人間だった魔王
(このお方に宣戦布告する日が来るとは)
魔王は冥王に何故こんな反逆的な気持ちを持てるのか自分でも分からなかった。
ずっと目を合わせる事の出来ないほど遠い存在だった。支配者だった。
確かに冥王は人間であった魔王に最強の怪物の力と体を与えた。
しかし冥王は人類最強と言われた自分に力を与えたその後、自ら砕いたのだ。
それでおちょくられているようでついに何もかも切れてしまった。
話は10年以上前に戻る。
その頃すでに黒魔術のリーダーだったダンテ・モルグは黒魔術族最強戦士となった人間時代の魔王の事を大勢の魔王使い達と山奥の儀式で称えた。
身長は170CM位で中肉中背、ピラミッドのファラオの様な被り物や鎧を付けていた。
若き日の魔王の名前は「ディード・スペード」と言った。
多くの魔法使いが正魔法教会との対戦に赴くための山の休憩所でまるで神に火を炊くように大量の薪でディード・スペードを称えた。
「あなたこそ王にふさわしい!」
「いや、貴方こそ神だ!」
「今こそ正魔法教会から大陸を奪還しよう!」
ディード・スペードは自身の強さが人間を超えやがて神に近づいた気になった。
数週間後、正魔法教会との戦いがこう着状態でディードは苛立っていた。
「なぜ一気にやつらを倒せぬ?」
ダンテは答えた。
「魔王様にかなうものは恐らく正魔法教会にはいません、しかしそれを知っている奴らは団結によりそれをカバーしています」
「団結だと? 下らん! 人間同士のつながりなど!」
そういって岩を殴って砕きイライラを発散した。
「余が力が無いからだ」
「そ、そんなことは!」
「いいや、私の力がもっともっと正魔法教会をはるかに凌駕するほどあれば!」
そこへ冥王はついに現れた。
「な、何だ!」
「化け物だ!」
と言い部下たちは逃げた。
その中で冥王はディードに話しかけた。恐ろしい支配力となぜか温かさもある声だった。
「そなたは人間だが強い力を持ち皆にあがめられているな。もし私の支配下にはいれば想像を絶する力を与えよう」
「本当か」
「このように!」
冥王が手を上げると一瞬にして川の流れが激しくなり大量の水が噴き出した。
「おお! 私にもそんな力をくれるのか!」
そしてディード・スペードは冥王に魔法をかけられ人間を超えた怪物に進化した。その姿こそ魔王であった。
虎の様な顔、3つの腕、尻尾、羽、うろこ。
舞台は現代、謁見の間に戻った。
「俺は魔王と呼ばれた男だ、怪物の力などなくても貴様を倒す。貴様が我々をただ利用していた事等知っている。」
「それが嫌だから、私に逆らうと?つくづく哀れな男よ。神さえお前を憐れまない」
「神でもない悪魔が分かったような!」
そう言って魔王は殴りかかったが、見えない膜に跳ね返された。
「ぐっぐぐ!」
「おろかなり!」
そう言って竜巻を起こした。渦に巻き込まれた魔王は姿が竜巻の中に見えなくなり跳ね飛ばされた。
「お、おのれ!」
「まだ立ち上がるか? ではこれでどうだ?」
冥王が指をかざすと部屋の上からとてつもない雷撃が落ちた。
「ぐああああ!」
また魔王は倒れたが、魔王はある事に気づいた。
「この体には雷撃が効かない? 体内に大量の電気がある」
「それは僕の身体だからだ!」
突然大翔の意思が話しかけてきた。
「なるほど、ほんのすこしだけ勝ち目が見えた!」
そう言って立ち上がった魔王は冥王を挑発した。
ここで大事なのは雷撃が効いているふりをする事だ。
「俺にもう1発雷を撃ってみろ!」
「何?」
(この体で雷撃を受けやられた振りをすればやつに1瞬の隙が出来る! そこへ魔力と電気の結合を浴びせてやる!)
改行していない部分など直しました。