魔導人の威力
カノンが召喚したもの、それは「兵器」と名付けられていても魔物や魔人ではない、巨大な木人形だった。
はっきり言って、人形劇で手で操るような木の人形、そのままの外見だ。
大きさは5メートルあるが。
丸い木の棒を関節の節目がつなげて人間の形になっている外見であった。
頭、胸、腹、腕、足、のパーツを関節でつなげ人間型にしたイメージだ。
表面には木目が見えていて木でできているのが丸わかりである。
キッドが依然挌闘学校を視察する際に出した偵察型ロボット人形、それの大型だった。
「どうだっ!」
と得意げにカノンは言う。
何か巨大なおもちゃを自慢する小学生に近い雰囲気だ。
確かに木人形は背は魔王の怪物体と同じくらいの大きさだ。
確かに大きい。
これは兵器なのだろう、他に使い道がないとは確かに見える。
しかし外見はまるで操り人形劇に使う木の人形が人間より少し大きくなった位のイメージしかない。
はっきり言って兵器的迫力がない。
置物にさえ見える。
でくの棒と言われそうだ。
ルディンは魔導人を見てまだ表情を変えない。
じっくり様子を伺っているようだった。
弱い部分を見せないそぶりかもしれないが。
魔導人は目は丸が人間と同じ位置に2つあり口はある。
耳と鼻はないし髪の毛もない。
まるで女の子用人形を作る前の原型である。
それぐらい外見が質素だ。余分なものがついていない。
しかも何というか頼りなく無表情だ。
ルディンは戸惑った。
「こんな人形を召喚してどうする気だ。何がしたい?」
馬鹿にするような半分怒ったようなルディンの口調にカノンは勝気に言い返した。
「これが正魔法教会が開発した兵器、魔導人だ。なめると痛い目にあうよ」
「そうだ、かなり強大なモンスターも倒す力を持っている」
カノンはさらに続けた。
「あんただってやばいぞ」
「そんなもの」
とルディンが笑った瞬間、魔導人は突然すぎるほどの「ガアア!」と言うけたたましい叫びともに
落書きの様な顔の口から熱戦を出し、それがルディンの横をかすめた。
熱戦は壁を突き抜けはるか数キロほど先まで飛んで行ったと思うような勢いだった。
さすがにルディンは顔を青くした。
魔導人の口はまるで木に生命が宿っている様に人間的に開いた。
しかも口には剣山の様に鋭い獣の様な牙が並んでいる。
それが生々しい。
生物的だ。
その口から吐いた攻撃なのでさらにインパクトがあった。
観客は一方の戦いに驚いた。
「なっ?」
「何だあれ? さっきの魔王の攻撃と同じ位だ!」
カノンは得意げになった。
「少しは正魔法教会の兵器の威力がわかったかい?」
ルディンはほんの少しだけ焦りを見せた。少し無意識に後退している。
汗を1滴2滴たらすような感じだ。
「ふん、面白い、ではこちらも召喚させてもらおう」
ルディンはカードを出し詠唱した。
するとカードから巨大な海竜の怪物が現れた。
「あれは!」
「リヴァイアサン!」
「その通りだ。果たしてそんな人形にこの怪物を倒せるかな?」
「陸で出してどうすんだ海の化け物だろ。水属性だし」
「これは失礼」
と言ってルディンが手を上げると突如カノン達の周囲約30m四方の空間ががまるで水で作ったフィールドの様な青い物に包まれた。
「私が作った水の結界だ。ここならリヴァイアサンの力が発揮できる」
一方冥王は体の石像を割りついに中から現れた。
「で、出た!」
「冥王様が真のお姿を!」
と恐れている上官の顔を見られる恐ろしさとほんの少しの楽しみが部下たちにはあった。
その姿は首から下は真っ黒なマントで覆い体を隠していた。
頭から顎まではまるで鉄仮面とも呼べる、銀色一色ののカラーに角が2つありまた頭頂がとさかのように膨れ上がった仮面をつけた姿になった。
「あれが冥王様の真の御姿」
と観客の部下達はあがめた。
さらに冥王はおもむろに懐から巨大な槍を出した。
これも部下はため息をついた。
「どうやって出してるんだ」
「あれは武器召喚スキルか?」
「冥王様ならわずかな時間の武器召喚もたやすい。召喚時間短縮スキルも使える」
とルディンは微笑した。
冥王は巨大な柄が銀で槍が黒の巨大な230cmほどの槍を出した。
「くらえ」
と重い声で言った途端振り下ろされるやいなやずどんと言う音と共に一瞬にして冥王の槍は地上にいる2番目の魔王を串刺しにした。
まさに一瞬の出来事だった。
「な、なんて威力だ!」
あがめていた観客も恐れに変わった。
2人目魔王は胸を貫かれしかも槍がささったままでひん死の状態となり生死が危うくなった。
中島はすくみあがっていた。
腰を抜かし青ざめた。
「この隙に逃げるか」
と冥王は言った。
「霊界で霊王に傷を回復していただき、戦いの状況をご報告せねば」
「逃がすか!」
その時はっとするようについに大翔は目を覚ました。
そして一馬の退魔の剣が大翔の元に来て手に取った。
大翔は冥王を追い空中を飛びあがった。
そして冥王の体を切った。
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