クラ―ケンとの死闘
「中島」と「鈴木」を間違えておりました。申し訳ありません。10月26日改稿いたしました。
中島はまだ保管部屋にいた。
保管庫は化学実験室の様な雰囲気ではあるが、低めのテーブルに博物館の様に重要物が展示形式で並んでいる。
暗く質素で無駄な物は何も置いていない。本当に専門家以外は用のなさそうな、入れなそうな雰囲気であった。
ガラスなどはないので置物を手に取る事は可能だが先ほどまでの様に電気が流れる。
外で警備員の声がした。
「誰かいるのか?」
「ルディン様のご命令で部屋をチェックしています」
咄嗟にかつ冷静に中島は答えた。
「ルディン様が?」
「ええ」
中島は鼻をつまんで演技をした。
「わかった」
と警備員は去ったようだった。
「ふう」
と冷や汗ものだったが中島は一息ついた。
「意外に警備浅いんだな」
中島は脳が液体漬けで入っているカプセルを外から色んな角度から見た。
パイプでカプセル内にエネルギーか酸素かを入れていてあぶくがぶくぶくいっていた。
「これ、どうやったら出せるんだ? と言うか使えるのか? 多分あの魔王の怪物体の肉体に脳の役割で入れるんだろうけど機能は十分なんだろうか。確か肉体の方は外見を見てもほぼ完成してたな」
中島はまたルディンの話を思い出した。
モストチルドレンの事だった。
(僕を「有能な人間」としてスカウトした黒魔術。でも蓋を開ければ今度はさらに有望な人間達を入れて僕なんてすぐ奴隷に格下げずるつもりだったんだ。しかも東山たちを自決させて死に至らしめやがって。こんな人を人と思わない場所なんてまっぴらだ)
そう言い終わると中島はまた「ふう」と息をついた。
(僕には帰る場所はないけど……ダンテ様が1番と聞いていたのにその上に冥王がいた。その冥王は地上を滅ぼそうとしている。僕だって人間だ、故郷を壊されたくはない。だからこの魔王の怪物体を動かして冥王を倒してやる。歴代の魔王の力が4つあれば勝てる)
中島はまた嘆息した。
「スターマークさん、元気かな? 僕に大事な事を教えようとしてくれた」
外のマークはくしゃみをした。
「誰かが噂してるかな?」
中島は警備員が入ってきた時に炎の輪の魔法でしばり拉致した。
「何をする!」
「魔王の起動方法を教えろ!」
「それは魔導博士しか知らない!」
「呼べ! 他の人間にばれずに!」
中島は警備員を脅した。
一方、闘技場でベヒーモスを倒した大翔は今度はクラーケンと戦う場面となった。
黒魔術の観客は殺気だった。
「やれやれえ! 殺しちまえ!」
カノンたちは懸念した。
「あんな大物と2匹連続で……」
ロゼオムは促した。
「もし危なくなったら「あれ」の出番だ」
カノンはうなずいた。
「あれですね」
そして審判は両者が中央で向き合いチェックが終わると叫んだ。
「はじめ!」
観客は叫んだ。
「今度こそやっちまえ!」
大翔はさすがに警戒した。
(あれだけ長い足が10本もあったら近づくのは危険だ、十分に間合いをとろう)
大翔は一旦さっと後方に逃げた。その後ジグザグに前方にジャンプしながら近づいた。
迂闊には近づけない。
クラーケンは自分の間合いに入ってくるのを待っているようだった。
特に3本の足を戦う為前に出して来ていた。
(幸い、あいつは動きが遅い。少しずつ間合いに入ろう)
じりじりと、左右にジャンプしながら隙を伺う大翔についに一本目の足が襲いかかった。
「くっ!」
上からの攻撃を腕でガードして見せた。
しかし一旦下がろうとすると今度は右斜め上から別の足が飛んできた。これはしゃがんで避けたが今度は上から最初の足で殴られてしまった。
「ぐぐ!」
大翔は苦しんだ。
これは威力が大きく、大翔はうつ伏せにダウンした。
さらにふらふらと起き上がってくると今度は平手打ちの様に横から足で殴られた。
「くっ、くそ!」
クラーケンは「足は3本あれば十分だ」と言いたげだった。
(思ったより足のスピードが速い、切ってやる!)
手刀を構え、上から足が来るのを待って切ろうとしたが、手刀がクラーケンの足に触った瞬間、ぬるっとした感触で受け流された。
「ダメだ!」
大翔は別の足で吹っ飛ばされた。