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冥王との謁見

誤字部分「。などを修正しました。

「冥王!?」

「はい、お待ちです」


(あ、あの方が)

珍しく魔王=大翔の体に悪寒が走り、数秒後震えとなり体に現れた。

 


 冥王と呼ばれる人物の前ではダンテ・モルグさえ伝言役である。

「早く復活したあなたとお会いしたいとおっしゃっております」


 魔王は表情を変えないように必死だった。

(くっ、おっとあぶない、しどろもどろする姿をダンテには見せられん)


「今笑ったか?」

魔王はダンテを問い詰めた。

「め、めっそうもない!」


 その時部屋の後方のドアが開いた。

「魔王様、22時から冥王様の間で謁見準備です」

と伝令役の魔法使いが入ってきた。


 時間と言う数字は人の心を縛り緊張感を与える。

冥王との謁見時間が迫っている。


 緊迫し重い空気の中ふいに魔王の頭に激しい痛みが走った。

まるで稲妻のようだった。


「くっ!」

と魔王は思わずひるんだ。


 そして魔王の頭に叫びが内側から聞こえた。

「やめろ! 僕の体で悪い事をするな」

「貴様、小僧……」

それは体内に封じられていた大翔の心だった。

大翔は驚異の精神で魔王の縛りに抗っているのだ。


「な、なんと言う精神力だこの私の縛りを!」


ダンテ・モルグは取り乱した。


「何が起きているのだ? まさかあの小僧が縛りを解いたのか?」


 魔王は内面の大翔に語った。 

「貴様は俺の身体で何をするつもりだ?」


「何言ってるんだ? あんたが僕の身体を勝手に使ってるんじゃないか!」

 

魔王は大翔のマインドを脅威に思いながら冷静さを維持しようとする。

「思いあがって貰ったら困る。俺がこの体に乗り移ってなければそもそも貴様は地上に存在してないのだぞ」


「えっ?」


 痛みを感じながら魔王は話した。


「話を聞いていただろう。貴様はもとは洗脳兵士にするためにさらってきた赤ん坊だ。それが大戦が終わり用済みになり仕方なく私が魂を隠す場所として貴様の身体を選んでやったのだ。私は正魔法教会に敗れたがこの赤ん坊の姿で人間界に身を隠しやがて復活するつもりだった。貴様などとうに殺されていた器だけの人形にすぎん」


 魔王は続けた。

「私は魔法界の大陸に戻り黒魔術をさらに強化し、さらには正魔法教会と再戦する手はずだった。それを貴様の意思が邪魔した。貴様何者だ。体内の私の力に抵抗して見せるとは」


