冥王君には関係ないよ」
「関係ないって」
「あれはアダラング達が勝手に指揮してるんだ。そいつらが勝手にやったんだろ。僕らは知らないよ」
「た、確かにそうだ。もとはと言えば同好会の1人がカノンを騙したり僕達に襲いかかってきたから」
また大翔は痛いところを突かれ自分が勢いで言っていたような気になった。
スパルダスは説明を続けた。
「僕や冥王君にとってはそんな奴らどうでもいいんだ。勝手にやってる連中なんだから。僕達はもっと大きなことをやっていてそんなこと感知してないんだよ。はっきり言ってどうでもいい。僕が命令したんじゃないかって言われるのは心外だよ。君こそディード君の能力を使って随分大暴れしてくれたね。それに関しては罪の意識ないの?」
「いやだってそれはあんたたちが悪いんだと?」
スパルダスは少しだけむっとした。目が少し薄くなったのを見せまいとしてるかの様だった。
「勝手に思ってるだけだろ? 僕らは普段は平和で後は黒魔術を布教してるだけなんだから」
「布教したからひどい事になった人がいるんじゃないですか!」
三夫も続いた。
しかし相変わらず淡々と馬鹿にしたような声のトーンでスパルダスは続ける。
「それはその人の心の弱さや悪い心のせいだろ? 自分が元はと言えば力の使い方を知らなくてそうなったんじゃないか」
「じゃあ、あんたは人間に対してどうしようと思ってるんですか?」
平然と言った。
「布教して幸せになってほしいと思ってる」
「本当なのそれ?」
大翔は聞いた
冥王は付け加えた。
「お前たちが知る問題じゃない。私は人間界を乗っ取りたいと思っているがな、元魔族の人間はお前に取りついたディードの様に人間に興味ない物もいる」
「えっ?」
「えっ、じゃないよ。そうだよ子供のくせして。勝手に悪者扱いするんじゃない」
あくまでスパルダスは自分に罪はないと言うような言い方である。
「でも人間界を攻める気なんでしょ?」
さすがにスパルダスはしびれを切らした。抑えていたようだがこれが本当の怒りには見えない。
「ああ、うるさいなそんなに言うなら戦ってあげるよ。大体ここまで大暴れしてただで済むと思ってないよね。あの中島は処刑だけど」
「えっ? やっぱり彼処刑なんですか」
「でも彼は僕達を助けたりしたんだ」
大翔はフォローした。
「そんな事は知らないよ。でも彼が反逆者なのは事実だからね」
しかし相変わらず自分が知らない事は関係ないと言う口調だった。
「で、でも彼は何か悩んで」
「もしかしてモストチルドレン計画の事かな。そう、君たちの世界に知能などが著しく高い子供たちを送り込んで征服させる計画さ。彼はそれがやだったんだね」
「やっぱりそんな計画を」
三夫は警戒心がまし戦闘の構えを無自覚に取った
ほんの少し、スパルダスは本気になり腕を鳴らした。
睨みながら大翔を見下ろした。
「そろそろ話合いは終わりにしようか」
「くっ?」
「ところで2人とも大分疲れているみたいだね。回復させてあげよう」
光が2人をつつんだ。すると2人の力が瞬く間に回復した。
「えっこれって」
「体力と魔力が全回復した」
「ははは。疲れていたのを言い訳にされるとやだからね。じゃあ始めようか」
「くっ!」
「なぜ回復させたのかわかるかい? 僕なら君らの命を奪うなんて簡単だからだよ。こんな風にね!」
いきなり部屋の空気がなくなった。ごうごうと音がした。まるで地獄への扉を開けたような音だった。
「ぐあああ!」
2人は息が出来なくなり苦しんだ。
「はははは!」
お読みいただきありがとうございます。少し回復しています。書き溜めはあります。
今体調とメンタル回復と共にストックを多く描いています。
23日には上げられます。