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魔王の絶望

「ま、まさか!」


 いつの間にか冥王は自身に魔法をかけ、雷に強い体になっていたのだ。

魔王がこれを受け止めるにあたり時間が必要だった。


 自分の力のなさと浅はかさを認めなければならないからだ。


(私の作戦はすでに見透かされていた)


 魔王は自分の迂闊さを恥じた。

いや、そもそも自分は何も知らなかったのだ。


 先ほどまでは描いていた勝利への道筋、そして自信、冥王を倒す野望、これまでの不満、それらが灰塵のように散り吹き飛び力をなくした。


代わりに襲ってきたのは死の恐怖であった。


 冥王はまるで皮肉と激しい威圧を混ぜたような口調で言った。

恐ろしい声が部屋に響く。


 魔王にとっては世界全てに響いているようだった。

自分だけを取り残して。


「貴様の体に雷があり効かないことぐらい見抜けないとでも思ったか、さらに貴様の悪い頭で立てたくだらない作戦もだ」


 魔王は屈辱と恐怖で震えた。


 その様子を見て冥王はほくそ笑むような言い方をした。

「だから貴様は私に勝てんと言ってるのだ」


 いまさらだが、とでも言いたげだった。


「あ、ああ」

魔王は希望をなくした。


(わ、私は愚かだ。その程度の作戦で勝てると思っていた……)


 ふいに魔王は部下たちに慕われていた事を思い出した。

(私は思いあがった。思い上がったのが敗因か! くっ! 神に近いとまで言われたこの私が!)


 その回想を冥王は打ち切った。

「絶望してる中申し訳ないがもう1つ教えてやる」

「え?」


 突如、冥王は再度雷を放った。

「ぐああああ!!!」

 

 魔王の身体は焼け焦げた。

「なぜだ……私には雷は効かないはず」

「貴様の属性も変化させておいたのだ」



「ま、まさか……」

そんな事は気づいていなかった。それも敗因だと実感した。


「さてと……」

また、前置きが長い。


 その後に言いたい事が待っていた。

「この私にここまで楯突いた以上、覚悟はいいんだろうな」


「ひっ!」

と魔王が言うなり石像型の冥王はその巨大な石の腕を思い切りダウンした魔王を踏むかの如く床の上に叩きつけた。


 まさにこれが神罰とでも言いたげだった。

床は四方ひび割れた。


 あまりの衝撃にひびが遠くまで広がった。


 しかしそれよりも魔王の受けたダメージは深刻であった。

肉体の動くための力をほぼそがれた。


 おそらく1対1でここまでやられたのは初めてではないか。


「が、がはっ……」

魔王は絶望と同時に吐血した。

魔王には屈辱はすでになかった。ただ恐怖だけだった。


 それが何度も続いた。

まさに地獄ショーである。


 ダンテ・モルグは震えて何も言えなかった

いや言えば殺されるぐらいの恐怖を持っていた。ただ心で思った。

(まさかここまでとは、私たちがカリスマとして崇めた魔王様が赤ん坊扱いだ。この方だけには逆らう事は出来ない)


 さらに追い打ちかつ罰のレベルを上げるように捨てられた魔王の身体を手でつかみ持ち上げ、高い位置から叩き落した。


 魔王の意識はうすれつつあった。

(うう、私はかつて神に近づいた人間と呼ばれた男、それがこんな姿に、冥王よ、なぜ私に怪物の身体を与えた。後でそれを失わせる気だったのに何の意味があったと言うのだ)


 ダンテ・モルグは思った。

(もしや魔王様に怪物の身体を与えたのはあえて強大な力を与えてのぼせ上らせ、反逆の意思があるかを確かめさせるため? やはり人間ではいくら力を得ようと神や人間には勝てんと言う事か)



 一方カノンたちはダンジョン攻略に手ごたえをつかんだ。

「新しい道に出た。確かにここは通った事が無いぞ! もう少しで出られるかも!」


 三夫は再度耳をすませ言った。

「ええ、大翔君の声が小さく聞こえますがとても苦しんでいます」

「えっ!」

さすがに皆驚いた。


 三夫は続けた。

「と言うか、大翔君の身体と体の中にいる魔王が怪しいのです」


「何故魔王が?」


「どうも、魔王ははるかに強い敵と戦っているようです。理由はよくわかりませんがなぜこんな事になってるのか」


 その会話を打ち消すように突然周囲の地面が割れた。

そして凄まじい重力がのしかかった。


「な、何だ頭の上から抑えつけるような圧力が。重力魔法か?」

「けっけっけ」


 不気味な声が聞こえた。


「誰だ!」

そこにはあの2人組の魔法使いがいた。


 醜い方の男は言った。

「この重力魔法の味はどうかな?」


 長髪の角の冠を付けた戦士系の男は言った。

「君たちがそろそろ出口にたどり着くと思ってこうして迎撃に来たのだ」


 醜い男も言った 

「私はバンズゴ兵長だ。重い重力魔法の使い手だ。これで全員つぶれてもらう」

「おのれっ! 重力魔法」


と言いロゼオムは重力魔法で相殺した。


「ほう貴様も重力が使えるのか。だがいつまで相殺できるかな」


「私はキリー・ジャクレイ、このダンジョンを設計操作した人間の友人だよ。君たちが有能なので謎が解けそうなのでそろそろ向かえうとうと思ってきたのさ。例えば私はこんなふうに魔法で武器を作り出す事が出来てね」


 突如ジャクレイは手から光を出すなりナイフに変え飛ばして来た。

「魔法で刃物を!」

皆驚いた。 


 カノンの肩に当たった。カノンの肩から出血した。

「ぐっ!」

「カノンさん!」


 カノンは苦しみとともに膝を落とした。

「はやく手当てしないと」


 と言い一馬は駆け寄ったが彼にもナイフは襲いかかった。


 一馬は剣で払いのけた。

再び一馬がオーラに包まれた。


「ほう、なかなかの剣裁きだな」

キリー・ジャクレイは感心した。


「えっ?」

一馬は意外な事を言われ戸惑った。


 カノンは叫んだ。

「一馬君、逃げろ!」

「しかし!」


 その時いきなり三夫は飛び上がり、高レベルの光弾を見舞った。

「は、速い! 防御を」

 

 キリー・ジャクレイはシールドの魔法で防いだ。

「ほう、良くわからんが年の割にハイレベルな魔法を使うな」


「三夫君! 先に行け! 今大翔君の身体にかなりまずい事が起きている! 防げるのは君だけだ! 僕たちに任せて行け!」

とカノンは痛みをこらえ叫んだ。


 しかししばしの間を置き三夫は答えた。

「できません」

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