追跡黒魔術
カノンとロゼオム、一馬は次元のひずみに飛び込んだ。
すると三夫が見えた。
「おーい!」
カノンは次元のはざまでアークデーモンと交戦中の三夫に呼びかけた。
ロゼオムは言った。
「三夫君が魔物と戦っている」
カノンは言った
「あいつ、かなりの高位の魔物だ」
ロゼオムは言う
「ああ、しかし彼はさっきから空間をびゅんびゅん飛び回り反撃もしている。とてもはじめて戦っているようには見えん、見えんと言うより実際そうだ」
カノンは答えた。
「三夫君の正体や秘密が知りたいですがそれは戦いの後に話しましょう」
カノンはすかさず三夫の援護の為詠唱し水の魔法を出しアークデーモンを攻撃した。
アークデーモンは慌てた。
「しまった。他にもこの空間に追手が!」
その時三夫は比較的強く言った。
「皆さん。もうすぐ黒魔術学園が姿を隠してしまいます。ここは僕をほっておいて先に行ってください」
ロゼオムは言った。
「いや、そういうわけには」
三夫は再度言った。
穏やかで冷静なようでかつどこか必死さを感じる話し方だった。
「もう時間がないです」
しかしカノンはそうしなかった。
「いや皆で行こう。まだ僕は君の本当の能力を全部しらない、だから1人で放っておけないんだ」
「わかりました、じゃあ全員がかりで」
どこか三夫はカノンの気持ちを理解したようだった。
4人は並んだ。
アークデーモンは焦った。
(くそ、こいつだけでも手ごわいのに仲間がまだいるのか? これじゃやられる)
「おいっ! 援軍をよこしてくれ!」
アークデーモンは通信で仲間を呼んだ。
「しかし、あの魔王の正体である真崎大翔を抑えるのにすごい力が必要で誰も離れられないんだ!」
そのころ地上でスターマーク達は心配し論議していた。
「三夫君は、そして大翔君は……」
トライブは言った。
「まず三夫君ですが、彼の秘密は一体、大翔君のピンチに人格も能力も全く別人のようになった」
スターマークは推論で答えた。
「それなのだが、彼が何かのきっかけで本来眠っていた人格に目覚めた、のはわかる、しかし彼はさっきからこれまでも何かを知っている様な事を言っていた。ここが分からない事だ。彼はきっかけで覚醒したのかそれとも正体を隠していたのか」
トライブは答えた。
「僕も正体を隠していたのかと思いましたが、もし彼が正しい人間ならこれまで自分の力で全く戦わなかったのはおかしいです。力を温存していた、と言うならわかるのですが、それは自分の力を他人の為に使わない人みたいになります」
マークは答える。
「そうだな、敵味方両方がこれだけ傷ついているのに力を温存したいから取っておいた、と言うのはあまりに薄情な人間だ。本来そんな人間でないと私は思う。とすると彼は何か秘密を言えない理由があったのか。また記憶が断片的に戻ってきて最後に一気に戻ったのか……まあ根拠はないのだが」
「キッドがさっき言ったように彼は大魔法使いと言ってもおかしくないほどすごい魔法を使っています」
それにキッドは初めて口をはさんだ。
「その事なんですが、魔法の歴史書を見て「過去の伝説の大魔法使い」のページに亡くなった大魔法使いのページに『大魔法使いは亡くなってから別の姿に記憶をなくして生まれ変わるか別の人に乗り移り後の時代の危機を救うため戦った』とあります。三夫君が多分過去の大魔法使いの生まれ変わりか別の人間の身体の中に入ったかかと僕は思います。ほらここをみると『記憶は断片的に蘇る』とあります」
トライブは答えた。
「そうか、つまり三夫君はあの姿にこの時代に生まれ一気にでなく記憶が徐々に覚醒しさっき一気に目覚めた、と言う感じでしょうか」
その後少し悩みながらマークは答えた。
「実は大魔法使いは過去にいずれも魔王と戦っているんじゃ」
「くそっ!」
手負いのアークデーモンは逃げようとした。
「あいつを泳がせて追いかけ学園の場所に行くんだ」
一行がアークデーモンを100m程後ろから次元空間を追っていくとやがて出口が見え、そこを抜けると地下に開かれた場所がありそこにまさしくアメリカの私立大学風の建物が立っていた。
「あれか」
アークデーモンは入り口から学園に入っていった。
一方地上で再度議論は続いた。トライブは投げかける。
「では大翔君は」
「そうだな。彼はいきなりさっき急激に別人になった。しかし乗り移られていたように別の人間のようになった。あれは乗り移られたのか隠していたのか覚醒したのか」
キッドは意見を言った。
「魔王って僕らの敵ですよね。何故黒魔術と敵対するんでしょう。あっそういえば三夫君が『魔王の人格を大翔君の人格が押さえつけているように見える』と言いましたが、確かにそんな感じですね」
スターマークは正魔法教会本部に連絡した。
「ああ、兵長、今ロゼオム達は黒魔術を追っている所です。本当は加勢が欲しいです。あと2人の少年が全く違う人格と能力に覚醒したのですがこの事をお聞きしたい」
「三夫君!」
三夫はカノンの声に振り向いた。
カノンは三夫の気持ちをほぐそうと話かけた。
「僕達を助けてくれてありがとう。君の事をしりたいけど、それは後にしよう。まずは「一緒に大翔君を助けよう」
「はい……」
三夫は戸惑いとそっけなさとクールさと穏やかさの混じった声で答えた。
確かに完全にはなじんでいない。カノンもロゼオムも話すのは実質初めてだ。
それだけではなく今の三夫には人をどこか寄せ付けない雰囲気がある。
しかし敵意は感じない。
若干戸惑っているようだ。
「三夫、俺が分かるか?」
と一馬は言った。
アダラングは傷を癒しながら部下の背が低く太めでいかにもいやしい顔をした、上半身鎧、下半身スーツをきた男に言った。
「頼むぞグニール。私は少し休む。追手を撃破してくれ」
「かしこまりました。罠にはめてやりましょう」
一方カノンたちは入り口で話し合っていた。
「君の正体は今は聞かない。今はあそこに突入する方が先だ。僕達を信じてくれるね」
三夫は笑顔ではないが丁寧で穏やかなお辞儀をした。
「さて、あそこに入り込むか。見張りがいる。警報とかあるのかな」
とロゼオムは言った。