フィールドの中で
ダンテ・モルグが連れてきたゴウク、チョウク、リドックの3人の魔法使いが作り出したピラミッド型エネルギーフィールドの中は凄まじい温度となっていた。
その中心にいる大翔は凄まじい高熱にさらされているはずであった。
「うおおお! デスト・トライアングル!」
3人の魔法使いは渾身の力でフィールドを作る光線とエネルギーを出し続け、大翔を追い詰めようとした。
それを見てダンテ・モルグはほくそ笑んだ。
(いいぞ、これでやつのエネルギーを奪い隙を見て捕えてやる。あの小僧が魔王かを確かめ、そうであればなおの事好都合だ。われわれにとってこれ以上ない戦力になる)
「魔王を配下にするのですか?」
アダラングが聞いた。
ダンテは
「そうだ。我々がコントロールしてな」
ダンテ・モルグは自信があるのか先を見据えてか顎をさすっていた。
キッドは言った。
「魔王はあいつらの親分なんでしょう? なんであいつらは容赦なく攻撃してるんですかね」
トライブは
「力を見ているのか、それとも本当に味方か敵か見極めるためか」
その間も攻撃は続いた。
しかし一方大翔はどんなに高熱に包まれても頑として険しいにらみ顔を崩さなかった。
かといって効いていないのかというとそうでもない様にも見える。
少しずつ冷や汗がにじんできているようにも見えた。
しかしダンテ・モルグほどの強者ならともかく一般人には区別はつきにくい。
どの位ダメージがあるのか。
スターマークは懸念した。
「あの技は黒魔術の中でも高位の者が力を合わせて発する大技だ。術者の使用エネルギーも大きくめったに使わない。よほどの相手をあの中に閉じ込めて高熱のエネルギーで包み続けるのだ。怪物を捕獲する時などにも使われる」
宮田は心配した。
「大翔は大丈夫なんですかあの中にいて」
マークは答えた。
「アダラングの魔法さえ返した今の大翔君だ、そう簡単にはやられんとは思う。しかしこの技はどんどんと術者がエネルギーの温度を上げる事が出来、当然中の温度も上がる」
宮田はもう1度聞いた。
「でも、大翔全然表情変えないですよ。効いてないんですかね」
マークは答えた。
「それが……あの状態になってから大翔君は全く表情を変えなくなってしまった。困ったことにこちらから見れば効いてないのか耐えてるのかわかりにくいんじゃ」
その時またも三夫が突如発言した。
「大翔君は少しずつエネルギーがへってます!」
「えっ!」
皆が驚いた。
「三夫君……」
「あの技を解除する事は出来ないんですか?」
「通常なら外側から術者を攻撃してフィールドを破壊する所だが今回は非常に強固なフィールドだ」
三夫の質問に疑問を感じながらもトライブは言った。
「しかしそうも言ってられないんじゃ。だが、迂闊に手を出せばダンテ・モルグが何をしてくるかわからん」
とマークは手をこまねいた。
「ぬううう!!!」
一方3人の魔法使いは今1つ技が効いていないような気がしてさらに光線とフィールドの温度を上げようとした。
もちろん力を込めて温度を上げれば3人の負担はより大きくなる。
「熱い風呂に耐えているようだろう。どうだまだ降参はせんか」
ダンテ・モルグは聞いた。
部下が体力がきついのはあまり気にしていない。
大翔は何も言い返さなかった。
「返答なしか。せっかく君を仲間として迎え入れに来たのだがな。よしもうすこしエネルギーを強くしろ。一気にではなくじわじわとだ」
さらにエネルギーは上がった。
キッド達の所まで熱は波及した。
「ここまで熱が伝わる!」
「うむ、人間はもちろん巨大な怪物でも溶けるほどの熱だ。なぜ大翔君は無事なんだ」
「いや疑問に感じてる場合じゃないですよ!このままじゃ大翔が」
キッドはマークに何のんきに言ってるのかと言いたげだった。
さらにフィールド内の温度が上がった。少しずつ大翔の顔が険しくなった。
「ふふ、私には分かるぞ。大分きついだろう!」
ダンテ・モルグはじわじわ効いてきてるのが伝わっているようだ。
「う、ぐぐぐ」
その時初めて大翔は手足を少しずつ動かし始めた。
あがくと言うより動けるか少しずつ機械をテストするかのごとくだった。
「う、動けるのかまがいなりにも!」
さすがにこれにはダンテも動揺した。
フィールドのエネルギーと動こうとする大翔の身体のエネルギーがぶつかり電撃や火花が飛んだ。
「なんだあれ、ロボットを無理に動かそうとしてるみたいだ。」
大翔はゆっくりと右手で何かをつかみひねろうとするような動作をした。ダンテは驚いた。
「何だ? エネルギーそのものをつかもうとしているのか?」
マークも驚いた。
「あれほどのフィールド内のエネルギーを手でつかもうとするとは。火を手でつかむようなものだ」
「フィールド内のエネルギーがねじられる! お、抑えきれん!」
3人の魔法使いが弱音を吐きエネルギーが弱まった時アダラングが加勢しようとした。
「かくなる上は!」
と言いアダラングが手を上げ魔法を使おうとした瞬間、けん制するように大翔の手からすさまじいスピードで光弾、光線が発せられフィールドをすりぬけ、アダラングの肩を貫いた。
それはけん制レベルの攻撃の威力ではなかった。
「ぎゃああ!!」
アダラングは命は助かったが倒れた。
3人の魔法使いは
「ば、馬鹿な、フィールドをすりぬけてあれほどの速い魔法を!」
「こうなったら!」
ダンテ・モルグが指示をすると、さらにひずみから10人以上の装束を来た魔法使いが出てきた。
「何だあいつら!」
大翔の陣営は驚いた。
「行け、全員で呪いをかけて動きを封じ連れ去るのだ! あの小僧の力は我々がいただく!」
さらにひずみから出てきたトロルやガーゴイル、リザードマンたちがスターマーク達の行く手を阻んだ。
10人以上の黒魔術の魔法使いたちはいっせいに唱え大翔の動きを封じ始めた。スターマークは危機感を感じた。
「あのままじゃ大翔君が捕まってしまう!」
大翔には効いているのか良くわからなかったが少しずつ動きを封じられているようなのが伝わった、しかし大翔は突如叫んだ。
「わっ!!」
大翔が大声を出すと1筋の雷が落ちて魔法使いに当たり焼けた。ダンテ・モルグは
「おのれ!もっと呪いの力を強めろ!」
呪文が辺りにひびき、大翔は猛獣か凶暴な赤ん坊のようにあがき始めた。
「が、ガアア!!」
3人の魔法使いたちは震えた。
「ば、馬鹿な! 何と言う抵抗力だ! 奴は本当に魔王?」
その時1筋の光の矢がひずみから飛んできて魔法使いたちに当たった。何事かと思う皆の前にひずみから2人の人物が飛び出し着地した。
キッドは歓喜の声を上げた。
「カノン!」
それは脱出したカノンと助けに来た正魔法教会の調査員の2人だった。
カノンは、少しなよりとした中性的外見をした美少年であり、もう1人の調査員は太っていて小柄だった。