魔王のまさかの忠告
大翔の脳と精神は狂い始めた。
「うわあ!!」
大翔はこれまで前例がないほど経験のない激しい頭痛にさいなまれた。
これこそが魔王の体にかけられた大魔法使いと戦う宿命の呪いなのだ。
この世のものとも思えない亡者のような低くおぞましい声で大翔の頭に声が響く。
「戦え! 魔王として三森三夫と戦え!」
「あああ!!」
命令だけでなく奇怪な亡者の叫びも聞こえ、それが大翔の精神に異常をきたした。
大翔の体を黒雲のようなマイナスパワーが支配する。
苦しむ大翔を見て冥王は笑った。
「くっくく、貴様は魔王ゆえ、大魔法使いとの戦いは避けられない運命にあるのだ」
大翔は力を振り絞りしびれた体で言い返した。
「い、いやだ。悪人になるのは! 三夫君達と戦うのは! お前の技なんて跳ね返して見せる!」
そう意気込み大翔は全神経を集中し体の力も上げた。
呪いの力を跳ね返すため。
全ての気合を込めた。
「悪の力に支配されてたまるか! うおおお!」
こんなやつに、いや魔王の身体にかけられた呪いに屈してたまるかと言う気持であった。
無謀な賭けだったかもしれない。大翔らしい生き方だ。
しかし、それは冥王の力だけでない、大翔の力だけでは限界がある。負荷がいよいよ強くなった。
「負けるか! 僕は心まで魔王になりたくない! まして三夫君と戦うなど!」
しかし大翔の身体は限界だった。
上腕と腿から血が噴き出した。
「ぐあああ!!」
そこの傷口に冥王は毒を送った。
「ぐあああ!」
血が噴き出した時よりさらに大きな悲鳴がこだました。
毒の力に大翔は転げ回った。
泣き叫ぶような悲鳴を上げた。
「あ、ぐあ!」
人目を気にする場合でないほど大翔は脳の電波の様な音と振動、苦痛、傷と毒にわめき叫んだ。
大翔がこれだけ痛みや辛さをストレートに表に出すのは我慢強い彼がかなり追い詰められている証拠である。
顔面は蒼白で意識を失いそうだった。
呪いと毒の力のダブルである。まさに地獄だ。
冥王はその様子を楽しみながら言った
「私の配下に戻り侵入した大魔法使いを倒せばもう1度だけチャンスをやる」
「そ、そんな事」
これだけしぼりだすのがやっとだった。
しかし冥王は冷酷に現実を突きつけた。
「でなければ後2分の命だな」
その時突如、意識下に引っ込んでいた魔王ディード・スペードが大翔の脳に話しかけた。
「降参するんだ。1度完全降参しろ」
それは変に優しい言い方であった。
その言い方に大翔はほんのすこし信用した。
「そ、そんな事!」
しかし魔王の語りは冷静で諭すようだった。だましている感じがあまりしない。
「俺やお前の力ではこの毒を中和する事は出来ない。限界だ。冥王に屈服しよう」
叫びたいところを脳内に抑えた。
「出来るわけないだろ! 友人と殺し合いなんて!」
また諭すような言い方を魔王はした。
「お前は少し直情で生きすぎている。それだけじゃあいつには勝てない。私の忠告を聞け、ここは1時あいつのいうなりになるんだ」
しかしこれだけ追い詰められても大翔はがんとしてつっぱねた。
「出来ない!」
普通、ここまで追い詰められれば少しは考えを変える。
「悪い事に力は使えない!」
これは彼の長所でもあり融通の利かなさでもある。
少し厳しめに言った。しかし妙に心配したそぶりだ。
「頑固な奴だな。まずは負けたふりをするんだ。このピンチを切り抜ければまた反撃の時が来る。
「い、いやだ!」
大翔の意識は魔王との対話を拒否し別の場所に行った。
意識が人形の姿の様になり別の空間へと行く夢の様だった。
大翔の意識は魔王の脳内に移った。
何故かと言うともはや自分で考えた戦法ではらちが明かないと判断したためだ。
大翔の脳内意識は魔王の所持する魔法などの能力を管轄する脳の部分に行っていた。
ここにはまるでゲームの戦闘選択のアイコン画面の様に技や魔法の表示と効果があった。
「色々あるな。さすが魔王だけあって持ち技が多いや。僕はマジックバリアばかりだったからな。ここからあいつに通用しそうなのは。ん?」
そこには「黒の矢の魔法・属性「毒」 効果は非常に高く、決まれば1撃で強力な魔物を倒す」
「これは?毒って言う事はあいつが生物でありさえすれば毒が効かないわけない」
まるでゲームをするようにアイコンボタンを押そうとした。
しかし
「待て!」
と魔王が制止する声が聞こえた。
「な、何?」
大翔が振り向くとそこには自分と同じようなディード・スペードの姿があった。
「ここは貴様だけの場所ではないぞ。貴様何で私の技や能力を独断で使おうとする? 貴様にそんな権利があるのか?」
「だって、あいつを倒すためじゃないか?」
「この技は私が身につけたものだぞ、貴様に何の使用権利がある?」
相手のものを許可なく使う。これはADHDの特性だった。
「これは僕の身体でもある!」
魔王は自分の方が正しいように説教した。
「ほう随分虫のいい理論だな。貴様は自分の身体を悪い事に使うなと言ってきたが、逆の理屈なら許されるのか? 人の物を勝手に使う傲慢な論理だな」
「う……!」
痛いところを突かれ大翔は引っ込んだ。
「頑固者と思っていたが意外と素直に引っ込んだな、でここからだが」
「ここから?」
「私と再度意識を交換しろ」
「えっ!」
「お前の思考では奴には勝てん。私の方がはるかに戦闘経験は上だ。ここは私が考えた作戦を使う」
「そんな! あんたはただ悪い事をするためあいつに勝とうとしてるんじゃないのか?」
「じゃあ、貴様のガキの脳みそで奴に対抗できるのか? どうやって毒を取る気だ。貴様が降参しなければ私もあと1分で死ぬんだぞ」
「うう……」
「どうなんだ?」
さらに魔王は現実を突きつけ強く決断を迫った。
「わかった」
「よし、これでいい。私たちの脳内会話は冥王にばれていない、上手く行けば今は服従してもまたチャンスが来る」
「……」
大翔はついに引っ込んだ。
そして魔王の意思が再び前に出た。魔王は叫んだ。
「お助け下さい冥王様! もう2度と逆らいません! 大魔法使いを倒します! ですから毒を抜いて下さい!」
正魔法教会と黒魔術が同大陸にすみ同じ民族であり大戦に至るまでの歴史やエピソードを近々書きたいと思います。私の作品は概して説明が遅いですね。すみません。