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むなしき決着

 キッドは苦しんだ。

「これほど絶え間ない攻撃をしてくる相手、今まであった事がない。反撃の隙すらない。それに……」


 ちらりと大翔を見た。

「ん?」


 またキッドは大翔から目をそらした。

「キッド君、なぜこっちを……」


 スターマークは説明した。

「それは君が言ったように、相手をむやみに攻撃するのにためらいが生じるようになったのかもしれない」

「えっ?」


 マークは説明を続けた。

「玉越君達が怪物になった時、大翔君は何としても助けたい、攻撃をするなと訴え続けた。あの件があってからキッドは恐らく操られた相手をむやみに攻撃してはいけないと思うようになったんだ」


 大翔は困った。

「ぼ、僕のせいでキッド君は悩んでるの?」


「いや、彼は勝つことだけでなく人の命をまず助ける方に比重を上げようとしているんだ。君が攻撃されても大声で呼びかけ、そして玉越君達を止めたからだ」


「バリアーだけじゃない、『魔法弾き』を織り交ぜるしかない!」

キッドは飛んでくる火炎弾に対し防御壁の力を弱め代わりに腕に小さなフィールドを形成して火炎弾をはじこうとした。


 はじいた火炎弾は別の方向へと飛んで行った。

「あ、あちちち!」


 さすがにこれはやけどしてもおかしくなかった。

なおもキッドは防御壁を弱めて魔法弾き主体の防御態勢をとり、前へ出てチャンスをつかもうとした。


「あの魔法はキッドはあまり慣れていない。体力、魔力に同時に負担がかかる」

トライブは不安に感じた。


(防ぐだけじゃない! 撃ち返さないと!)

キッドは防御が弱くなる覚悟で火炎弾を撃ちだした。

何とか同じ魔法で相殺し、攻撃に持っていきたかった。


 流星型の火炎と正面発射型の火炎がぶつかり合って花火の様に散り、相殺しあった。キッドはかなり疲れていた。


それだけでなく防御を手薄にしたため火炎弾をまともに食らうのではと言う恐怖があった。なおも東山は撃ち続けた。


「まだ撃ってくるのか! どこまでやる気だ一体!」

キッドは手が痺れていた。

「あいつはおそらくバリアははれない。ならこちらも防御を捨て攻撃に転化すれば!」


 キッドは火炎弾の量を増やした。

「無謀だ!」


 その1発が東山に命中し、苦しみにあえぐ声が聞こえた、さらに2、3発と命中した。

「これ以上くらったら命が危ないぞ! そろそろ降参しろ!」

キッドは訴えかけた。


「う、うう、降参だと? 黙れ!」

さらに東山を覆う黒煙が増した。そして無防備な体勢でキッドの火炎弾を受けようとする。命中する度に


 東山は激痛に悶えたが、それでも睨みながら近づいてくる。

「な、何が彼をそうさせるんだ!」


 中島はあいかわらず冷笑をまじえ言った。

「彼が操られたんじゃなく自分の意思で強くなりたいと思っているからだよ。彼はずっと前から強い力を欲していたんだ」


「あの怨念は自分の意思?」


中島は説明する。

「そうだ。子供の頃から彼は体が弱く、いつも対人関係では弱い立場だった。それに不満を重ね蓄積し、最初は嫌がっていた呪いの儀式を自ら受けるようになったんだ。かれは心地良さを感じているんだ!」


 その時大翔は叫んだ。

「違う! こんな事が気持ちいいわけないだろう! 彼は悲しんでいるんだ! 僕には声が聞こえる!」


ほんのすこしだけ中島の口調が怒りを帯びたように変わった。ほんの少しだけ動揺があった。


「いい加減な事を言うな。お前に何で彼の気持ちがわかるんだ。東山は喜んでいるんだよ。強くなれた自分に。そして力によって手にする明るい未来に!」


 しかし大翔は引き下がらなかった。


「子供の頃からこんな事をさせられてどんな明るい未来があるっていうんだ。僕はお前たちを許さない。彼が自分の意思でやったとしても本当は嫌なんだ! キッド君、僕に交代してくれ!」

「し、しかし!」


 その時大翔の魔導手甲の宝石が光り始めた。そしてキッドは叫んだ。

「やめろ! 君は楽しいわけがない、呪いをかけられ狂い、そんな戦い方をして勝ったとしても明るい未来なんてあるわけがないだろう! 勇気を出すんだ大翔が言うように!」


その言葉は頭に刺さったようだった。


「う、うう」

「ど、どうした?」


 さらにキッドは説得を続けた。自分でもわからないうちに必死になっていた。

「黒魔術学園何て今日でやめろ。怖がらなくても僕達が必ず助ける!」


「あんなに訴えるようになったのは大翔君のおかげだろう」

とスターマークは言った。


 ついに中島は大きな声を出した。完全に癪にさわったようだった。

「うるさい! こうなったら自滅カードを使え!」

「う、うう」


「どうした? 何をためらっている」

「う、おううう!」

 狂っていた東山はついに崩れ、死ぬことへの恐怖を感じそれを表した。強がりが切れたようだった。


 東山はカードを取り出しかざした。

そして叫び、自滅カードを持ちながら突っ込んできた。

「逃げろキッド君!」

大翔は叫んだ。

 

 その時、大翔の魔導手甲が再度光り細い光線を出し、自滅カードを貫き焦がした。

「な、なに? こんな事が!」

「あの小僧、1体何者だ……」




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