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冥王の恐怖と反逆

「お、お目にかかれて光栄でございます」


魔王はさっきまでの無表情ぶりがうそのように委縮しきっていた。

目の上のたんこぶのレベルではない。


(この方は絶対者……残念ながら魔法界の魔王と冥王ではくらべものにならない強さの差がある、支配している世界の大きさが違う。これまでの歴史で死んだ悪霊の魂をすべて管轄した世界だ)


「ふっ」

と降臨した悪魔のようなまがまがしい声で冥王は笑った。


「はっ!」

と魔王は恐怖で反応した。

わざと冥王はおびえる反応を楽しんでいるようだ。


「ところで」

「は?」


この間の置き方が冥王の嫌な部分である。

全部を一気に言わない。


しかし次の瞬間核心を突く事を言った。


「貴様の身体の中にある人間の心は何だ?」

(見透かされていた?)


魔王はどう釈明して良いか分からず恐怖で頭が回らない中とっさに答えた。


「こ、これは私が取りついたガキの心が私に抵抗しておりまして、今押さえつけております! 問題はありません!」


「そのガキの心が君に打ち勝ち一人歩きしているのか」


「そ、それは先ほどの短時間のみです」


「時々君に悪い影響を及ぼすとかがあるのか? もしそうならその体を破壊せねばならん。君には想像を絶する苦痛が伴うが我慢してもらうぞ」


(ひっ!)

どんな目にあわされるかと恐怖に包まれ、魔王はまた釈明した。


「いえ、私の力で完全に封じられます」


突如、稲妻が落ちた。

「うわあああ!」


魔王は稲妻を受け悲鳴を上げた。


「馬鹿め、そのガキの意志に支配されマヴロウや他の魔法使いを殺したそうだな」


「ひいい!」

「未熟者め!」


魔王の姿はあわれみを乞うようだった。


「どうか命だけは」

「まあいい。次は許さん。2度とそのガキの心が外へ出ないようにしろ」



「ところで久しぶりだな、我が息子よ」

「は!」

急に少しだけ友好的な話し方になった。


「まあ、そう委縮するな。我々は家族ではないか」

「は、はい、仰せの通りに」

(私の元の身体はこいつが作った)



「元は人間だった君に最高の悪魔の力と体を与えたのだからな」

「はっ! 私が今あるのは冥王さまのおかげであります」


 ダンテ・モルグは思い出した。

(黒魔術最強の戦士である魔王さまに召還した冥王様からすさまじい姿と力の体を与えていただいたのだ)



「君に会えるのは本当に久しぶりだ。で人間に乗り移り人間界で力を蓄えていたわけだな。それはご苦労だった。で、今日は特別な話がある」


「は?」

また、嫌な予感が走った。


また間をおいている。


「うむ。実はな、正魔法教会とも決着を付けねばならぬが、その前に人間界を襲い征服しようと思う」

「えっ?」


 ダンテ・モルグは思わず聞いた。

「それは布教ではなくてですか?」

「そうだ。人間を滅ぼし私のものにする」


魔王とダンテは絶句した。


「し、しかし、元々は正魔法教会を倒しミランドの大陸を我々の手にするための戦いだったのではないですか?」


「うむ、実はな、ミランドの地は空気がきれいすぎて私にあわんのだ。よって私は人間界をターゲットにする。あそこは空気も水も汚染し人の汚れた魂に満ちている」


 ダンテは恐怖に押され言った。

「わかりました。我々の計画を変更しましょう」

「ありがとう」


その頃三夫は耳をすまし冥王の恐ろしい声に気づいた。


 三夫が震えている。

「恐ろしい声、敵が復活した」


「恐ろしい敵?」

カノンが聞いた。


 三夫は何とか落ち着こうとした。

「恐らく冥王でしょう」


「冥王?」

再度カノンは聞いた。


「えっそれ魔王より偉いの?」

ぶしつけに一馬が聞いた。


「ええ。魔王は元人間です。それに比べ冥王は度重なる黒魔術の儀式により悪霊たちと一緒に呼び出された別世界の王です」


「ロゼオムさんは戦った事あるんですか?」

カノンが聞き、ロゼオムは答える。


「いや、確かに大戦に参加したがその時は魔王が最大の敵と言われ、姿を見せず戦いは終わった」

「何故ですか?」


「恐らく自分が手を出すまでもないと後ろで構えていたのではないか」

「そんなに強大なんですか?」


舞台は再び謁見の間に戻る。


「それで、魔王の君に1つ伝えたかった事がある」

「はっ?」


「君は今の姿になる前は恐ろしい魔王の姿をしていたが、その一旦敗北して仮死状態になった魔王の巨大な体は再生させて私が保管しておいた」


「そ、それでは私は元の姿に戻れるのですか?」

魔王は喜びで元気になった。


 しかしいきなり次の言葉が魔王の心を折った。

「その事だがな、それは出来ん」


「えっ!」

恐怖と疑問、絶望が魔王に降りかかった。


「その君の元の身体は粉々に砕いた」

「なっ!」


魔王は絶句して言い返せなかった。


「何故かわかるか? 貴様は私の息子、嫌被造物だ、被造物ごときが主に逆らう事等許されん」

(まさか、この男は自分の力を誇示し主従関係を強くするために? 私の元の身体を砕いた?)


 その時決して今まで冥王の前では1%すらも見せなかった怒りと憎しみが魔王の心に充満し、ついに思ってもいない形で言葉に出た。体を震わせながら。


「許さん……」

「何!?」


魔王は心頭の怒りと恐怖を抑えるので自分が何をしているのかわからなかった。


「よくも人の身体を砕いてくれたな。くだらない人間界に寄生しくだらない生活を送り魔王の真の力を取り戻そうと待っていたのに貴様は?」


「貴様? 私に言っているのか?」

この聞き返しはこれまでにない強く恐ろしい響きだった。


 ついに魔王は言った。もう口から自然に出ているようだった。

「貴様はどうせ私に力を付けられ逆転されるのを恐れているんだろう!」


 沈黙と言う名の恐怖が流れる。

「まさか、私に反逆するのか?」

「……」


「どうなんだ?」

「そうだ」


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