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言わない方がいい事

 次の日大翔や三夫が学校へ行くと机に座り泣いている少年を皆がつらそうな顔で囲んでいた。


 まるでお通夜の様だ。

世界が終わった様な雰囲気だった。


 大翔達は不思議に思い近づいた。

その少年はむせび泣いている


「どうしたの」

大翔は他の生徒に聞いた。

「ひっぐひっぐ」

泣いている少年は応答はない。


 言葉なくひたすら泣いている。

かなりひどい。

何かよほど辛そうだ。

「何かあったの?」


 小声で他の生徒に三夫が聞くと

「実は彼の家昨日火事で……」

「ええ……」

 

 三夫は黙ったが次の瞬間大翔がとんでもない事を言った。


「えっ! 家が燃えちゃったの! お父さんとお母さん死んじゃってもう生き返らないの! かわいそう過ぎる!」



 この言葉が空気を切り裂いた

「わーん!」

少年は大泣きし始めた。

皆が怒って火事にあった少年をかばった


「お前何て事をいうんだよ!」

「ひどすぎる!」

「空気が読めないにも程があるぞ!」

「謝れ!」


 皆は矢継ぎ早に大翔を責めた。

さすがにこれには戸惑ったリアクションをした大翔だったが、完全には問題を把握し切れていないようだった。


「ま、ま、」

三夫は手を前にだし必死にかばった。しかしクラスメートたちは

「大体おまえ何で運動出来るからってえらそうなんだよ!」

「そうだ、前から気に入らなかったんだよ!」


 さすがに大翔はあわてふためいた。

そこへ担任・巣鴨が入ってきた。


「はい、席について」

唇が大きく顔が四角形で目がたれ少し太めで茶色の背広を着ている。


 後で大翔は教師に呼び出された。

「全く、火事にあった子に何て事をいうんだ……」


 しばらく大翔は膝に手を当てつぶやいた。

後悔は少しある。しかし完全には把握していない。

「ごめんなさい……」


 しかも家では母親が大翔をまっていた。

テーブルに1対1で向かい合って座った。


 母の怒りの表情に大翔は下を向いている。

ぶすっとしたままやがて重く切り出した。


「全く友達にへんな事を言ったそうね。いい加減にしてちょうだい」

しかし、大翔は呑み込めていない。自覚がない反応をした。


「僕、何か悪いことしたの? そんなに悪いの?」


 大翔のきょとんとした罪の意識のなさに母親はいらだち膝と拳がぶるぶる震えた。みるみる顔が赤くなりそして怒りが頂点に達した。


「悪いわよ! すごく悪い事よ! それが何でわからないの!」

「火事になったから可哀想だねって……」


「それがすごく悪い事なの! 普通は人が亡くなった時はそれに関して何も言っちゃいけないの! それが普通の常識なの!」

「僕は、すごく悪い事をした……」


 母は理解していた。

「アスペルガー、ADHDの子には強く言わず短く簡潔に、『だめ』と否定はしてはいけない、わかっているけれど」

と母親は頭を抱えた。


 大翔はしょんぼり部屋に行った。

「悪い事だ! 悪い事だ!」


 と壁をがんがん叩きさらに落ち込んだ。

すすり泣きながら。


「わかってるよ、皆が僕を変わった変な奴だと思ってる事、言われなくたってわかってるさ。でもなぜかつい変な事ばかり言っちゃうんだ! 僕は生まれつき変わってておかしいんだ! 樋口君にもひどい事を言った。何とかしなきゃいけないんだ」


 大翔は枕を涙でぬらした。夜中まで泣きじゃくった。




ここまでお読みいただきありがとうございます。宜しければ評価・ブックマークをお願い致します。

2月10日改稿。

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