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歴代魔王復活計画

 グニールは管制室でルディンに聞いた。

「ところで、中島に何を見せたんですか?」


「うん、あれだ。歴代魔王復活計画の1部だ」

一貫して静かで穏やかな話し方だ。品性も感じる。


 一方、グニールはかなり驚いた。

「えっ! あれをですか? かなり刺激がきつくないですか?」


 1時間前、ルディンは中島を館内の大きく開かれた兵器の格納庫のような場所に連れて行った。

冷静な中島もこれには驚きと戸惑いを隠せなかった。

見るとまるで巨大なまがまがしいまさに魔王と呼べる巨大な威厳ある怪物の身体が工業製品の様に制作途中で配備されている。


 巨大な足と腕を持つ像、像と言っても彫刻家の芸術品の皮膚に生々しい生物的質感漂う、まるで「魔王のはく製」がのような物が3体、いずれも頭や首がない状態で置かれている。


 さながら修理中の生物型兵器のようだった。


 さすがに中島は珍しく面食らった。

「な、なんですか? これ?」

「驚いたか、無理もない。これはな、人間界とは別の世界、ミランドの地で君臨していた歴代の魔王の像だ」


 ルディンは驚いた中島を見て微笑んだ。

まだ彼の中では能力と知性が高い中島もただの子供の用にしか見えていない様であり、そこがルディンの器の大きさを感じさせた。


「ええ?」

中島はまた驚いた。彼が動揺するのは珍しい。

と言うより言いようのない不安と恐怖があった。


「これははく製ではない。その時の戦争で滅んだ魔王の肉体を冥王様の技術で今蘇らせる計画なのだ」

「過去の魔王を蘇らせてどうするんですか?」



「冥王様の指示で人間界を攻め滅ぼすのだ」

「えっ! 人間界を?」

かなり過激な事をあまり表情を変えず言っている。


「うむ、言ってなかったな、と言うかまあ数少ない人間にしか公表していないがな」

「復活って」


「うむ。このままでは確かに石像のままだ。しかし君達スカウトされてきた人間の血やエネルギーを注入する事で生命を吹き込む」

「えっ、僕達からエネルギーを?」


「ああ、これからは一般の黒魔術外の人間からももらうが、君達にも協力してもらう。安心しろ命に別状はない」

「あの、攻め滅ぼすって、布教とは違うんですか? 黒魔術は人間に布教するのが目的じゃ?」


「ああ、布教とは違い、一旦人間社会を滅ぼし、元の住みよい世界に作り替える、と冥王様は仰っていたが、元々冥王様は汚れた空気を好む。仮に人間社会を滅ぼして元の自然の美しい地上にしてしまうと逆に冥王様に合わなくなってしまうのでそのあたりは検討中だろう」


「地上を滅ぼす……」

(僕はそんな事に加担していたのか。僕の様に優れた人間を豊かにする世の中にするため布教するんじゃなかったのか?)


 中島は動揺し、ルディンの話が聞こえなくなりそうだった。今更ながらとんでもない事に加担した。その事実が少しずつ彼の心を締め上げて言った。


 子供の自分がかなり大きな事に加担している。

家族も全て捨てたと思っていた中島に罪の意識がのしかかった。


 一方、地下迷宮。

ジャクレイは必死に足を引きずり逃げようとした。

その後ろから三夫の光の矢が鎧を貫いて直撃し倒れた。

「命は取っていません」


 三夫は皆に説明したがクールな言い方に少し皆戸惑った。

一方ロゼオムはバンズコと対決していたがバンズコは劣勢になり逃げた。

「お、追わなくていいのか」


 一馬はロゼオムに答えた。

「いやあいつを追うよりカノンさんの方が」

「うわひどいわこれ」

カノンの膝にナイフが突き刺さり、鮮血が装束を濡らしていた。


 カノンは無理してナイフをつかみ抜こうとした。 

「ぐっ!」


 痛みをこらえ何とかカノンはナイフをもぎ取った。

「さあ行こう」

そして平静を装ったがロゼオムは止めた。


「そんな無理だって。足にこんな怪我をしてたら歩くだけで血が流れ出る。これは引き返すしかないよ」

「で背負っていくのに1人いる」

と一馬は言った。


 カノンは強く言った。

「僕はいい! いくら怪我してても。もし最悪の事態になったら僕の「あれ」を使うしかてはないだろう」


「いやそうも行かないでしょ。確かに「あれ」でなければ通じない場面もあるかもしれない。でも君にそこまで無理をさせるわけには……それに一馬君も怪我してる。どうする?」

ロゼオムは言った。


不意に皆が気が付くと、中島は皆と距離をとりうつむき加減に攻撃もせず立っていた。


 さすがに皆気づいた。

「あれ?」

皆中島を見ている。


「き、君は敵だよね、何故見てんの?」

とロゼオムは聞いた。


 いきなり中島は敵意でも善意でもないわからない表情のままポケットから何か出した。

「これ」

それは回復薬だった。

「これ、くれるの?」


 

 一方牢の中で魔王の話に戻る。回想と昔話は続いた。


 かつて戦争が何代も続き、盟主が魔族だと人間からの信頼は得られずまた誤解と争いを生む、そう認識した西ミランドの人間達はついに魔族を盟主に擁立するのをやめ、人間が盟主になる事を決めた。多数決でである。


 それがディード・スペードの家系である。勿論西ミランドは「より深い魔族理解のため、人間の目で国を統括し、東ミランドとも話し合う」と言う目的の元でそれをした。一貫して何とか平和をと言う考えは変わっていなかった。


 大翔はかなり意外な印象を受けた。

「え、じゃああなたは元々魔王の国の王の跡を継がないといけなかったんですか」

「そういう事だ」


「人間は嫌いじゃないんですか」

「ああ、実際人間とも付き合いはあり仲の良かった奴もいる。昔はそれが普通だった」


 魔王は1呼吸おいて話を再開した。

「で、結局東ミランドの正魔法教会と西ミランドの魔王軍は戦いを世代を超えて繰り返す事になった。魔王は本当は悪い人ではなかった。人間と共存しようと努力をした。しかし差別意識が消える事はなくやむなく同胞の魔族たちを守るために戦争を続けたんだ。でその戦いの中では必ず正魔法教会が勝った。そして魔王は怪物になった姿は封印され凍結された。その凍結された肉体は何とこの黒魔術学園の地下に保管されているんだ」


「えっ?」

大翔はさすがに驚いた。

「冥王たちは『歴代魔王復活計画』と称し巨大兵器の様にそれを使い人間を攻めようとしている。だがそいつらを操れば我々にも勝機がある」


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