さらなるカオス
ついに、魔王がさらに2体現れた。
闘技場に冥王と魔王3体が並び対峙している。
これだけですでに異常な光景、状況であった。
それは観客の反応にも出ている。
「ま、魔王がさらに2体、合計3体? え、ええ?」
隣の魔法使いはもう少しだけ落ち着いていた。
「俺も少しだけ復活計画の事聞いてたけど、ここまで動くようになってたんだ」
他の魔法使いも出来る限り冷静になろうとした。
「しかしこれ動かしてんのクーデター起こしてる奴だろ? 何で冥王様は捕まえないんだ?」
「多分、それは簡単な事なんだと思う。でも魔王様相手に力を示す事によって恐怖を植えつけたいんだと思う。まあ、反逆罪で死刑だろうが」
空中で冥王は笑った。
「前代未聞の派手なクーデターだな誰だか知らんが。なかなか面白い余興をやってくれる。久しぶりに体がほぐれたぞ。捕まって死刑になるまでもう少しだけ遊ぶ時間があるぞ。まあここまでやって刑免除等ありえない事くらいわかっているだろうがな」
と余裕綽々で声を響かせると思惑をはせた。
(なぜ最初の設定より戦闘力が高い? 魔導博士らに聞いてみなければならん。まあ私の地位を脅かすほどの力はないが)
中島は精一杯の強がりと魔王の力に高揚した両方の気持ちで、まるで自分が強者になったかのごとく叫んだ。
「笑ってられるのも今の内だぞ。どこの世界に魔王を3人敵に回して勝った奴がいるんだ。モストチルドレン計画だか何だか知らないがよくも僕を有能な人材と言って招へいしたな最初から奴隷扱いするつもりだった癖に!」
様子を見たルディンは客席から宙を飛んで冥王の所に行き耳打ちした。
「クーデターの犯人はガキの様です」
「何? カードゲーム同好会とか言う奴らか」
「似たような者ですが、一応不幸な身の上のくせに甘やかされたガキの様に駄々をこねている様でして、相当な制裁が必要かと」
「まあいい、それは後だ。魔王は私が止めてやる」
冥王と話す時もルディンは冷静さを保っている。
「宜しいのですか? 御手数になりますが」
「まあこれに勝てば私の威厳はさらに確固たるものになるだろう」
観客が言った。
「ルディン様ってすげえな。冥王様と冷静に話してる」
(なるほど、力を示すことにより部下の忠誠を上げようと言う事か)
そう思い一旦ルディンは引っ込んだ。
中島は反錯乱のような興奮状態で言った。
「復活魔王の力を見せてやる! あああ!!」
恐怖でわめいているのか高揚なのかもはや自分でもわからない。いやプライドを傷つけられた事もあるのかもしれない。冥王のあれほどの力を目にしても逃げないのは立派でもあるかもしれない。
死刑決定で開き直る気持ちとわがままな駄々っ子の両方の様だった。
「う、うおお」
観客は見入った。
ついに2、3人目の魔王の目が光り攻撃の合図となった。
2人目の魔王と3人目の魔王は空中の冥王めがけて角や口から熱戦を発射した。
同時攻撃である。
しかもその威力は初代魔王にひけはない、舞台を一瞬で焼き焦がすほどの威力だった。
裁きの光と言ってもおかしくないほどの迫力だった。
超速度と超高熱を併せ持つ光線を放った。2体目は口から更に2本の角からも。3体目はわにの顔の中にある人面の顔その物から超威力の光線を放った。
ドン!と言う想像を絶する衝撃が冥王の体に起こった。
これは少なくとも闘技が始まって最大級の衝撃だった。
(ぬう! やはり思っていたより威力が違う。これは設計開発ミスか?)
さらに光線攻撃は続いた。
「あれを連射出来るのか?」
客は震撼した。いや興奮にも近かった。
そして何発もの光線攻撃による巨大爆発の煙の中から冥王が姿を現した。
「ぐ、ぐうう」
そこには余裕が明らかに削がれていた。
怒りと戸惑い、またそれを部下に知られたくない感じが見て取れた。
一方三夫は大翔をかつぎカノンたちの所へ来ていた。
「逃げよう! 大翔君も重傷だし」
とカノンは叫んだ。
「うむ。これほどとんでもない状況ではもはや騒ぎに乗じて逃げるしかない」
ロゼオムは判断した。
「逃がさんぞ」
敵魔法使い達はかこんだ。
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