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スターマークと中島の過去

「人を助けてやけど……」

中島は少なくとも今までで1番動揺し、1度攻撃の手を止めた。

それほどマークのやけどの印象は大きかった。


 トライブは説明した。

「そうだ。マークさんは前大戦で傷を負った。君くらいの子供を助けてだ」


 中島は聞き返した。

「前大戦って正魔法教会と黒魔術学園の?」


「そうだ。忘れもしない」


スターマークとトライブは前回の魔法大戦を思い出した。


 3年前の地球と違う次元の大陸では領地を争う正魔法教会と黒魔術の数度目の大戦が起きていた。


 戦場となる広大な荒れ地に両陣営が数百人が入り乱れ、土地を巡っての対抗戦だった。


 そして正魔法が優位に立ち、黒魔術は苦境に立たされた。

「このままのペースで行けばわが軍は勝利をつかめる! 大分黒魔術の兵は減った!」

と正魔法のリーダーは叫んだ。


 事実黒魔術の陣営は正魔法の3分の1ほどになっていた。

しかし黒魔術軍の1人はにやりとした。


「そろそろ切り札だ、行け!」

そう言うと部隊後方から小学3年生前後の子どもたちが黒魔術の法衣を着て出てきた。


 ざっくざっくと靴音を立てながらまるで機械の様な冷たい表情の子供達が隊列をなして出てきた。

隊列に1ミリの乱れもない。歩き方が機械の様だった。


 子どもたちの顔には暗い影をまとったような顔色の悪さがある。


「なんだあの子供達は!」

これには正魔法も動揺した。


 黒魔術兵たちは言った。

「くっくく、我々が捕えて洗脳した子供の兵士たちだ。お前たちに攻撃できるかな?」

「なんて卑怯な!」


 1人の正魔法兵士は構えた。

「くっ!」

 

 しかし上司はとめた。

「まてっ、攻撃は止めろ!」

「しかし、バランド隊長!」


 ざくざくと冷たい目の少年兵達は進軍してきた。

「さあ、どうする?」

黒魔術が嘲笑う中、その子どもの内の1人が冷たい目で表情を変えず詠唱し、手から出る火の玉で正魔法の兵士を1人撃った。

「ぐあっ!」

と兵士はもんどりうって倒れた。


 さすがに他の兵士は反撃の意思を持った。

「攻撃しますか?」

「いや待て」

とバランドは答えた。


 その間もずんずんと少年たちは進軍してくる。

「さあ、どうする?」

 黒魔術は嘲笑うだけでなく挑発した。

「くっ!」


 ついに黒魔術は次の攻撃を指示した。

「うてっ!」

2発、3発と火の弾が少年達から撃たれ兵が何人も倒れた。


「どうする!」


 別の兵が案を出した。

「1つ方法があります。冷気の魔法で子供たちを凍りつけにするのです。そして戦いが終わったら火で元に戻す」

「し、しかし、失敗すれば命に関わる。」

「しかし!」


 バランドと意見を言う兵が問答した中、別の兵が魔法を放った。

「睡眠魔法!」


 しかしこれは少年たちに効かないようバリアがはってあった。


 ついにバランドは意を決した。

「よし、私が前に出ておとりになる!」

「バランド隊長!」

「無茶です!」


 バランドは制止も聞かず飛び出し、少年たちの魔法を受けた。

「あっ!」

「ぐあっ!」


「ここれしき!」

「うわっ!」

他の兵士も前に出て攻撃を受けた。


「何をする。私がおとりになると言ったろう」

「いいえ、もう見てられません!」

「私も!」

「私も!」


 次々前に出る兵士たちは身を挺して少年たちの攻撃を受けた。


「うお、もう我慢できん!」

そう言って後方の兵士は光の矢を子供に向けて撃ち、ついに子供に当たった。


「馬鹿者! なぜ撃った!」

「しかし!」


「子供や女を死なせない様にするのが我々の役目だ。我々は常に弱いもの盾にならなければならん」

とバランドは言った。



 スターマークはそこにいた

「私も盾になります」

「お前はまだ若い」


「いいえ!」

「僕も行きます!」

「トライブ君!」


 ドンと言う音がしてスターマークの顔に火の玉が当たった。

「ぐあっ!」

「マークさん!」


「じゃあ、その怪我は子供を攻撃できなくて?」

中島は言った。

「それだけでない。仲間を見殺しに出来なかった。


 トライブは言った。

「どうだ、こんな事があってもまだ君は黒魔術に属する気か?」


 中島は今までにない、何かを言いたげな顔になり、口調が少し変わった。

「僕は財閥の跡取りとして生まれた。でも将来を捨てて黒魔術学園に入ったんだ」


「なぜだ?」

「最初、家の跡継ぎは僕だった」


 中島は回想した。


 中島は他人がうらやむような豪邸に長男として生まれ、将来を約束されていた。


 しかしそれに甘んじず積極的に勉強をしたり体を鍛えお坊ちゃんと言われない様にしていた。


 有名な学校に子供の頃から勉強し自力で入った。

家庭教師もいたが、いない時間も良く勉強した。父親も知っていた。


「ほう、なかなか勉強熱心だな。お前は周囲の環境に甘えない偉い子だ。それを忘れず努力を続ければ将来はきっと立派になる」


 使用人たちも感心していた。

「お坊ちゃんはあまり甘えないし、自分の事は自分で全部やる。えらいなあ」

「うん。今度は自分で料理を作るって言ってた」


「へえ!」


「コックに作ってもらってばかりじゃいやだって言ってた。あとトイレ掃除もしたいから教えてくれって」

「へえ! 見上げたもんだ」

「まあ、お坊ちゃんにトイレ掃除やってもらうのはあれなんだけど、なんにせよそういう姿勢は大事だよね」


(僕は昔使用人が僕を御坊ちゃま育ちと陰口を言っていた事があった。だからそれが悔しかった。それからは何事も自分でやって言われないようにしたんだ)


 中島の部屋は綺麗に整理整頓されている。

しかし、中島には弟がいた。そして父親の話を聞いていた。


「博史にはこの家を継がせる。弟の勝はわからん。普通長男がつぐからな」


(何故跡継ぎが僕じゃなく兄さんなんだ……)

この時、弟の勝は陰謀を巡らした。


 ある日、体の大きな子供2人が道で喧嘩をしていた。

中島博史は通りかかったがさすがに止めるのは怖かった。

(どうしよう)


 そこへ勝が通りかかった。

「やめろ! 道の真ん中で!」

「あ、ああ」

と2人は喧嘩をやめた。

(勝の奴勇気あるな。僕には出来ない)


 その話が父親に伝わった。

「情けない話だ。兄は喧嘩が怖くて止められず弟は勇敢に入った。がっかりしたよ。よって跡継ぎは勝に変える」

「そんな!」


 勝はにやりとした。それは喧嘩した少年に金を渡しておいたのだ。この日から中島博史は没落した。


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