初めての人の死
しかし中島は叫んだ。
「こんな事もあろうかと、もう1枚自決カードを渡しておいたんだ!」
狂喜の表情で中島は叫んだ。
それは「早く自決しろ! そうすればこいつらは爆発して吹っ飛ぶ!」
と言うおよそ人の命を認識していない狂気があった。
ただ冷酷でなく。喜んでもいる。
すると東山はカードを出し詠唱した。
すぐ近くに大翔がいる。
「まずい! あの距離じゃ爆発に!」
スターマーク達が事の重大さに気づくのに時間はいらなかった。
皆が青ざめた。スターマークは覆面を付けているのに顔色が周りに伝わるようだった。
そして大慌てで、必死に叫んだ。
「大翔君! 逃げろ!」
キッドはかすれそうな声で叫んだ。
(た、助けないと!!)
しかし
「間に合わない!」
と言う言葉と共に絶望が襲った。
その瞬間、東山を中心に大地に穴が空くほどの爆発が起きた。
土と砂が乱れ飛び視界を塞いだ。
「うわっ!!」
皆爆風で目をふさぎ身を守った。
皆恐る恐る目を開けた。
煙が収まると、大翔は黒こげになって倒れていた。
勿論東山は死んでいた。
スターマーク達は魂を抜かれた様に絶句した。
全てを喪失してしまったような沈み方であった。
今、人が死んだ。
それに大翔も少なくとも相当な重傷のはずである。
しかし、皆が沈痛の面持ちの中それを打ち消すように中島は嘲笑った。
「はーっははは! 見たか!」
中島は爆発の威力だけでなく、仲間の死さえあざ笑った。
「くっ、くくっ……」
スターマークはもはや言葉に出来ないほどの怒りと救えなかった悲しみで何を言っていいかわからず拳をにぎりながら震え絶句した。
唇を震わせた。
「さて、1戦目はこれで終わりだね。じゃあ2戦目を始めようか」
中島は人が死んだことすら理解していないあっけらかんさだった。
信じられない明るい笑顔である。
小学生だからこそ笑顔が不気味である。
スターマークは覆面の下の表情を隠しながらも中島を今にも殴らんとした。
ついに堪忍袋の緒が切れそうだった。
しかしトライブが制止した。
「僕に任せて下さい」
トライブは誰よりもマークの気持ちを知っていたようだった。だからこそなだめるように冷静温厚に言った。
スターマークの覆面の下はわからなかったが怒りが沈静化された様にも見えた。
またしても中島は他人事のように見下し言った。
「ふーん、2戦目はあんたが相手なんだ。じゃあこっちは飯塚君、頼むよ」
と中島が言うとやはり同じカードゲーム同好会のイメージの少年飯塚が前に出た。
彼は細身で顔は長め。目は小さい。小さいと言うより力がない、ないのだがすごく気が弱いわけでもないような雰囲気である。
それは自分がクラスで弱い立場にならない様気の弱さを隠しているタイプの少年に見えた。
積極的でないが、消極さを隠しているようにも見える。
また背中が少し曲がっていた。