激闘続行 冥王の余裕
「さて、行くか」
冥王はあまり大げさなアクションをせず、静かに攻撃予告をした。
それが逆に威圧的だった。
観客席の黒魔術師たちはごくりと唾を飲んだ。
それほど雰囲気を変えた。
重く鋭い、冥王しか作れない緊張が闘技場に走る。
冥王は短い詠唱後、石の腕をぐきりぐきりと動かし指を天に向けパワーを集め小型の火の玉を作り出した。
観客はどんな恐ろしい攻撃をするのか不安と期待があった。
しかし冥王が作った火球は三夫の大火球には全く及ばない大きさだったため、観客にはいささか拍子抜けの空気が漂った。
「あれ、冥王様の技か、意外に小さいな」
「火球レべルで言うと2、3くらいじゃないか?」
「いや、でも何かあるかも」
「そうだな、あおいだだけで突風を起こす方だからな」
「くらえ」
と抑えたあまり大きくない声と共に冥王は指先の火球を発射した。
余裕が感じられる。
到底まだ本気とは思えない。
ロゼオムは言った。
「大声を出さないこと自体、まだ全く焦っていないのだろう」
それは何となく観客に伝わっていた。
しかしその火球は速かった。通常の火球魔法のスピードよりもずっと。
矢、いや閃光の様な勢いで、地上の魔王に命中するまでわずか1m秒とかからなかった。
ドン!と音がして魔王怪物体に命中した。
しかし火球が小さいためあまりダメージはなかった。爆発も小さかった。
「ふん! そんな小さな火球が効くか!」
確かに魔王の受けたダメージはHP100の内4くらいだった。
中島は何とか冷静さを維持し強がっていた。
しかし本心では何とも言えない冥王の出方と雰囲気に不安を感じていた。
観客は再度噂した。
「あの火球、通常の魔法使いのそれよりずっと速いぞ」
「さすが冥王様だ」
そんな話が聞こえたかはわからないが
「くくく、もう1発くらえ」
そう言って冥王は高速火球を再度撃ち出した。
「速い!」
観客も噂した。
しかも次に間が無かった。
「もう1発、いや2発!」
冥王は矢継ぎ早に火球を撃ってきた。
「何だあの連続攻撃は? 普通あんな立て続けに出せないぞ」
「詠唱をほとんどしていない!」
「あれは『詠唱短縮』のスキルか? あんな高度なスキルが使えんのか」
「くくっ!」
冥王は嘲笑い弄ぶ様に火球を連発した。
初代魔王は体が大きいので避けられず全て当たった。
石像の冥王と違い魔王怪物体は生物体なので表情やリアクションがある。
目はほんの少し埃が入った程度に動かし、体はこんな程度かと言う感じでほんの少し衝撃でぐらっときただけで動じはなかった。
足も後退しなかった。
「体が大きすぎるのも難だな」
上空から見下ろすように冥王は皮肉を言った。
いかにも余裕綽々だ。
「くそ。こっちは遅くても頑強なんだ!」
と中島は言い返した。
しかし彼の意識はおもちゃののりものを動かす小学生的意識しかなかったかもしれない。
それはそれで危険でもあるが。
「次は氷弾だ」
と冥王は言いまたも短い詠唱で今度は次々氷弾を生成し魔王めがけて撃ってきた。
(この隙に!)
と言い三夫はダウンしている大翔を抱え客席に逃げた。
観客は恐れと驚き、尊敬があった。
「火と氷を簡単に切り替えしかも絶え間なく速く撃ってくる。なんて力だ」
「ふっ、お前たち冥王様の実力などまだ出だしだ」
ルディンは噂をしている部下に言った。
冥王は敵が自分の被造物だと誇った。
「元々火にも氷にも強い様に作ってあるからな」
そこには敵であるから厄介だと言う意識はなかった。
中島は焦って言い返した。
「強がり言うな! 効かなくてびびってんだろ!」
「動きが遅い相手に速い技を使っても仕方なかったか失礼失礼」
冥王は様子見というより完全に馬鹿にしている。
明らか過ぎるほどに格下に見られていた。
中島はやけにならないようかつ熱くなった。
「こっちにはこれがあるんだ食らえ!」
度初代魔王は額から熱戦を出すため額にエネルギーを集めた。粒子が散る。
「またあの熱戦だ!」
「あれをまた出すのか!」
観客は騒いだ。
「行くぞ!」
中島は叫び、再度高熱熱戦は発射された。これも先程同様凄まじい熱とスピードで冥王に向かい再度直撃した。
また冥王の体に爆発が起こった。
しかし冥王は今度は少し効いたかの様な反応をし目無理の中から出てきた。
「効いてるのか?」
「しかしあんなのを2発食らって生きてるとは!」
「効いてるふりかもしれん」
「まだだ! まだ食らえ!」
初代魔王は中島の叫びと共に熱戦を2発目通算3発目を撃った。これも冥王に直撃した。
「もう1、2発だ」