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大翔の正体は

 倒れて動かなくなったマヴロウを見て一同は騒然とした。

マヴロウの姿とそこに立っている大翔の姿、そのどちらも彼らを驚かせ言葉をなくさせるに十分だった。


 黒魔術生粋の戦士マヴロウが、ただの少年であるはずの大翔にあっけなく敗れた。

この事実は普通の人間に受け止められるものではない。


じっと立っていた大翔はこれまでになく鋭く強い目つきでマヴロウ、そしてアダラングを睨んだ。



 今まではいつも無邪気で何かあるとよくしゃべっていた大翔が先程から言葉を発せずその場からも動かず睨む事、動かず立つ事だけで周囲の人間全てを威圧していた。



勿論スターマークやアダラングもその威圧、心を支配された中に入っている。



 大翔は口も堅く結んで眉1つ動かさないその表情、いや全身、頭頂から足の先に至るまで体の部位全てからすさまじいまでの殺気や威圧感を出している。


 それはとても人間のものとは感じられなかった。

世界を支配しそうと言っても過言ではない。


何と言うか、人間レベルの威圧感ではないのだ。



 例えれば闘気の様な黒いオーラを全身にマントのように覆いかつ外側に燃え盛る火のように発せられているような雰囲気であった。



 大翔は怒りを確かにアダラングたちに向けてはいるのだが、同時にキッド達にもそうしているような全方向へ向けられた憎しみの様だった。


 アダラングはうろたえた。

「まさか、マヴロウが、全く手も足も出ず負けた……」


 中島も動揺していた。

「あ、あいつにあんな力が」


「一体どうなってるんだ」

キッド達がつぶやくと大翔は一馬を担ぎトライブの所に来た。



さすがにいきなり来たためトライブたちは怯えた。



「トライブさん、治癒呪文を」

少しだけ大翔の雰囲気が穏やかになった。


 トライブは戸惑ったが了解した。

「あ、ああ」


 そして大翔は再度殺伐した雰囲気に戻り、アダラングの元へとつかつかと歩みを始めた。

一歩一歩この歩く姿自体が既に誰も寄せ付けない圧倒感があった。


 

 この時すでに大翔は「よくしゃべる元気な小学生」の姿ではなかった。

明らかにどこかの世界の悪人の頭目の様だった。



 いや、その程度ではない。

世界ごと支配しかねない様な黒く燃え盛るような支配と威圧のオーラを出していた。



 そしてついに大翔はつぶやくようで威圧するようにアダラングに言った。

これまでになく重く低い声で。



「貴様ら、何人の人間を追い詰め利用し挙句死なせようとした?」



 言葉も言い方も普段の大翔と比較にならない凄みがあった。

アダラングはなぜか自分の上司に言われたような気持ちになった。



 アダラングはうろたえている自分の弱さを認めたくなかった。

しかし一方で見えない命の危機も感じていた。


 そしてやけになった。

「だ、だまれ!」


 アダラングは力をため、高レベルの火炎魔法を大翔に向けて発しようとした。

いつもならアダラングは最初から攻め込まない。


しかし今日は「そうしなければやられる」と言うほどの殺気を大翔に感じ、体が勝手に動いたようだった。


 激しい火炎が猛スピードで大翔を襲ったが大翔は身動き1つせず火を睨み続けた。

「なぜよけない!?」


 大翔は全く目をそらさず命中寸前でも火をぎりぎりまで見つめた。そして火を手でふさいだ。

「あ、ああ」


 そして大翔は火を握りつぶすように鎮火した。

アダラングはうろたえた。


 大翔は抑えながらも叫んだ。

「火炎呪文はこうやるんだ!」


大翔の右手にアダラングのそれより大きな火の塊が現れ燃え盛った。


 敵味方同時に騒ぎになった。

「何だあれは! 一体何レベルの火炎魔法だ?」


「はああ」

大翔は気合をこめる。



 大翔の手から激しい炎が発せられ、アダラングを襲った。

「ば、バリアーだ!」

アダラングは緊急にバリアを張り防いだ。しかし完全に押され今にもバリアーを破られそうになった。

「ぐっ!」


 バリアを破壊されそうになりとっさに横へ飛ぶことでアダラングは逃げた。


 その横を凄まじい炎が飛び去った。

さすがのアダラングも冷や汗をかき命の危険すら感じていた。

(あれがあたっていたら)


 アダラングが恐怖を感じながら体勢を立て直した。

「ならばこれでどうだ!」


 アダラングは焦って叫んだ。

今度は電撃をためた。


「貴様は電気に耐性があるようだが、私の魔力はマヴロウより上だ! 喰らえ!」

アダラングは手から電気を発した。


 大翔はまともに喰らい煙に包まれた。しかし煙がなくなると何事もないように大翔が現れた。


アダラングは怯えた。


 大翔は息を吸い込み、皆が汗を流しながら見ている中ぴたりと吸い込むのをやめ、突如咆哮とともに息を激しく吐き出した


凄まじい音量と低く重い叫びの声だった。



 まるで悪魔の王のようなおどろおどろしい殺気に満ちた叫びだった。

台風と地鳴りが同時に起きたかのような激しい音波と衝撃波が巻き起こり周囲を包んだ。



 キッドは言った。

「どうなってるんだ? 大翔君は一体?」


 トライブは言う。

「特訓で彼の力が目覚めたのでしょうか? 彼の体にはすごい魔力があったし」


 しかしスターマークは

「いや、能力もそうだが、あの位の特訓であれほどの魔力はつかん。それだけではないもはや人格まで別人のようになっている」


 キッドは言った。

「そんな」


 スターマークは言った。

「あの声、あの男に似ている……」

「どうしたんだ大翔君」


 その時スターマークはつぶやいた三夫の方を見た。

(なんだ? 三夫君にすごい魔力を感じたが? 勘違いか?)


 三夫に関心が言ったマークを呼び戻すようにトライブは言った。

「あいつの声、似ていませんか」


 スターマークは答えた。 

「うむ似ている。」


「何にですか?」

疑問に感じたキッドにスターマークは答えた。


「魔王だ。我々が前回の黒魔術との戦いで戦った、やつらが復活させた王だ。今の大翔君にそっくりだ雰囲気が」

「ええ? でもあれは大翔君ですが?」


 マークはさらに話した。

「うむ、確かに姿は違う。魔王はもっと巨大で恐ろしい姿をしていた。それこそ我々兵が何十人束になってもかなわぬほど。しかし、発する声と雰囲気がそっくりなのだ」


「ええ、僕も確かに魔王の恐ろしい声は覚えています」

トライブは答えた。


「今の大翔君は同じように話す時に声が低音の様に常に空気中に響く。それに普通の人間が東山の自決で何の傷も負っていない事も全く説明がつかん。大翔君が急に異常に強くなるなど物理的に説明がつかん」


 トライブは答える。

「と言うことは彼の正体は魔王でそれが目覚め、その後にマヴロウと一馬君との戦いでさらに変わった」

「うむ」


「でも魔王は黒魔術の味方なんでしょう? 彼らと敵対してますよ」

 キッドが疑問を投げかけるとさすがにマークは困った。

「うむ。それがよくわからん。しかしかつての魔王は本当に恐るべき力と悪魔の心を持っていた。あの戦い……」


 アダラングは畏怖した。

「あのガキが魔王などありえん、しかしあの声と威圧感はあの方にそっくりだ。どういう事だ?」

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