表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/166

魔王の猛攻

闘技場の端から中央にかけて魔王と三夫が発する。激しい光弾が乱れ飛び、両者は応酬を続けた。


かなり派手に見えるが両者とももっと大きな光弾をだそうと思えば出せるがまだ様子見の様でもあった。


殺気だっている黒魔術の観客は激しい野次とあおり言葉を大声で叫んでいた。

「うおお! やれやれえ! やっちまえ!」

他の客も呼応する。

「そうだ! 殺せ!」


 一方カノンたちは心配そうに成り行きを見ていた。

カノンは言った。

「本気出してるんですかね、三夫君。ためらいがないと言えば嘘になると思いますけど」


 ロゼオムは答える。

「彼は目に辛さが見えない、と言うことは運命を受け止めているのかそれとも支配されているのか。どちらにせよ悲しい事だよ」

「親友相手の戦いが悲しくないわけがないです」

「彼は「魔王が相手なら仕方ない」と悟ったような事を言っていた」


 カノンは続けて聞いた。

「もう少し試合が進めば分かってくると思いますが、どうなんでしょう」


 ロゼオムは言う。

「そうだな。きつくなればなるほど本当の気持ちを表に出すかもしれない。ただし戦いがあまりエスカレートして戻り道出来なくなる可能性もある。なにせ相手は魔王だ。今は大翔君じゃない。向こうは容赦も迷いもなく攻撃してくるんだ。それに合わせてヒートアップして後戻り出来なくなるやもしれん」


 カノンが返した。

「そうですね。もし勝つか負けるか死ぬか生きるかの状態になった時は必ず迷いがない方が勝ちます。だからそうなる前に三夫君は自分の気持ちに基づいて行動してほしい」


「しかし、例え大翔君と戦う事が間違いだとわかっても、今は周囲を闘技場と他の手下に囲まれた状態だ。身動きがつかん。なにせあの冥王も見てるんだ」


 ダンテとアダラング、ルディンは冥王の傍にいた。

ダンテは聞いた。

「どうですか。魔王様は本気ではないかと」

「まだ、判断するには早いな」

と冥王は言った。


三夫は戦況を変えるためか、跳躍、飛翔魔法を詠唱し素早く上に飛び上がった。


 そしてその位置から徐々に後方移動で相手から距離を取ろうと遠ざかりながら撃ち、光弾攻撃が魔王か返ってきたら素早く左右に避けそこから攻撃する多角的で空間移動自在な戦法を取って見せた。


もはや三夫は完全に空間戦闘に長けていた。


(ぬう、あやつ空を自在にとんで来る……)

魔王は警戒心を強めた。


 空中からの攻撃にはさすがの魔王も防戦一方になった。

遠距離からのさながらスナイパーとも言える攻撃方法を三夫はしばらく繰り返した。


何発もの光弾が魔王を襲い爆発で魔王の体が煙に包まれていた。魔王はひたすら防御態勢をとった。


 三夫としてはまだ決着をつけるつもりではない様だ。

まだ大きな技を出していない。まだドーム状光球や巨大な光の矢などを撃っていない。


「う、うおおお!」


と煙の中で攻撃に苦しむ魔王は狼の様に唸った。


 三夫の攻撃が一旦終わった。肩を落とし1呼吸した。

魔王は息をつき 

「ふうう、かくなる上は」

と何かを画策した。


 そして手に何かを握り三夫に向かって投げつける様な仕草をした。

すると三夫の体が吹き飛んだ。


 これには皆驚いた。

「なんだあれ? 何の呪文だ?」

「あれはもしかして」


「くっくく」

と魔王は笑っていた。


波動投擲はどうとうてき?」

と客席から声が漏れた。


 魔王は観客の声に答えるように言った。

「その通りだ。この技は黒魔術ではない。魔王のみが使う事を許される魔王独自の技だ。魔力を消費しなければ詠唱することもない。それゆえ連続で撃てる」


 さらに魔王は投擲を繰り返した。

三夫は何度もの打撃を空中で受けその度体が爆風を受けるように上方向に跳ね飛ばされた。


 三夫の体にダメージが蓄積していく。

強烈に体を殴られる感覚だろう。


 ロゼオムは心配した。

「大丈夫なのか三夫君は? 覚醒しても肉体は変わらないんだろう」

「もしかして『身体強化』の魔法をかけているのかも」

「それを使いこなせるとなると相当のLVだな」


三夫は体勢を何とか空中で立て直しふらつきながら攻撃の届かない場所を選び着地した。


「ふうむ。何か防御魔法をかけているようだな。さすがは大魔法使い」

魔王は気づいたようだった。

そして魔王は新たな技を繰り出した。


 魔王が口を開けてまるで狼の様に唸り吠えると口から衝撃が発せられその衝撃波が三夫を襲った。

「これが口波動こうはどうだ」


着地したばかりの三夫はこの攻撃をまともに喰らい、さらに起き上がってきた所にもう1発食った。


「三夫君!」

カノンは叫んだ。


「くっ、くく」

三夫は苦しんではいたが必要以上に言葉を出そうとはしなかった。

何とか周囲に自分がどれ位ダメージを受けているか見せないようにした。


 さらに

「隕石落下!」

と魔王が唱えると隕石が三夫めがけ2発3発と襲いかかった。


「うわあ!」

カノンは叫んだ。

「やばいですよ!」

一馬も危惧した。


 当の魔王は落ち着いていた。

「私は魔王だから隕石魔法を連発する事が出来るのだ」


「ああ……」

三夫は伏せていたため直撃を避けたが周囲の足場は穴だらけである。


「さあ、どうした?」

魔王は不敵に挑発するように言った。


三夫は口を切って血を流した場所に手を当て肩で息をした。


 さらに魔王は雷撃を放ちこれが三夫の近くに落ちた。

これは直撃は避けられたが、はたから見て巻き込まれたと思われるほどの大きな爆破や煙が起きていた。


 三夫の目ははまだ死んでいなかった。

何とか苦しい体勢で魔王を睨んだ。


三夫は苦し紛れに手から雷撃を発したがこれは効かなかった。


「この俺に雷は効かん!」


 雷撃は弱めでもあった。

三夫はこのままではまずいとさらに高レベルの光弾(約直径70cm)はある光弾を詠唱後手で作った。


「ほう」


と魔王は笑った。

そして力を溜め三夫は光弾を放った。


「ふん!」

と言い同じタイミングで魔王は同じくらいの大きさの光弾を放った。


 2つの光弾がちょうど闘技場の真ん中でぶつかり合い、爆発した。

これは両者に影響を及ぼさなかった。


魔王は少し息を切らしながら不敵に笑い、三夫は疲れながら体勢と冷静さを維持した。


「一体、どっちが有利なんだ?」


それは見ている者にもどちらともつかなかった。


 ロゼオムは心配した。

「それにしても、三夫君は大翔君と戦うことをどう思ってるんだ? 言葉も発しないし態度にも示さない。完全に呪いに支配されてしまったのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