決戦への布石
カノンは傷口に回復薬を塗った。
「君ありがとう」
中島はうつむきながらこれまでと明らかに違う穏やかな感じで言った。
「……スターマークさんは元気ですか?」
カノンは中島がマークの事を気にしていたのに少し驚き、間を空けて答えた。
「ああ、元気だよ。今は外で待機してるけど」
「そう……あの人には色々助言してもらったから」
カノンにはかなり中島が変わったと言う見方があった。
その瞬間、三夫の足を剣が貫いた。
「あっ!」
驚いて皆が見ると、逃げたと思われたジャクレイがはあはあ息をしながら立ち上がってきた。
「はあはあ、まだ俺は死なんぞ」
腹から血を流していたが、矢を抜いて見せた。
意地なのかプライドなのか苦しみながら笑っている。
狂気すら感じさせた。
「三夫君大丈夫か」
「ふん!」
とジャクレイはまた掌から剣を伸ばした。
むしろ投げたナイフよりも伸縮速度は速い。
「ぐあ!」
かけよった一馬の肩に刺さり引っ込んだ。
「ふはーはは! この俺の奥の手、刀閃状光弾だ。この技はナイフ程射程距離は長くないが、掌から狙った場所に一瞬で到達する。5mほどなら1秒とかからんぞ。避けようがないぞ」
「し、しぶとい奴だ!」
ロゼオムは言った。
「それと中島、見ていたぞ。貴様どういうつもりだ?」
突然ジャクレイは中島に向きなおった。
「えっ? ポケットから落ちたんです」
その瞬間ジャクレイは中島を思い切り殴った。
彼は後方に弾き飛ばされた。
さらにドンと言う音と爆発がして三夫達は吹き飛ばされた。
バンズコが再び来たのだ。
「俺を重力魔法だけだと思うなよ、このように爆破魔法も使えるんだ!」
ドンとカノンの周りに爆発が起き、飛び上がった所にさらに爆破の追い打ちがかかった。
「なんてハイレベルな爆破術だ」
カノンは体が焦げ倒れた。
ロゼオムは震えた。
「何て強さだ。これが黒魔術の上位魔術師か」
「当たり前だ。貴様らガキの寄せ集めが勝てると思うか」
「くっ! 爆破魔法!」
必死にロゼオムは爆破魔法を放ったがバンズコにかわされ逆に爆破魔法を連続で受けた。
そしてロゼオムも倒れた。
「くっ! やばいぞこれ、想像を絶する強さだ。だが俺はまだ!」
その時、剣がまばゆく青白く光り一馬の身体を覆った。
ジャクレイは剣の光を少なからず警戒した。
「さっきから気になっていたが、あの剣は何だ?」
「多分正魔法教会の法具だろう。だが大したことはない、使い手はあのガキだ」
「くらえ!」
と言いジャクレイは剣を伸ばした。
しかし一馬はこれを剣で受けた。
「ほう、やるな!」
ジャクレイは弄ぶ様に剣を数発伸ばしてきたが、剣の力か一馬は信じられない反射神経で剣を防ぎ続けた。ジャクレイの動きには全く無駄がない。
バンズコは
「ほう、剣で力が増しているのか。ではこれでどうだ?」
突如一馬を爆発が襲い、一馬は浮き上がった所にさらに連続爆破を受けた。
一馬は倒れた。
しかし一馬は剣を杖代わりに何とか立とうとした。
一馬は力を振り絞り剣から光を飛ばしジャクレイに命中させた。
「ぐあ!」
「こしゃくなまねを!」
またバンズコは爆破魔法を放ち、一馬の身体は焦げ吹っ飛ばされた。
「ま、まだ」
それでも一馬は這ってでも立とうとする。
「うっ、う」
「あきらめろ」
一方謁見の間では冥王とダンテが話し合っていた
ダンテは聞いた。
「決闘場の準備を始めますが火の海の上の橋と通常の闘技場はどちらになさいますか?」
冥王は考えた。
「ううむ、火の海の上の橋は確かに命がけで恐怖がある。だが橋から落ちたら終わりの世界だ。ずるがしこい魔王の事だ。大魔法使いを魔法を使う前に叩き落す可能性がある。それでは私に本当に忠誠を誓っているのか確かめられん。ここはやはり闘技場のような広い場所にし、お互いが力尽きるまで戦わせ気持ちを確かめよう」