 大翔は全くひるまなかった。

そもそも相手が魔王と言う存在だと理解しているのか。


「何者かなんてこっちが聞きたいぐらいだ! 僕はただ真崎大翔として生きてるだけだ! そして自分の身体を悪い事に使わせたくないだけだ」


魔王は動揺を抑え努めて冷酷に突き放すよう話した。


「使わせたくない、ではない、使われるためにこの体はある。魔王の器としてこの大量魔力と電気を蓄えられる体に」


「僕の身体で悪い事をするな!」


「貴様が命令できる身分か。貴様は本来引っ込んで後はこの私に体を使わせる役割だ。わきまえろ」

「僕は普通の人間だ」


「貴様の意思等私が目覚めるまで人間界で体を成長させるためにあっただけの役割だ。この役割は終わりだ。何の能力もないガキが」


「僕は皆を救いたいんだ!」

「例えばあの灰人とか言うガキか?」


「そうだ!」

「下らん奴だ。あの様な奴の為に魔王の力を捨て降伏するとは。愚かな人間は理解出来ん」


「愚かでもいい! 僕は友達を見捨てたくないんだ! それで力をなくしたっていい!」


「愚かなんだよそれが。もうじき貴様の親友の三夫が貴様を倒しに来る。あいつはかつて先代の魔王と戦った大魔法使いの生まれ変わりだ」


「三夫君が?」

「気づかないとは愚かだな。勿論戦うことになれば俺が死ぬ訳に行かんからあいつに死んでもらう」


「そんな事!」


「もう防げん。魔王と大魔法使いはかつてから戦う運命にあった。先代もその前もそうだった。その血が覚醒したのだ。それに抗うことは出来ない」

魔王は一旦何とか完全に大翔の心を封印して見せた。

同行しているダンテは扉の前に来た。


「冥王様です」


 魔王の胸の高鳴りが最高潮になった。何せ大翔と予想外の口論をして心構えができていなかったのだ。

その頃罠の制御室にいたグニールの元に2人の男の魔法使いが来た。


 巨漢の胴体の真ん中に人間の顔がある鎧を付けた醜い顔をした男と鬼の2本の角がついた兜を付けた長髪が広く下に向かって広がった髪型の27位の筋肉質の男が来た。


 醜い男は言った。 


「グニール、獲物は仕留めたか?」

「まあ、これからだ。今魔物を送り込んでる」

グニールは答えた。


 長髪の男が言った。

「もし手に余れば我々が力を貸す。何せこの学園に人間がじきじき乗り込んできた事態だ」


 さらに混じって中島も来た。

「僕も」

「お前は黙っていろ中島」



また一方、カノンたちは地下迷宮でグニールの差し向けた怪物と戦っていた。

サイクロプスだ。


 一角獣のような頭の角、1つ目、何より人間をはるかに上回る巨体とその筋肉は容易に倒せそうにない威厳を放っていた。


 ロゼオムは焦った。

「アークデーモンがでたら今度はサイクロプスか、上級の魔物が多いな!」

ロゼオムはサイクロプスの間合いに入らないよう距離を取った。


 そして詠唱を始めた。

「地震魔法!」


「おおっ!」


一馬は驚いた。

地面にサイクロプスでさえ穴が出て周囲は地震に包まれた。

カノンはしてやったりの気持ちだった。

「あのでかい奴にはこういうのは効きますよ」


「いや効いてない。」

冷たくではなく三夫は言った。

いや、本人は冷たく言ったつもりはなく抑えて言っているのだ


(三夫君、少し冷めた?)

とカノンはロゼオムに耳打ちした。

(うーん、生まれ変わる前の彼の性格がそうなのかも)


 サイクロプスは穴から身を乗り出してきた。

あまち効いてなさそうだった。 


 ロゼオムは身構えた

「こいつは手ごわいぞ」


 次の瞬間また三夫は飛翔した。

「僕が行きます!」

「うおお飛んだ!」


三夫があまりのスピードと高さで跳躍するので皆は震撼した。


 さらに三夫はサイクロプスの顔を足場にし別所にまたジャンプした。 

「目を蹴った」

回転してもう一発蹴った。

「す、すごい!」


 カノンは感心したが、三夫はさらに高レベルの光線状光弾を撃った。

サイクロプスの肩を直撃した。

「グアア!」


(すごいけど、三夫君スタンドプレー目立ちませんか?)

カノンはロゼオムに再度耳打ちした。


 ロゼオムは

(うーん、どうも彼はあまり自分の能力を知られたくない様に見える。だから隠しながら戦っているような。それに)

(それに?)


(大魔法使いは魔王と戦わなければならない運命を知っているようだ)

(えっ大翔君とですか?)


「す、すげえ!」

と感心したその時一馬の退魔の剣が光った。


「光った!」


「あの光の意味は一体?」

「もしかしてあの剣は所持者に力を与える!」


「ぼうっとした幻想的な光ですね」

カノンは疑問に感じロゼオムは解説した。


 ロゼオムは叫んだ。

「今じゃ! 今の一馬君には特殊な力が宿っている!」


「俺に特殊な力……」

一馬は戸惑っていたが剣をさらに見つめた。

(なんだこの光は、俺に戦えと言ってるみたいだ。よし!)


一馬は剣をかざし突撃した。


「あっ無茶じゃ!」

とカノンがいった時すでに一馬はサイクロプスの間合いに入っていた。

一馬は自分と剣を信じようと思った。


(俺は小学生としてはそこそこスポーツは出来るかもしれない。でも大人の悪人にはまるで歯が立たなかった。大翔を助けたかったけど、それだけじゃなく大翔が自分より立派な生き方をしているようで悔しかったんだ。あいつは俺の前を前から走っていた。そう感じたのは人間としての心の大きさなんだ)


「うおおおお!」

一馬は剣を一振りしサイクロプスの腹に切り傷を付けた。


「はあっ、はあっ、俺にも少しできた」

一馬はやっと安心した。


「やった!」

カノンは感心したが一馬は少し剣の力を恐れた。

「この力は一体」


 その頃、魔王とダンテは謁見の間で冥王と面会した。

謁見の間はとてつもなく広い。横幅は200mほど、縦は天井が見えないほど広く照明はあっても多くの部分が暗闇に包まれていた。


そこに巨大な冥王がいた。石像の姿で。


 冥王、その姿はまさしく「邪心の像」そのものだった。その羽と悪魔の顔に巨大な2本の角、目玉の無い目と大きな耳。蛇腹を思わせる上腕部と対照的に甲冑の甲の様な手首とさらに悪魔的4本指と鋭い爪の組み合わせは悪魔的芸術すら感じさせる。


 張った筋肉のある胸と対照的に肩当ては鉄鋼で出来ていて首回りはまるで筋肉と鎧の複合だ。巨大な足は筋肉質で清潔感のない男の足の腿やすねに腕と同じ悪魔的形の足。その石像がこれまた巨大な台座に乗っているのだ。


 その荘厳な暗い威圧感と迫力は部屋のみならずこの世界その物を支配しそうだった。

軍の長の様だったダンテが震えて完全にひざまずいている。


 魔王も同じ心境だった。

「な、なんという恐ろしい御姿と威圧感。またあなたにお目にかかれるとは」

この世の物と思えない声が石像の口の位置から響く。


「当然だ。私なくして黒魔術の栄光はありえん」

魔王には冥王が指を動かしていないのに動かしているように見えた。それだけで恐怖だった。 


 魔王はダンテに耳打ちした。

(どうやってよみがえらせた?)

(それはこれから)


「ん?」

突然、冥王は疑問を感じた。


 冥王の轟音のような疑問形はほんの何かに気づいた様子だけで魔王を震え上がらせた。

「な、何か?」

「不純物が混ざっている、極めて汚い、純粋で正しい心を持った人間の心が貴様の身体に」




 


 


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